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鈴木則文監督 美は乱調にあり 『文学賞殺人事件 大いなる助走』 『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』

ゴールデン・ウィーク初日の朝、駅には旅行トランクを押す人が多い中、私は鈴木則文特集に行くためにシネマヴェーラへ。

『文学賞殺人事件 大いなる助走』。
文壇を描いたとってもよく出来たパロディ映画。
文学が好きな人、文学を商売にしている人、かつて文学を商売にしたかった人が観ると、かなり面白い。
ワタシ、可笑しくって笑いっぱなしでした(もちろん、文学が好きな人として)。
一大企業にたよる地方都市・焼畑市(架空の街。日立市や豊田市みたいな市)の描き方や、登場人物一人一人のキャラクター像がとても具体的でハッキリしていて生々しく、素晴しい。
文壇の腐った内幕をこの上なく面白おかしく戯画化して描写。
当然筒井康隆は出てくるんだろうなと思って観ていたけれど、途中、胡桃沢耕史と団鬼六が出てきてビックリ。
佐藤浩市がオカマをほられるシーン、あははは。
そして第九が流れる中、お約束のハチャメチャな主人公の暴走。
筒井康隆の怨念と、そもそも文学は世の中に必要なものなのかという疑問(というかタブー)が根底に流れている一作。
地方の同人誌の面々も中央文壇も救いようのない腐り様に描かれていて、まぁある程度は現実なんだろうな、と。
石橋蓮司がすごかった。

『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』。
ああやっぱり、なんて面白いんだーと思いながら鑑賞。
見せ所がいっぱい。
何と言っても、最初から最後まで色彩の美しさに目を奪われっぱなし。
花札の絵柄の色調を中心に、スクリーンがカラフルなことこの上ない。
石井輝男監督の『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』は迷路に迷い込む感覚で観客を眩暈させるけれども、『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』は色の洪水で観客を幻惑するのです。
観ていて、この作品も『キル・ビル』の元ネタの一つだったんだな、と。
雪での殺陣のシーンなんて、それっぽい。
本作での荒木一郎の音楽も超クールです。
主演の池玲子もいいんだけれど、ワタシ的にはクリスチーナ・リンドバーグがツボ。
ロリータ顔に豊満なボディが魅力的な女優ですが、この作品では鹿鳴館ファッションに身を包んで銃を撃ったり、和服を着たりで、魅力全開。
この和服姿のクリスチーナ、超ラブリー。
(本作品の撮影のために東映に招聘されたクリスチナ、撮影日数が余ったのでついでに製作されたのが荒木一郎と共演した中島貞夫監督作品『ポルノの女王 にっぽんSEX旅行』)
クリスチナの相手役の成瀬正孝、イケメンなんで、クリスチナとのツーショットは目の保養になりました。
大満足の90分。やっぱり娯楽映画はこうじゃなくちゃね。
9月にDVDが出るようですが、絶対買います。

客席を出ると、窓口に鈴木監督ご本人を発見。
帰り際監督と同じエレベーターに乗ると(監督とワタシ二人きり)、監督からワタシに話しかけてこられました。
どうだった?と監督。
もう、面白くって感動しました、とワタシ。
色、きれいだったでしょ?と監督。
ハイ。もう、色がきれいでビックリしました、美術も素晴しかったし、音楽もよかったです。とワタシ。
ああ荒木一郎だね。次の作品も観てね、と監督。
ハイ、行きます!とワタシ。
そして、1階に下りたところで、監督にサインをお願いしました。
すると監督、「そんな大した監督じゃないよ」とおっしゃりながらも、書いて頂きました。
手帳にシャープペンシルしか持っていなくて、ちゃんとしたものにお願いできなかったのが、残念ではありますが、
 美は乱調にあり 鈴木則文
と芸術的な御文字。
うーん、この言葉について、これからの人生じっくり考えていこうと思います。
美は乱調にあり


劇場から外に出ると、雨がおちてきそうな感じ。
すぐそばのブック・ファーストに入り、本をみていると案の定雷が鳴り土砂降りに。
傘がなくそのままでは外に行けないので、雨が止むまで本を数冊買ったり立ち読みしたり。
安藤昇の「戯言」を手に取る。彼のある意味でのフェミニストぶり、女性崇拝ぶりが面白いね。これじゃモテるはずだ。
それから『網走番外地 吹雪の斗争』の撮影時、石井輝男に無断で現場を離れ東京に帰ってしまった時のエピソードが載っていました。
当時石井輝男は大監督といわれていて、端役の俳優に対し粗末な対応をしたり、弱いものいじめをするのという噂がありもともと好きでなかった、そして・・・・というエピソードが書いてありましたよ。
そして安藤昇のヰタ・セクスアリス「不埒三昧―わが下半身の昭和史」を買って帰ろうかと思いましたが、何だか急に恥ずかしくなり退散。

美は乱調にあり。これから毎日携帯します。
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『(秘)色情めす市場』そして最終兵器・鈴木則文・来場!

