溝口健二監督『雪夫人絵図』を観る。
2006 / 11 / 29 ( Wed )
就業後、フィルムセンターに行き、溝口健二監督の『雪夫人絵図』を観る。
素晴らしい構図の、素晴らしいショット連続の作品なのだが、
辛い話の内容に、観ていて全身の毛穴から苦痛汁が出る。
溝口作品とはいえ、入浴ショットが出たり、話の内容がエロだったりするところが、
さすが新東宝。
ブックファーストで、ルキノ・ヴィスコンテイについての新刊を見つけた。
青山真治、藤原智美、福間健二などの文章が載っていたので、購入。
三島由紀夫が「映画芸術」に書いた『地獄に堕ちた勇者ども』についての評論は、
以前「三島由紀夫映画論集成」に収録されているのを読んだことがあるのだが、この本にも再録されているので、改めて読むことにしよう。
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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画
SO903iを使ってみて
2006 / 11 / 26 ( Sun )
携帯をSO903iに変更して、一日使ってみた感想。
カメラで写した画像はこんな感じ。



ミュージックプレイ機能は、ワタシが使っているi Podやアイリバーに比べると、
音質は良くない気がするけど、携帯の付属機能と考えれば十分な感じ。
軽くて薄くて、デザインもカッコイイ。
嫌な思いをすることがあっても、ソニー信者から抜けられないワタシとしては、
久しぶりに本格的な新機種の発売は嬉しい限り。
ジョグダイヤルだったら、もっと嬉しかったのですが。
ワタシはBICカメラで購入したのですが、今日行ったDOCOMOショップでは、
2年以上の契約で本体のみ価格29.800円で売ってました。
これに、事務手数料を入れるとBICと同じぐらいの金額だと思うけど、
BICだとポイントがたまるしねー。
今のところ、そんな感じ。これからマニュアル読みます。
『孤独の賭け 』と『百年恋歌』を観る
2006 / 11 / 25 ( Sat )
ラピュタの佐久間良子特集、
『孤独の賭け』がニュープリントだと知り、
最終日に観に行く。場内満員。
必見!
フィルム・ノワール的な空気が漂う素晴らしい作品だった。
スクリーンに映し出される全てのショットに少しの隙も無く、
最初から最後まで緊張感に満ちた完璧な画が続く。
佐久間良子がクリスマスの夜の銀座をさまようシーンから始まるのだが、
光を反射させるフィルターを付けて撮影されており、
街がこの上なく美しく撮れている。
と言っても、ただ美しい夜景というのではなく、
これから何か起こりそうな孤独な不穏なムードを漂わせていて、
例えると、『死刑台のエレベーター』だ。
そう、この作品での佐久間良子はジャンヌ・モローだ。
ジャズも非常に旨く使われていた。
ストーリーに犯罪が出てくるわけではなく、正確な意味ではフィルム・ノワール作品ではないのだが、
作品の持つ空気がフィルム・ノワール的なのだ。
物語が始まって間もないころ、天知茂が車で佐久間良子を家まで送り、
カメラは彼女が女友達と住む下宿の建物を写しだすのだが、
そのシーンで、ワタシはもうヤラれたぁーと思った。
大人の男の苦渋を表現した天知茂の演技も素晴らしかった。
最後のホテルのエントランスのシーンの見事さったら。
『孤独の賭け』は女性が主人公の、大人の男女の愛情と女の野心を描いたハードボイルド傑作、
白黒映画の極致と言えましょう。
この作品、個人的には、昔の西武ピサが見られて興味深かったのと、
兜町でのロケのシーンが結構あったのだが、
