『霧と影』と 『波止場の鷹』を観る
2007 / 01 / 07 ( Sun )
シネマヴェーラでの丹波哲郎特集。本日2日目。
まず、石井輝男監督の『霧と影』。
素晴しい!必見!
タイトルが流れるまでの最初の5分を観るためだけにでも、
この作品を観に行く価値あり。
まず、能登半島の崖沿いの海が映り、小舟が浮かんでいる海の俯瞰が映り、
次に、海に小舟が進むのを横からとらえたショットになり、
そして、小舟のわきに男の死体が浮いているショット、とつながる。
死体の教員・笠原が勤務する小学校のシーンが挿入された後、
また死体発見現場の崖のショットに戻り、笠原の家族と同僚が確認のためにやってきて、
同僚と妻が死体が笠原であることを確認する。
ここまでの崖でのショットすべてに深い霧がたちこめていて、
これが、この世のものと思えない美しさ。
まるで山水画を見ているよう。
いったいどうやって、こんな美しい写真を撮ったのでしょうか?
丹波哲郎登場のシーンも洒落ていて、
彼がスクリーンに登場するなりラテンのような音楽がながれ、
彼が肩に背負っている猿のぬいぐるみがアップになる。
そして、シネマスコープのスクリーンいっぱいに広がる、子供達が遊んでいたり、掘っ立て小屋が建っている海岸を右から左へと歩く。
お見事。
こんな調子で最後まで、素晴しいショットの連続。
緩んだところはまったく無し。
途中の、丹波哲郎と梅宮辰夫が急な石段が続く集落で、中年男と若い女を追うシーンは裏町マニアの石井輝男色がよく出てました。
それから、丹波哲郎が銀座を歩くシーンのバックに、先日取り壊された平和生命館ビルが見事に映ってた。
ストーリー展開が速く、チラシに書いてあるように瞬き厳禁です。
石井輝男の同じミステリーものである『黄色い風土』に比べても、
『霧と影』の方がはるかに良い出来。
こういうミステリー作品も、ピシっと撮るところが、さすが映画職人たる石井輝男。
素晴しい作品なのに、上映の機会がほとんどなかったのは、
ストーリーが「特殊部落」というセンシティブな話題に深く絡んでいるからか(劇中、「部落」と言うだけでなく、「特殊部落」とハッキリ言っているシーンあり)。
あまりに素晴しいので、もう1本の『波止場の鷹』を観た後、再度『霧と影』観てしまいましたよ。
こんなこと滅多にやりません。
そのもう1本の『波止場の鷹』。
梅毒の症状がルックスにあらわれてきた頃の石原裕次郎主演。
浅丘ルリ子は、まだキレイです。いや、ホントこの映画での浅丘ルリ子は美しい。
ワタシにとってはシネマスコープのスクリーンに広がるランドスケープを楽しむだけの作品。
神楽坂の紀の善で、数年ぶりに抹茶ババロアを食べた。
やはり美味しいね。
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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画