本日はラピュタの「性と愛のフーガ 田中登の世界」の最終日。
これまでビデオでしか見たこがとない『(秘)色情めす市場』を初めてスクリーンで鑑賞。
ニュー・プリント上映。
始まってすぐのカメラの動きにもう鳥肌が。
ドヤに光がこぼれ、「リターン・トゥ・フォーエヴァー」風の曲が流れるモノクロの画面の神々しさ。
そう、この作品を形容するのに思い浮かぶ言葉が「神々しい」。
今回改めて凄いなと思ったのが、高橋明。
もう本当に、ああいうヤクザな人が大阪にいる、というようにしか見えない。
勿論、花柳幻舟(怪演)、絵沢萠子、夢村四郎の演技もすごい。
そして芹明香。母親が流産しそうになり運ばれた後、涙を流すときの表情の素晴しさ。
芹明香と宮下順子が一緒に映り、会話を交わすシーンが2回あるけれども、二人の女優の質の違いが際立ち、違和感を感じるところでもあります。
自身の壮絶な人生がスクリーン上でも滲み出ている芹明香と、あくまで女優として演技する宮下順子。
この作品に宮下順子はいらなかったかな。
映画はここまで表現することができるのか、ということを知らしめさせる作品であると再認識。

渋谷に移動し本日初日の「最終兵器・鈴木則文降臨!」に行くためシネマヴェーラへ。
立ち見客多数。

『まむしの兄弟 恐喝三億円』。
70年代劇画風ユーモアが満載。
ああ次は○○というボケを言ってくれるだろうな、という観客の予想にことごとく応えてくれる安心感。
が、去年観た『まむしと青大将』(監督・中島貞夫)と同じように、菅原文太・川地民夫の主人公コンビとは別に松方弘樹と堀越光恵の部分がかなりクローズ・アップされていて(『まむしと青大将』だと荒木一郎と川谷拓三それに緑魔子)、彼らの悲劇的な最期の印象が強い。
そんなことも感じましたが、終始安心して観ながら大笑い致しました。

そして鈴木則文監督、柳下毅一郎氏によるトークショー。
あの、鈴木監督って、石井輝男みたいに滑舌が良くおしゃべりが上手なわけではないので、今日はこんなお話してました、と文章化するのが難しいです。
柳下氏の質問に対し、「うん」、「そうねー」、「忘れた」とお答えになるぐらい。
けど、決してエラぶらない魅力的な人柄が短い言葉から伝わってきて、好感が持てました。
自分は娯楽映画の監督であり、観客が入ってなんぼなので、今回の特集でお客さんがたくさん来るよう滝に打たれて祈ってました、とおっしゃられたのが最高に面白かった。
柳下氏が小難しい言葉にまとめて質問するのだけれども、それに対し鈴木監督は「そんな難しいことボクはわからない」と返されるのでした。
柳下氏が同じ天尾完次プロデューサーの石井輝男監督の作品は陰惨な傾向があるのに比べ、鈴木監督の作品は明るいと言ったところ、鈴木監督は「そんなことないですよ。石井さんはパイオニアですよ」と答えてられた。
『徳川セックス禁止令 色情大名』での渡辺文雄のフランス語の長セリフについて、渡辺文雄が考えてしゃべっていたんだと言っていました。
鈴木則文監督×柳下毅一郎氏

そして、名和宏さんもご登場。
名和さんは、東映でヤクザ映画に出ていながら同時にポルノ映画にも出ていて、若山富三郎に羨ましがられたとおっしゃってました。
トークショーの最後に、鈴木監督が柳下氏に明日以降の上映作品の宣伝をするように言っていたのが、さすが娯楽作品監督という感じでした。
今特集の上映作品は監督が選出したのではないけれども、『文学賞殺人事件 大いなる助走』は監督ご自身から是非入れてくれと希望した作品なのだとか。
なぜなら、他の作品は人のお金でつくったけれど、これは自分のお金でつくったから、だそう。
会場を退出される時も何度も手をふっていた鈴木監督、とてもチャーミングな方でした。
石井輝男監督、鈴木則文監督二人に共通して言えるのが、本当にお客さんを喜ばしたい、面白がらせたい、というサービス精神の旺盛さ。
そういう気質があの東映ポルノ路線をつくったのだなと。
鈴木則文監督×柳下毅一郎氏×名和宏氏