ワタシは3年ほど前、兜町に残っていた大正から昭和に建てられた証券会社の古い建物を撮影して歩いたことがあったので、見ていて面白かった。
『孤独の賭け』の中で「丸岡証券」だかそんな名前で出てきた証券会社の古い建物は、
大正末期に建てられた山二証券に見えた。
(もっとこの映画が撮影された1965年当時はこのような証券会社の建物が
たくさん残って使われていたのだろうから、違う建物なのかもしれない)
佐久間良子が日証館という1928年に建設された素晴らしい建物のエントランスにいるシーンもあり、そんなところも嬉しかった。
3年前当時、日証館以外の金万証券、成瀬証券、山二証券の建物は
現存はしていたのだが、そこでまだ営業しているのかどうかは確認できなかった。
その頃それらの証券会社自体に合併、本社移転があり、
今でもそれらの建物がまだ残っているのかどうかが気になるところだ。
ちなみにワタシがデジカメで撮影した写真は、PCに保存していたのだが、
そのPCが完全に壊れててしまったので、無くなってしまった…。
ハルクのBICカメラに移動し、今日発売のドコモの携帯電話SO903iを買う。
いちねん割引を付けて、本体32,500円也。
ジュンク堂で、『和モノ事典―Hotwax presents (1970’s人名編) 』を買う。
カラー満載のパラっと見るだけでも楽しい本。
これで70年代の勉強をしよう。
夜、銀座シネスイッチにて
『百年恋歌』を観る。
これまで、『フラワーズ・オブ・シャンハイ』では古い立派な絨毯の模様を見ているような気分になり、
『ミレニアム・マンボ』では、途中で苦痛のあまりに叫びだしそうになり、
『珈琲時光』では苦笑いしてしまった(大好きな神保町や御茶ノ水界隈が出てくるのは嬉しかったけど)ワタシ。
これはもう、侯孝賢の波長がワタシに合わないんだとずっと思っていたが、
(エドワード・ヤンはしっくりくるんだけどね)
映画評を読み、気になったので、勇気を奮って、観に行ってみた。
これは良かった!
今まさに頭髪の危機に直面している張震(チャン・チェン)とますますビッチ感が増したスー・チー主演。
第1話、ビリヤード場での仕事を終えた後に、
二人が屋台みたいな所で食事をするシーンと、
第3話、チャン・チェンの部屋の写真がたくさん貼ってある廊下で、
蛍光灯の光が足元を妖しく照らす中での、二人のラブシーンの美しさに鳥肌が立つ。
いやぁ、観に行って良かった。
もう1作、侯孝賢に付き合いたくなった。
嬉しくなり、帰りに久しぶりにパンフレットを買って帰った。
600円也。
原題『最好的時光』。何ていいタイトル。
素晴らしい画にゾクゾクする作品2本を観た一日。

中国映画歴代ベスト100
2006 / 11 / 23 ( Thu )
祝日の今日、外は寒そうだったので、一歩も家から出ず。
家でゴロゴロしながら、皆さんのマネをして、私も好きな映画100本を考えてみました。
が、30本を過ぎたあたりで、思いつく作品がなくなってしまいました。
これまで観てきた映画は少なくない方だと思うのですが、意外に思いつきません。
何とか搾り出して、46本リストアップできたのですが、それからがもうダメです。
ということで、100本揃うまでブログに書きませんが、
絶対リストに入れようと思ったのが、
『省港旗兵・九龍の獅子 クーロンズ・ソルジャー』。
あの九龍城で初めてロケをしたということで、
香港の廃墟好きにはたまらない作品なのですが
(確か、吉田一郎著『香港街伝』という本に記述があった記憶がある)、
これが、ホント、観た後に体重が2kgぐらい減りそうなド迫力と
血みどろな残忍な描写満載の作品で、非常に面白い!
