朝刊を読んでいたら、
今日新文芸坐で鹿島茂のトークショーを行うとの記事が載っており、
あせって、身支度をして、部屋にある「甦る昭和脇役名画館」と
「パリ五段活用」をバッグにいれて池袋に向かう。
そうだった!今日から「脇役列伝」の上映だった!
忘れるところだったよ。
新文芸坐、本日の上映は荒木一郎の2本。
まず「ポルノの女王 にっぽんSEX旅行」。
もてない不器用なブ男がとスウェーデン娘を部屋に監禁するストーリー。
ユーモアのセンスが最高。
彼女を喜ばそうとして花を買うところが面白い。
次に「白い指の戯れ」。村川透監督のデビュー作。
伊佐山ひろ子主演。
70年代の空気が満載!
新宿の紀伊国屋書店で万引きをするシーンがあって、ビックリ。
よく撮影させてくれたものだ。
ほか見ていてわかったロケ地は、
伊勢丹や、井の頭線や井の頭公園、丸の内線の新宿御苑駅、新宿西口など。
この作品での荒木一郎は「ポルノの女王」と同じ俳優と思えないほど、
ニヒルな色男をカッコよく演じきっている。
伊佐山ひろ子を置いてしばらく姿を消していた荒木が、
彼女のところに戻ってきて「俺がいなくて、大変だっただろう」と
優しい声をかける器用さ!
’すけこまし’そのもの。
子宮でもの考える彼女はまたイチコロ。
荒木が演じた器用な男と、不器用な男。
あまりの違いに驚き、うなる。
荒木一郎、ただものではない。
「ポルノの女王」だけ観ていたら、ただの情けないブ男だと思ったよ。
上映後、鹿島茂のトークショー。
大学の先生らしい話しぶり。
プログラム・ピクチャーは(作品)群でみるもの、という視点は面白い。
そして鹿島先生のご専門のベンヤミンの「集団の夢」がでてきた。
なるほど。
確かに毎週次々と上映されるプログラム・ピクチャーの作品群は
作り手と観客の集団の夢の産物だ。
また、増村保造の最高傑作(と私が考えている)「偽大学生」の
DVD化がされないのは原作者(つまり大江健三郎)の意向だと話されていた。
(「偽大学生」こそ絶対DVD化される作品!お願いします。大江先生!)
トークショーの後、サインをしてくださるとのことで、
売店で「パリ・世紀末パノラマ館」も買い、
家から持ってきた本と合わせて3冊にサインしてもらう。
荒木一郎の演技に唸り、夜は偶然同じ時期にラピュタでやっている
「役者 荒木一郎の魅力」に行く。
今週は「893愚連隊」の上映。
これまた快作。
関西弁で話すチンピラ達の台詞が面白い。
しょうもないクズ達のクズっぷりをユーモアたっぷりに描いている。
彼らが「民主主義」を連呼するのが面白い。
存在感がある俳優達の中でも荒木一郎の存在感がカラダも顔も薄いのに群を抜いている。
よく切れるカミソリのようだ。
ラスト直前のクライマックスの場面がおかしい。
最後のみみっちさもまた笑える。
なのに、何故か爽快感が残る一作。
同じ松方弘樹主演のストーリーが似ている「恐喝こそわが人生」より
面白いね。
追記
「ポルノの女王 にっぽんSEX旅行」でも「893愚連隊」でも
荒木一郎が話す関西弁(京都弁?)が最高なのだが、
調べると彼は東京の人らしい。
関西弁の見事さにネイティブ・スピーカーなんだろうと思ったのだが、
これはまた驚き。