そして『徳川セックス禁止令 色情大名』(ニュー・プリント)を鑑賞。
監督によると飲み屋でのネタがそのまま作品になったのだと。
まさに「くだらないことを真面目につくった」一作。
ここまでやられると、参ったとしか言いようがありません。
所々におおっと思うような素晴しいショットが垣間見えるのもまた楽しい。
荒木一郎の音楽が最高(hotwaxから「やさぐれ姐御伝 総括リンチ~やさぐれ歌謡最前線」というCDが出てます。ワタシの愛聴盤)。
『白い指の戯れ』の中で流れていた曲(冒頭、伊佐山ひろ子が谷本一と手をつないで作品タイトルが出たときに流れる)が、この作品でも流れてました。
同じ1972年の製作。どちらの為につくられた曲なのかな?
杉本美樹、やはりセリフ棒読み。
杉本美樹とサンドラ・ジュリアンが水しぶきや菜の花畑の中を裸で走る無意味さにもう場内爆笑。
ちなみに劇中連呼されていた法令175条「閨房禁止令」、現在日本の刑法では175条は「わいせつ物頒布罪」ですよ。
ココニ注目シテクダサイ。
(法学部出身のプチ知識を披露してみました)

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再び結城良熙氏来場『発禁本「美人乱舞」より責める!』『人妻集団暴行致死事件』

ラピュタの田中登特集、
本日は『発禁本「美人乱舞」より責める!』と『人妻集団暴行致死事件』を鑑賞。

『発禁本「美人乱舞」より責める!』(ニュー・プリント上映)。
傑作。素晴しい!
スクリーンに映し出される全てが完璧に美しい。
少しの隙もない、重厚な映像にどっぷり惹きこまれました。
冒頭、廊下の上をカメラがスローで動き、間もなくギーギーという音がする。
それは宮下順子を縛る縄の音。
もう、ここでやられたと思いました。
中島葵が雪原に埋められるシーン、雪の下を掘って下からカメラを撮っているようで、素晴しいショット。
そして何より、主人公・伊藤晴雨に勝るとも劣らない田中登の残酷さ。
宮下順子と中島葵に雪原の上を歩かせ、雪の中に埋め、氷が張った池の中に沈める。
恐ろしい田中登の責めっぷり。
その殺気がスクリーンからこちらに伝わってきて、その迫力に観ていて、心臓が痛くなりました。
それなのに、ひどく感動いたしました。
これまでワタシが観た宮下順子の出演作の中で、この作品での宮下順子が一番美しく写っているなと。
最初の濡れ場のシーンでの、彼女の肌の美しさったら、ちょっとないです。
そして脳梅毒で発狂した後、蝋燭の責めで一瞬正気を戻したようになって火鉢を倒すシーンの素晴しさ。
見事としか言いようのない作品でした。

上映後、結城良熙プロデューサーのトークショー。
ここで伊藤晴雨を演じた主演の山谷初男さんもサプライズでご登場。
結城氏によると、プロデュースした田中登作品5作の中でこの『発禁本「美人乱舞」より責める!』が一番しんどかったと。
現場は過酷で、田中登はまったく妥協しなかったとのことで、
日光の戦場ヶ原での雪の中でのロケのエピソードを披露されていました。
本当に襦袢だけの女優さんを雪の中の埋め、(ただし、池に沈めるシーンは実は下にドラム缶を入れてあり、ドラム缶には湯気が出ない程度のお湯を入れていたのだとか)、
宮下順子を木に縛るシーンで、撮影後すぐ抱きかかえ、宿に帰り、マッサージをして、身体を温めてからぬるま湯に入れたのだと。
なぜなら、冷えた身体をすぐに熱いお湯に入れると凍傷で皮が剥けるからだと・・・(恐ろしい)。
撮影後、宿でもともとお酒好きの宮下順子はヤケ酒でさらに酒量が進んだのだのだとか。
通常ロマンポルノでは、作品のためにセットを組むことはないのだけれど、この作品では庭と家のセットを組み、撮影日数も長めだったと。
劇中、山谷初男が巧みに縛るシーンがあったけれども、特に指導は受けてなかったと言っておられた(ということが信じられないほど、見事に手際よく縛っていて、観ていてワタシはオオ!すごいと思いました)。
山谷氏にによると、田中登はしつこく、それもうるさくしつこいのではなく、演技に納得いかない時に、黙ってしつこかったと。