それに、映画がつくられた84年当時に香港人が大陸の中国人をどう見ていたかかというのもよく表れていて、興味深い。
私は香港の油麻地とか旺角で、小さなDVD屋をいくつも探しまわって、
DVDをゲットして見たのですが、想像通りあまりに面白くって
当時通っていた広東語教室のクラスメートに頼まれもしないのに、
無理矢理貸して見せて驚かせたりしたもんです。
が、こんな作品を評価している人なんて私ぐらいだろうなと思ってググっていたらビックリ、
こんな記事を見つけました。
香港映画賞が中国映画歴代ベスト100を発表(2005/03/17)
今月27日に授賞式を控えた第24回香港映画賞は14日、中国映画生誕100年を記念して中国映画オールタイムベストを選定、そのリストを発表した模様。1位には2002年に田壮壮監督によるリメイク版「春の惑い」が製作され注目を集めた費穆(フェイ・ムー)監督の48年の白黒映画「小城之春」が選ばれた。内訳は中国作品が24、香港作品が61、台湾映画が16、合作が2の計103本となっている。上位20作品は以下の通り。
1.「小城之春(Springtime in a Small Town)」(48) 費穆(フェイ・ムー)監督
2.「男たちの挽歌」(86) ジョン・ウー監督
3.「欲望の翼」(90) ウォン・カーウァイ監督
4.「黄色い大地」(84) チェン・カイコー監督
5.「悲情城市」(89) ホウ・シャオシェン監督
6.「省港旗兵・九龍の獅子/クーロンズ・ソルジャー」(84) ジョニー・マック監督
7.「残酷ドラゴン・血斗!竜門の宿」(67) キン・フー監督
8.「望郷」(82) アン・ホイ監督
9.「侠女」(71) キン・フー監督
10.「グリーン・デスティニー」(00) アン・リー監督
11.「街角の天使」(37) イエン・ムーツー監督
12.「[牛古]嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」(91) エドワード・ヤン監督
13.「Mr.BOO!ミスター・ブー」(76) マイケル・ホイ監督
14.「ザ・ミッション 非情の掟」(99) ジョニー・トゥ監督
15.「片腕必殺剣」(67) チャン・チェ監督 (ジミー・ウォング初主演作)
16.「ドラゴン怒りの鉄拳」(71) ロー・ウェイ監督
17.「太陽の少年」(94) チアン・ウェン監督
18.「危樓春曉(In the Face of Demolition)」(53) Li Tie監督 (ブルース・リー主演作)
19.「チャイニーズ・オデッセイ」(95) ジェフ・ラウ監督
20.「The Arch」(70) Tang Shu Shuen監督http://www.allcinema.net/prog/news_details.php?NsNum=1688何と、『省港旗兵・九龍の獅子 クーロンズ・ソルジャー』が歴代中国映画の6位に選ばれてますぜ。
『黄色い大地』『悲情城市』のすぐ後ろで、ブルース・リー出演作より上ですよ。
とまぁ、このベスト20を見て思うのは、香港映画人のバランス感覚の素晴らしさです。
芸術映画と娯楽映画(それもかなりバカバカしかったり下品だったり)が
交互に選ばれているじゃないですか。
欧米や日本でアンケートをとったら、こうはいかないでしょう。
第8位にジミー・ウォングの『片腕必殺剣』が選ばれているとなると、
あの『八仙飯店之人肉饅頭』もベスト30位ぐらいにはランクインされてるんじゃないかと思ってしまうよ。
何しろ、この作品でアンソニー・ウォンは香港アカデミーの主演男優賞を受賞したんだからね。
香港はすごい所だよ。
※ちなみにご存知ない方に『八仙飯店之人肉饅頭』の内容を説明すると、
アンソニー・ウォン演じる主人公が幼い子供達も含め家族を皆殺しにして、
ミンチにして(このミンチにする辺りの描写がリアル)、
