就業後、シネマヴェーラの東宝アクション特集へ。
と言うか、ここ数日は西村潔特集状態。
まず『薔薇の標的』。『弾痕』からの差し替えです。
監督・西村潔&撮影・原一民 の組み合わせ、そして脚本は白坂依志夫&桂千穂ときたら、期待せずにはいられません。
これがまぁ、摩訶不思議な映画でありました。
主演の加山雄三は既に体型がブヨブヨで、頬ひげをはやし、シャープさのかけらもないルックス。
作品中盤はヒロインのチェン・チェンと恋仲でずっと英語で話しているのですが、加山雄三、田宮二郎には及ばないまでもかなり英語うまい。結構きれいな発音で話しておりました。
謎の組織・新精神文化研究所を率いる岡田英次が加山雄三の射撃の腕を見込んで殺し屋に仕立て上げるのですが、この時の岡田英次のセリフが不思議なトーンで、冷静にしゃべっているのですが文中に英語の単語が多て(ルー大柴みたく)、かつ英語の単語を言うときそこだけ妙に英語っぽく発音する独特のしゃべり方。
と突然、江頭2:50みたいな上半身裸で黒タイツはいた痩せた白人男性2名が拷問されているシーン(しかも男たちはドイツ語をしゃべっている)が挟み込まれ、観ているこちらの頭は??となります。
新精神文化研究所にはヒットラーの写真や鉤十字が貼ってあって、収容所っぽい建物には霧が立ち込め、いかにもナチっぽい雰囲気。
殺し屋になった加山雄三は仕事をしに香港に行きます。
ここから香港ロケのシーンが結構あって、ワタクシ観ていて血圧が上がりました(しかもこぎれいじゃない方の香港の街並みが映っている)。
ワタクシ、昔の香港が映っている日本映画の鑑賞をライフワークにしているのです。
で、色々あって日本に戻ってきた加山雄三とチェン・チェンは恋仲になって、SLを撮影しに行きます。
SLがスクラップされているところを長ーくそこだけ音なしで見せることで、観客にこの二人の行く末が案じさせます。
で、ストーリーはそこから色々あって(加山雄三はスナイパーの悲しい性分ゆえに悲劇的な展開があって)、第四帝国を建国を目指す新精神文化研究所と加山雄三は戦います。
ここからが、西村潔お得意のカー・チェイス。やっぱりこの人、走っている車を撮らせたら超一流です。
車走るときの音もすごくイイ。
そして、岡田英次の車・ジャガーが炎上。ジャガーを燃やすなんて何て贅沢な!
加山雄三と岡田英次の決闘の場面はホモセクシャルな感じがいたしました。この決闘の場面とか、トビー門口と決闘する滝のシーンとか異様に美しいんですよ。
この作品をご覧になっていない方は、読んでてわけわからんとお思いでしょうが、ホント、何とも摩訶不思議な奇妙な雰囲気の映画なんですよ。
射撃したり、狂った上半身裸の白人がいっぱい出てきたり、香港行ったり、ナチ国家の再建を目指していたり、SL撮影したり、カーチェイスしたり。
それらを全部詰め込んでいて、それぞれの描写はひどく凝っていたり美しかったりするんですけど、パラノイア的というか何と言うか。
射撃とかカーチェイスとかは見応え凄いです。
次に
数日前に観て衝撃を受けた『ヘアピン・サーカス』を再度鑑賞。
この作品の麻薬のような魅力にとりつかれ、もう一度スクリーンで観たいと思ったわけです。
冒頭、首都高を走る車に取り付けられたオンボードカメラがガタガタとゆれ、一般車を次々と追い抜いていくのを観ているだけでもう昇天。
今回、マカオ・グランプリの回想シーンがどうなっているのか注意して観たのですが、実際のマカオ・グランプリのレース映像(主演の見崎清志は実際にマカオ・グランプリで入賞したらしい)と、この映画のために日本かどこかのレース場で撮ったものをつないでますね。明らかに粒子が粗いマカオの市街地でのレース映像と、レース場で別に撮った2台の車が競り合ったり事故を起こしたりするシーンの違いが判別できました。別の場所で撮ったシーンには半ズボンをはいたマカオの警官に見える人物を立たせてカモフラージュしてますけれど。
ほか、一瞬映るマカオの裏町にいる見崎清志を撮ったショットもあって、これがまた愁いに満ちたいいショットでありました。
レース映像の合間に挟み込まれたマカオの街をロングで撮ったショット、石井輝男監督の『ならず者』を彷彿させる美しいショットでした。
笠井紀美子は一言しかセリフないけど、ハスキーな魅力的な声。
今日改めて見崎清志を観て(カーレーサーで俳優ではない)、この人の愁いがある硬い表情が70年代のヘルムート・バーガーにちょっと似ているなと思いました。ちょっと美化しすぎかもしれませんけど。
数日前に観たばかりなのに今日観ても、手に汗握り、観ていて昇天し悶絶し、大変興奮いたしました。エグゾーストノートを聞いているだけで、こっちも天国に逝きそう。
(公道でのカーチェイスはやはり凄すぎる。元町の商店街でも走っている。)
初めて観たときふざけたストーリーだと思ったけれど、そう単純に言い切れるものではないですね。
本能(スピード)に突き動かされた男と女、そしてその二人が行きついた境地を描いたものだな、と。
改めて観て良かった。
短い期間に続けて西村潔作品を続けて観て感じたことは、この人は特異な感覚の持ち主で、バランス感覚よりも、自身が持つその特異な感覚で突き進んで撮っていくタイプの監督ではないか、と。
あと、本当にカー・アクションを撮るのが好きなんだろうなぁ、と。デビュー作『死ぬにはまだ早い』なんて、主人公がカー・レーサーだった回想シーンを入れる必要がないのにしっかり入れていて、これは監督の趣味なんだろうなと。
『ヘアピン・サーカス』正直なところ、今年観た映画の中で最も魅了された作品。
DVD化を望みます。
追記
『ヘアピン・サーカス』について、Sさんが「カーセックスならぬ、カー同士のSEXシーンが観られる稀な作品」とコメントされておりました。
なるほど!!
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