大体以上のような過酷だったこの作品の撮影時の話を結城氏、山谷氏がされていました。
道理で殺気がスクリーンから伝わってくるはずです。
『発禁本「美人乱舞」より責める!』は、監督とスタッフ、そして何より俳優達の執念がこもった傑作でした。
(写真は左から結城プロデューサー、山谷初男氏、司会の高崎俊夫氏)
結城プロデューサー、山谷初男氏、高崎俊夫氏


次に『人妻集団暴行致死事件』。
これも素晴しかった。何より音楽が良くって、
昨日観た『丑三つの村』は音楽がすべてをぶち壊していましたが
(音楽ナシにした方がよっぽどまし)、
この作品の音楽は最初から最後までカッコよく、かつ映像を引き立たせていて見事でした。
この作品、実際に起こった事件をもとにしており、
非常にセンシティブな問題がバックにあるので、
ともすれば、ひたすら暗くなるところを、美しく素朴な夫婦愛に昇華させていて、最後、警察で妻が心臓が悪かったことを知らされた時に室田日出男が言う意外なセリフなど、脚本の妙を感じました。

『発禁本「美人乱舞」より責める!』と『人妻集団暴行致死事件』、
両方とも、異形ではあるけれども、究極の夫婦愛を描いた映画でした。
感動いたしました。

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田中登監督『丑三つの村』『愛の報い』を観る

本日もラピュタの田中登特集へ。

『丑三つの村』。
(津山30人殺し事件についての無限回廊のページはコチラ
音楽が最悪。
画にまったく合っていない能天気で安っぽい電子音楽が終始うるさく、耳障り。
田中美佐子、池波志乃のヌードが見もの、かな。
古尾谷雅人と石橋蓮司が取っ組み合いするシーンは最高。
クライマックスのはずの殺戮シーンは意外にあっさり。
もっと主人公の狂気を際立たせた演出にしたら良かったのではと思う。
観終わって、消化不良というか欲求不満が残る。
とにかく映画史上最悪とも言っていい映画音楽でした。

木曜ゴールデンドラマ『愛の報い』。
有名な克美しげる(克美茂)の殺人事件をもとにしたドラマ。
実際の事件では愛人を殺害しているけれども、
このドラマでは未遂に終わって、愛人役の桃井かおりが自分を殺そうとした風間杜夫の裁判を傍聴し、信じていた風間杜夫の本心、裏切りを思い知るという内容になっています。
そもそも、実際の克美茂の殺人事件自体が不愉快極まりない事件なので
(コイツは身勝手な理由で自分に貢いだ愛人を殺しておきながら、懲役10年の甘い判決を受け、さらに嘆願運動もありたった7年で出所し、その後覚醒剤取締法違反で逮捕されている)、
それをもとにどうドラマ化しても、不快な内容にしかならないと思います。
脚本を殺人未遂にして桃井かおりを裁判傍聴させたことで、さらに後味の悪い内容に。
酷い目に合わされた桃井かおりの父親・名古屋章をドラマの語り部にしたので、ますますさらに後味が悪い。
こんな内容のドラマがゴールデンタイムに放映されお茶の間のテレビに流れたということが驚き。
なぞに思ったのが、前半、二人が同棲している部屋で風間杜夫が風呂から出てくるシーン、その時の風間杜夫のいでたちがなぜか女装に化粧で、オネエ言葉。
そして厚化粧の風間杜夫が桃井かおりに言った言葉が
「トルコに行ってくれ」。
女をトルコに行くように説得するときは女装が効果的なのでしょうか?
ここでなぜ風間杜夫が女装していたのか、わかった方教えてください。
愛の報い

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中川梨絵氏来場『(秘)女郎責め地獄』

本日もまたまたラピュタで田中登特集。
順番待ちの間、常連のおばあさま方とお話していたのですが、
中でも今朝は84歳のおばあさまが整理券をとりにいらしていて、
ラピュタのスタッフの方が「ロマンポルノですがいいですか?」と訊かれてましたが、
おばあさま、ロマンポルノで構わないと回答。
ワタシも84歳までもし生きながらえていたら、若い人達と劇場でロマンポルノ観たいです。