中華まんの具にして客に出す、という実際にあった事件(!!)を元にしたスゴイ作品です。
新宿TSUTAYAにビデオあります。
ルクルーゼで豚バラ肉を煮込む
2006 / 11 / 21 ( Tue )
ルクルーゼのイエローが廃盤になるので、AMAZONで30%ディスカウント・セール中。
で、またまた買ってしまいました。
ココットロンド20cmです。¥16,100でした。
既にうちには、ココットロンド16cm(グリーン)、20cm(白)、22センチ(オレンジ)、
ココットダムール(赤)、ビュッフェ・キャセロール22cm(イエロー)、
ソースパン 18cm (チェリーレッド)があります。
他にもヴィタ・クラフトもティファールの圧力鍋もあるし。
いったいこんなに鍋ばっかり、何処に置けばいいのでしょうか…。

寒くなると煮込み料理なんかつくりたくなりますね、と
ココット・ダムールで豚バラ肉を煮込みました。
しょうゆ、お酒、みりん、八角、山椒の実、しょうが、にんにく、長ねぎを入れて、
グツグツ。
部屋中がいい匂い♪
写真は、煮込み始めたところの模様です。

更に頑張っておニューの
ルクルーゼでもう一品つくりました。
手羽先と根菜を煮込んだ、コラーゲンたっぷりの煮物です。
なお、本日の煮込み中のBGMはEric Dolphyの『Out There』です。
石井輝男監督作品『暴走の季節』を観る
2006 / 11 / 19 ( Sun )
ラピュタのレイトで石井輝男監督の『暴走の季節』を観る。
これは、イカンですなー。ヒドい作品です。
同じ石井輝男の暴走族映画でも、先日観た『爆発! 暴走遊戯 』は
アホっぽく、それなりにまとまっていましたが、
『暴走の季節』ときたら、暴走族と、ブルジョアのヨット遊びが同じくらいの比重で出てくるんで、
ひどく散漫な作品になってしまっております。
石井輝男らしく、エロというサービスカットも勿論ありますが。
岩城滉一演じる主人公は、心優しい女中までもレイプする最低な男で、
何の魅力もありません。この辺りでかなり痛い。
志垣太郎は迫力を出そうと頑張ってますが、チビッコ・ギャングみたいです。
ストーリー展開もメチャクチャです。
岩城滉一が中島ゆたかをレイプして、中島ゆたかは唾を吐いて怒っていたのに、
次のシーンに移ったとたん、中島ゆたかは岩城滉一にベタ惚れしているといった感じ。
まぁ、冒頭のバイクのアクションシーンはバイク好きには面白いかもしれませんね。
それにしても岩城滉一は声が悪い俳優ですねー。
姿はいいのですが、悪声で滑舌も悪くセリフが聞き取れません。
感想を一言でまとめると、未見の石井輝男作品を一つ潰しただけということです。
石井輝男作品をよく手掛けた鏑木創の音楽はカッコよかった。
狂宴
2006 / 11 / 18 ( Sat )
金曜の夜、大学時代の仲間3名と若手弁護士3名と狂宴。
幹事のYは自身の暴露話をした後、爆睡。
O弁護士は、ワタシと同じ大学の同じ学部出身の先輩と判明。
債権法の名物教授の話なんかする。
あまりの酒の量と狂い加減に、楽しくもあり恐ろしくもあり。
言ったとおりにちゃんと、ブログに書きましたよ。Sエロ弁護士殿。
時計は深夜2時を軽く回り、銀座からタクシーで帰宅するはめになる。
もうフラフラ。頭痛い。
何とか起床し、前から行く予定だった御茶ノ水の病院に行く。
いつも激混みの病院なので、半日潰れるかと思ったら、
意外に早く会計まで済んだので、神保町で古本屋めぐりをする。
すずらん通りのトーストサンドが美味しかった喫茶店「駿」が、
「キントト文庫」という古本屋にかわっていた。
(といっても、かわったのはかなり前らしい)
知人の古書店に顔を出し、世間話をする。
古瀬戸珈琲店に行って、マンデリンを飲む。
ここは萩原コーヒーの豆。
美味。
新宿に移動し、伊勢丹で化粧品を買い、
京王の富沢商店で宝笠ゴールドなど製菓用品を買い物した後、
地元に戻りAさんと夕食。
朝ごはん
