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結城良熙プロデューサー来場「性と愛のフーガ 田中登の世界 」

阿佐ヶ谷にて、希須林 小澤で坦々麺のランチ・セットを食べ、カフェ・ドゥ・ワゾーに移り、オールド・ビーンズのマンデリンを中濃で頂き、大満足したところで、ラピュタに向かう。

本日は「性と愛のフーガ 田中登の世界」。
ロマンポルノのまとまった特集に通うのは2004年のシネパトスでの「妖艶列伝」という特集以来です(その後もパラパラとは多少観ていましたが)。

まず1本目『牝猫たちの夜』。
面白い!必見!
新宿のトルコ風呂を中心に、そこで働く女達、ゲイ・ボーイ、職業不明な男、銀行員などの人間模様を描いた作品。
主人公のトルコ嬢昌子(桂知子)、隣人の男(吉澤健)、ゲイ・ポーイ(影山英俊)の3人の関係が何とも不思議。
どのシーンも素晴しくって、一瞬も目が離せませんでしたが、面白いと思ったのが、ゲイ・ボーイが昌子相手に初めて女性と関係を結ぶ時、グレゴリオ聖歌のレコードをかけて、3人で不思議なセックスをするところ。
それから、吉沢健が自室で、天井から鎖でぶら下げたキャベツ1個丸ごとを、椅子に座って手を使わずに食い付くのが面白い。
歌舞伎町やゴールデン街、新宿駅西口などでロケをしているのですが、
ゴールデン街の都電の線路跡が何度も出てきました。
既に都電は廃止されていて、四季の道に変わる前の、線路だけ残っていて草がボウボウと生いる廃墟みたいな状態。
ワタシは四季の道以降しか知りませんので、興味深かった。
ラピュタの作品解説にもあるように、ラスト、朝の西口駅前ビル街のシャッターが一斉にあがっていくシーン、非常に印象的です。
この作品、ワタシのベスト・新宿映画にランクインです。
(ほかは、『恋の片道切符』『ネオンくらげ』など)

2本目は名作『実録 阿部定』。ニュープリント上映。
プロデューサーの結城良熙氏と、高崎俊夫氏が来場しており、
上映前に結城氏が挨拶をし、本編開始。
上映後、結城氏のお話があり。以下内容(記憶をもとに要約)。

田中登と結城氏は日活の同期入社であり、ロマンポルノ開始時、
田中は監督に、結城氏はプロデューサに分かれた。

『実録 阿部定』の翌年に大島渚の『愛のコリーダ』が製作されたが、
大島があちこちで、『実録 阿部定』の製作の前年には『愛のコリーダ』の構想をしていたと言って歩いたので、そのことに田中はカチンと来ていた。
その件を今日は皆さんに伝えたい。

田中と結城氏が助監督時代、今村昌平が今村プロを設立し、『エロ事師たちより 人類学入門』を撮った。
当時は助監督は4人で、衣装係、美術係も付くのが普通だったが、
資金がないので、助監督は田中、結城氏を含めた3人で、衣装は田中、美術は結城がやらなければいけなかった。
二人とも非常にやる気があり、資金が限られている中、田中は貸衣装屋で、~という方法で(細かく書くのが面倒なので詳細省略)1着分のみの代金で6着分借りることに成功し、また結城氏も劇中の美術として必要な8ミリカメラ8台を借りに、直接フジフィルム本社に夜中に訪問し、守衛にお願いして、結果タダで当時発売されたばかりのフジカ・シングル8を8台借りることができた。

ロマンポルノは750万円の低予算で撮影しており、
『実録 阿部定』も撮影期間はわずか8日間で、正月休みを挟んで撮影した。
宮下順子は大変の気のいい女優だったが、とてもお酒が好きだったので、
二日酔いで変な顔で撮影に来られては困るということで、
大晦日は結城氏の自宅に宮下を泊め、宮下が飲みすぎないよう田中と三人で程々に飲み、
正月は田中が田中宅に宮下を泊め、また三人で程々に飲んだ。
宮下は1月3日は地方にあるにっかつの劇場に新年の舞台挨拶にまわった。

いどあきおは、NHKなどで毒にも有益にもならないホームドラマの脚本などを書いていたが、台詞がうまかったので、ロマンポルノなのだけれど脚本を書かないかと声をかけた。
すると、いどから実はそういうのをやりたかったんだ!と言われた。
そして『(秘)色情めす市場』の脚本を手掛けた。
いどは脚本を書く上で、台詞の推敲を細かくやり、また調査が徹底していた。
『実録 阿部定』についても国会図書館に行き、阿部定関係の資料を読み尽くした。

田中も下調べが徹底しており、撮影前に夫人に自宅で台詞を読ませ、ストップウォッチで計り、カット割りを決め、撮影前に台本は真っ黒だった。
『実録 阿部定』を観てわかるように手抜きのない重厚感のある映像を撮っているが、準備が徹底したいたので撮影は速く8日間で撮り上げた。
(宮下は演技が特別上手い女優ではないので、リハーサルが必要で、時間が非常に限られていた)。
そういう意味でも、大島があちこちで『実録 阿部定』の前年に阿部定の題材で作品を構想していたと言って歩くことを、田中はガマンならなかった。

映画は監督のものであるが、シナリオ、美術等々の力で出来ており、まさに総合芸術であると思う。


こんな内容でした。結城プロデューサーの貴重な話がきけて、とても嬉しかった。
ワタシは『愛のコリーダ』もとても好きですが、結城氏の話はごもっともだと思う。
改めて『実録 阿部定』のニュープリントをスクリーンで観て、
低予算であれだけの映像をつくることの偉大さをヒシヒシと感じました。
特に美術(川崎軍二)の素晴しさ!

3本目は『女教師』。
映画の出来不出来とは別に、話の内容がワタシにとってとても不愉快。
冒頭、主人公の女教師を演ずる永島暎子がショパンのポロネーズ第2番 Op.26-2を弾くのが非常に印象的。
このポロネーズに始まり、劇中ショパンの複数のピアノ曲が、不快なストーリーに合わせてドラマティックに、特にはロマンティックに流れるのは素晴しかった。

これから1ヶ月近く、この特集が楽しみです。
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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

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 リネン

Author: リネン
♀。会社員。独身。
東京23区在住。
深煎りコーヒーが好き。
成瀬巳喜男監督作品56本を
劇場で観たのが自慢。

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