『(秘)女郎責め地獄』
作品冒頭、カメラがまず石の上に血文字で「(秘)女郎責め地獄」と書かれたオープイング・タイトルを映し、そのままスタッフ・キャスト名が次々書かれた石畳をを長廻しで移動しながら映し、石畳のタイトル・ロールが終わるとカメラはそのまま女郎が立ち並んでいる裏見世を俯瞰で撮る。
ここまでの流れが見事。
終盤、死んだはずの高橋明が女郎部屋を次々と移動するシーンでのカメラの動きも良かった。
カメラ、美術が見事だっただけに、アフレコが不自然だったのが残念でした。

上映後、主演の中川梨絵さん登場。
チャキチャキで、意外にもとても小柄な方でした。
まずは東宝ニューフェイスに選ばれ、成瀬巳喜男の『乱れ雲』でデビューされたことを話されてました。
ラピュタの作品解説に「黒子を使っておせんが人形振りで踊る名場面の様式美は語り草になっている」と書かれたあのシーンは中川さんご自身が振り付けをされたのだそう。
お話の中で、おおっと思ったのが、『(秘)色情めす市場 』を見た東映の俊藤浩滋プロデューサーが田中登を起用したエピソードについて。
田中登は長い間、どうして俊藤浩滋が『(秘)色情めす市場 』を見ていたんだろうと不思議に思っていたが、実は当時東映の『実録飛車角・狼どもの仁義』の撮影をしていた中川さんが俊藤浩滋に絶対『めす市場』観るように薦めたのだと。
そしてその事実を昨年のラピュタの田中登特集のトークショーの際に、はじめて中川さんは田中登に教えて、田中登の30年来の疑問が解決したら亡くなってしまったと。
そして、東映京都での『神戸国際ギャング』を撮影の際、田中登が宿泊していたホテルに深作欣二が突然訪ねてきたのだと。
深作は田中に「君があの『(秘)色情めす市場 』を撮った監督か?」と言って一升瓶を持ってやってきて、一晩中言葉も交わさずにお互いの顔を見合って飲み交わしたのだと。
そして、『仁義の墓場』に『(秘)色情めす市場 』の芹明香が出演する流れになったのだ、と。
どうです?このエピソード!
ワタクシ、やはり、そうだったのかー!と思いましたよ。
よく『仁義の墓場』の芹明香は『(秘)色情めす市場 』の影響を受けていると言われますが、それが紛れもない事実で、そういうエピソードがあったのかと感激いたしました。
あと、『実録 阿部定』について、田中登は最初主演に中川さんを起用したかったのだと言っておられました。
中川さんにとっての田中登とは「命がけのスパーリングの相手」だと。
非常に印象的な言葉でした。

次の『愛欲の標的(ターゲット)』も鑑賞。
2時間ドラマ的内容。
係累のない貧しい靴屋の店員・拓二(河西健司。美空ひばりの息子の加藤和也に似ている)が住むもの凄い年季の入ったアパートは同潤会アパートメント?
同潤会といえば、江戸川アパートに住んでいた坪内ミキ子さんが、アパート取り壊しの際に、自宅にあった調度品(からガラクタまで)を神楽坂の某和風カフェで展示販売していたことがありました。
ワタシも何か掘り出し物はないかと見に行ったのですが、映写機から早稲田大学の校章まで坪内家の色々なものが売られていて、ワタシは古いデュポンのライターを買いました、何故か。
(ワタシはタバコは吸いません)

話がそれました。
「性と愛のフーガ 田中登の世界」、後半戦も頑張ります。

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鹿沼えり氏来場『天使のはらわた 名美』

本日もラピュタの田中登特集へ。

『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』。
最後に劇場で観てから何年も経ち、細部を忘れてしまったので、今回再見。
闇と光の映画だな、と。

『天使のはらわた 名美 』。
あまりにハードすぎる内容・・・。
98分の作品ですが、120分ぐらいに感じました。
主人公・名美が勤務する出版社として神田駿河台のヴォーリズ設計の主婦の友社ビルが写しだされ、おおっと身を乗り出してしまいました。
ワタシは、その後磯崎新が建て直したお茶の水スクエアしか知りません。
昔のヴォーリズの頃の建物は映像で初めて見ました。
(トークショーで中央公論社と言われていましたが、正しくは主婦の友社旧社屋)
ラピュタの作品解説にあるように八神純子の「みずいろの雨」がとても効果的でした。
曲の空気と作品の雰囲気がぴったり。
それからゴミ処分場での古尾谷雅人が水島美奈子を車の上で強姦するシーン、笑ってしまった(強姦シーンでのこういう展開、はじめて観た)。