2006 / 11 / 15 ( Wed )
早起きして、朝食に牡蠣ご飯をつくりました。
朝から贅沢でございました。
カキ、大好き。
独身者の炊飯にルクルーゼの16cmは手放せません。

京橋へ。HIDEMI SUGINOと『近松物語』
2006 / 11 / 12 ( Sun )
いま、スティービー・ワンダーの『Innervisions』を聴きながら書いてます。
中学生2年の時聴いて感激したアルバムだけど、今聴いてても、その感激はまったく変りません。
日曜だというのに、朝早く家を出て、9時半に京橋に到着。
フィルムセンターに行くためではありません。
あの、カリスマ・パティシエ杉野英実氏の
「HIDEMI SUGINO(イデミ スギノ)」に行くためです。
9時半の時点で、既に10名が並んでました。しかもうち半分は男性の一人客。
木枯らし1号が吹くという寒空の中、震えながら待っていると、厨房からの甘い匂いがしてきて、もうちょっとだ、頑張ろうという気にさせてくれます。
開店の10時前には更に行列が伸びて、大行列。
で、開店。
この時点では、いくつかのケーキがまだ出来てません。
お目当てのアンブロワジーは11時過ぎの出来上がりとのことですが、
それまでイートインで待てっていていいとのこと。
で、そのアンブロワジーとポム・デーブとスーボワを注文。
この店では皆、一人で2つ、3つ頼んでます(6個までの個数制限あり)。
この人気で、次回いつ貴重なケーキにありつけるかわからないので、
複数食べるのは当然の行為でしょう。
あっという間に、イートインは満員です。
お客さんをみていると、グルメっぽい男性の一人客が多い。
さて、ポム・デーブとスーボワが運ばれてきました。
ポム・デーブは、フランベしたリンゴをのせた青リンゴのムースと
シナモン風味のキャラメル・ムースのケーキ。
これは美味しい。
特に下の層のキャラメル・ムースがお酒が程よく効いていて、
たまりません。
オススメの一品です。また食べたい。
スーボワはカシスのムースのケーキ。これは割合普通でした。
かなり酸味は強め。
アンブロワジーを待っている間、隣の席の女性二人とちょっと話す。
札幌から来ていて、夜は東京ドームのアジア・シリーズに行って日本ハムを応援するとのこと。
札幌のケーキもかなりレベルが高いという意見が一致。
なんて話している間にも、お客さんがどんどんやってきて、
飛ぶようにケーキが売れていきます。本当にスゴイ。
さて、11時がまわりアンブロワジーがやってきました。
ワタシの他にもアンブロワジーを待っていたお客さんが何名かいました。
この超有名なチョコレートのケーキ、ルックスからかなり濃厚な押しが強い味を想像をしていましたが、
口に入れた途端「違う」と思いました。
いい意味でかなり裏切られた感じ。
アメディなどのチョコレート・ケーキとはかなり違う味のチョコレートでした。
濃厚でありながら、かつ軽やかな味わい。
矛盾しているようで、それが両立するチョコレートなのです。
内側には甘みのない白いクリームが入っていて、
台の下の方にはかなり酸味の強いラズベリーのソースがあり、
このラズベリーだけ食べると酸っぱいのですが、
外側のチョコレートを合わせて食べると、丁度よい加減でした。
かなり満足をし、焼き菓子の組み合わせも買ってお会計をすませました。
11月14日からクリスマス・ケーキ2種類の予約受付を始めるそうです。
わー、予約したい、と思いましたが、6000円もします。
これがメインになってしまうお値段です。
『近松物語』を観るためにフィルムセンターに移動。
溝口とか小津とか成瀬の時はフィルムセンターは狂気の沙汰の並びようですが、
それを覚悟して、超早い時間に行って座って待っていると、
オジイサマ達の大声でのオシャベリにまいってしまう。
物凄い大声で、『砂の器』のストーリーを微に入り細に入り話し合うのは止めてくれー。うるさくて、金子光晴が読めないではないかー。
『近松物語』を観るのは、汚く臭かった中野武蔵野ホールでの進藤英太郎特集(渋い)以来よ。
8月に行った『没後50年 溝口健二 国際シンポジウム』で、
香川京子と助監督だった田中徳三の『近松物語』撮影時のエピソードを色々聞けたのので、
それを思い出しながら観ました。
完璧な映画とはこういう作品のことを言うのだな、と改めて思いました。
特に、霧がたちこめる小舟の上で、長谷川一夫演じる茂兵衛が香川京子演じる「おさん」に告白するシーン。
もう、どうしましょう。
撮影時、溝口健二は香川京子に「反射してください」としか言わず、
具体的な演技指導がなく、どう演技したらいいものかと困ったと話していましたが、
香川京子にとっても一世一代の名演技でしょう。
美しく、憂鬱そうで、そして開放され、強く美しい。
昔、文芸春秋で好きな洋画と日本映画ベスト10を選ぶという企画がありましたが(文庫本にもなっている)、
ワタシならこの『近松物語』を入れたい。
はあー。

溝口健二の『雨月物語』『祇園囃子』『山椒大夫』を観る
2006 / 11 / 11 ( Sat )
フィルムセンターでの「没後50年溝口健二再発見」、
本日の上映は『雨月物語』『祇園囃子』『山椒大夫』。
日本映画史に輝く3作品。
『雨月物語』。
祝言の後、森雅之に見せる京マチ子の流し目、
逃げようとする森雅之にすがる京マチ子の鬼気迫る表情、
どちらも忘れられない。
『祇園囃子』。
若尾文子のかわいらしさ、木暮実千代の成熟した色気、浪花千栄子の老獪さと、
3人の大女優の競演が見事。
おぼこい若尾文子が愛らしくて魅力的なのは当然だが、
木暮実千代の女の色香にすっかり参ってしまった。
ワタシがこれまで観た木暮実千代の出演作品の中で、
『祇園囃子』の美代春姉さんが、一番魅力的だと思った。
そして浪花千栄子。
いつ見ても、この女優は本当に凄い。
お金の無心をする木暮実千代に対し一言、「あほくさ」。
その言い方、間の取り方が見事。
参りました。

『山椒大夫』。
ラスト、田中絹代と花柳喜章が再会するシーンでのカメラの長回しに、
またまた唸らされる。
今読んでいる
金子光晴の
『ねむれ巴里』がますます面白い。
冷徹な観察眼と、毒吐きまくりの表現。
例えば、30歳過ぎの金子光晴がフォンテンブローの森のベンチに座る80歳過ぎの老夫婦を見て、
「あの色情狂のようなフランス人のさいはての姿がこれであることが僕らには、驚異であった。(略)
これは、仏舎利であり、ぼろぼろになって猶、のこっている人間最後の文化の追跡をみているようでもあった。(略)
男と女は、どちらがわるいのでもなくて、やはり、抱いたり、しゃぶったりするよりしかたないもので、僕らが抱きあっているのとおなじように、もうとっくに卒えているあの八十歳の夫婦も、ことによると、いま頃、裸で抱きあっているかもしれないとおもうと、それはもう、人間の宿業というよりほかことばがない。」
またパリについて、
「パリの人たちは、いつになっても、コーヒーで黒いうんこをしながら、すこし汚れのういた大きな鉢のなかの金魚のようにひらひら生きているふしぎな生き物である」
「それは、ゆきずりの観光客にはわからないことではあるが、花のパリは、腐臭芬々とした性器の累積を肥料として咲いている、紅霞のなかの徒花にすぎない。」
こういった文章が続く。
腹を抱えて笑いそうになるが、笑ってばかりいられない文章。
溝口健二再発見、『お遊さま』を観る。
2006 / 11 / 09 ( Thu )
フィルムセンターの「没後50年溝口健二再発見」という連続上映、
本日は『お遊さま』を観る。
素晴らしい。
数年前の青山ブックセンターのトークショー「蓮實重彦とことん日本映画を語る」で、
蓮實がとりあげてた冒頭のお見合いのシーンで田中絹代が登場するまでの長回しのシーンなど、
偏執的な宮川一夫のカメラがいい意味で気になる。
それにしても、田中絹代は、どこがいいんでしょうか?
以前も書きましたが、私には汚いオバサンにしか見えません。
何故に慎之助はかわいらしい乙羽信子より溶けた冷凍みかんみたいな田中絹代に惚れたのか?
それを理解しようと考えながら観ましたが、謎は解けませんでした。
さっきKさんにその疑問を話したら、「田中絹代はきっと床上手なのよ」と言われました。
石井輝男も「床上手」とは言ってませんでしが、
田中絹代という女優は監督に対し、おべっかを使う、と話しているのを聞きました。
蓮實重彦も「とことん日本映画を語る」で、
お遊さま役が、田中絹代でなく山田五十鈴だったらよかったのに、
と言ってました。同感!
まぁ、それはさておき、これからのフィルムセンターの溝口特集が楽しみです。
銀座にて
2006 / 11 / 05 ( Sun )
モッズヘア銀座店にて、ストレートパーマとカラーリングをしてもらう。
西銀座デパートはす向かい、東映本社隣りの『平和生命館』ビルが、
何と取り壊されて何もなくなっていた…。
前回見たとき、1階のイタリア料理屋がCloseしていたので、もしやと思ったのだが。
ガーン。
また一つ銀座の歴史ある素晴らしい建築が消えた。
ビゴの店で、パンをいくつか買う。
十一房珈琲店にてフレンチ・ブレンドを飲む。
好きな喫茶店のひとつ。
帰りに豆を買う。
本日の読書は、金子光晴の『ねむれ巴里』を少し。
読みながら、爆笑したり、うなったり。
最高。
石井輝男監督作品『爆発! 暴走遊戯』を観る
2006 / 11 / 04 ( Sat )
ラピュタのレイトで、石井輝男監督作品『爆発! 暴走遊戯』を観る。
とんだ珍作品。
なんと『ロミオとジュリエット』、いや『ウェストサイド・ストーリー』の暴走族版。
ストーリーはロバート・ワイズの『ウェストサイド・ストーリー』とほぼ同じです。
貧しいグループの女の子達が洋裁の仕事をしているシーンとか、
音楽に合わせて指パッチンしながら群舞(このダンスがショボい)するところなど、
もろまんまなシーンが散見。
暴走族が社会問題化していた76年当時に、
暴走族が主人公の映画がつくられるのはわかるけど、
何故に『ウェストサイド・ストーリー』なのか?
くだらなさに失笑させられる作品。
主演の岩城滉一の演技があまりに大根なので笑えます。
見所をあえて探すと、多岐川裕美のかわいさぐらいか。
芹明香が出てた。
ところで柳町光男監督の『ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR』の予告編が
ながれたのだが、予告編を見る限り、かなり面白そう。
狂い咲くブラック・エンペラーの少年達を写す粒子の粗いモノクロ映像。
ただならぬドキュメンタリーの予感がしました。
武智鉄二の『黒い雪』を観る
2006 / 11 / 03 ( Fri )
イメージフォーラムの武智鉄二特集、
本日は『黒い雪』。
劇場はほぼ満員。
猥褻物公然陳列容疑で起訴された(判決は無罪)との知識から、
欲情的な内容と想像していたが、まったく違った。
横田基地のすぐそばの売春宿が舞台で、
冒頭からずっと戦闘機やヘリコプターの爆音が鳴り響いていて、
爆音でセリフがところどころかき消される。
それとビバップ。
大島渚や三島由紀夫が弁護側の証言台に立った「黒い雪裁判」で有名な作品だが、
いやらしいところは全くない。
LOFTでほぼ日手帳を買う。
手帳カバーがエラく高く感じられたので、本体のみ購入し、
文庫カバーをかけることにした。

Bunkamuraにて、芸術新潮のクリムト特集のバックナンバー購入。

渋谷から阿佐ヶ谷行きのバスに乗る。
バスに乗るのは超久しぶり。
バスからの夜景って面白い。
夕食をしながら知人と地方自治について話す。