そして主演の鹿沼えり(現・鹿沼絵里)さん登場。
(トークショーの聞き手は高崎俊夫氏)
歳月が経っても美しい顔立ちの方でした。
30年ぶりぐらいにこの作品を観て、疲れたーと思われたとのこと。
ご自身では、当時は演技がよくわかっていなかったので、ハイテンションで演じ続けてしまったと言っておられた。
以下お話の内容を思い出して羅列。
日活では『時には娼婦のように』1本だけ撮るつもりだったが、『天使のはらわた 名美』の台本を読み、石井隆の名美の絵が自分に似ていると言って、名美を演りたいと田中登に立候補した。
そして長い髪を名美のイラストに似せるよう切った。
出版社のシーンは外観はロケで、中のシーンはセットだった。
目のアップのシーンが多く、最後の眼球の毛細血管は鹿沼さんご本人のものだと。
雨のシーンも多く、ロケでは実際には映画で見える3倍ぐらいの量を降らしていて、最後の屋上での金網のシーンでは、鹿沼さんが38度の熱があり大変だった。
セリフはアフレコなので、田中登は雨の中、目を開けろ!とを声を出していたが、雨がすごくて目を開けてられなかった。
オフィスで皆の前で裸になるシーンは一日がかりで撮影していて、長い時間無理な姿勢をしていたので次の日トイレに行くのも大変だった。
病院のシーンは本物の病院で撮影した。
実際にはもっと色々なシーンを撮っていて、上映作品は随分編集したもので、鹿沼さんは、あのシーンもない、このシーンもない、と当時思ったと。
この『天使のはらわた 名美』は夫・古尾谷雅人との出会いの作品で、劇中共演しているシーンはなかったが、ゴミ処分場での撮影は鹿沼さんも観ていた。そして、次回作で古尾谷雅人との共演を熱望したのだと。
そして古尾谷雅人のお話。
古尾谷雅人はエキストラとしてトラック野郎に出ており、それを見た田中登が『女教師』に抜擢した。
『丑三つの村』の撮影の時、古尾谷は今日は一人殺してきた、今日は二人殺してきたと、長男を妊娠していた鹿沼さんに言ったのだとか。
田中登はテレビ転向後、77本作品があるが、古尾谷雅人のことは映画でつかいたいと、テレビドラマでは起用しなかった。
ただ、最近テレビ東京放映された『復讐するは我にあり』はもともと田中登が撮る予定で、脚本も西岡琢也で(『丑三つの村』の脚本を担当)、鹿沼さんは田中登が存命だったら古尾谷雅人が演じたのでは、とおっしゃられてた。
質疑応答で、1本だけのつもりだった日活で十数本撮った理由をきかれ、
日程がハードで厳しかったが、撮影所の雰囲気が良かったからとおしゃってた。
古尾谷雅人との出会いについて質問には、「私が釣ったんです」と即答。
撮影の後、飲みに誘い、当時鹿沼さんはスバルビル(ロケの集合はスバルビル前が多い)から徒歩5分の所に住んでいて、飲んだ後鹿沼さんの自宅で仮眠をとり、毎日くるようになり、そのうち同棲するようになった。
息子が生まれ、鹿沼さんは当時俳優として出世する途中だった古尾谷のことを考え、シングルマザーになることを覚悟していたが、古尾谷が結婚するといい、結婚式をあげることになった。
鹿沼さんをかわいがっていた大原麗子と森進一が仲人をしたので、大きな式になってしまったと。
ところが仲人の大原麗子・森進一はすぐに離婚してしまったと(ここで場内笑い)。

そして講談社から出された本「最期のキス」を紹介されていました。
そばで鹿沼さんを拝見しましたが、結構長身な方でした。
鹿沼さんがトークショーでされていたお話、また思い出したら付け加えます。

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ワタシにとっての都知事選

東京都知事選が近づいてきました。
ここで都知事選にちなんだ写真を。

3月24日、友人と六本木の国立新美術館に行きました。
おお、黒川紀章センセイの建物、ステキではないですかー。
国立美術館

国立美術館

国立美術館


「異邦人(エトランジェ)たちのパリ 1900 - 2005 ポンピドー・センター所蔵作品展」を鑑賞。
ブラッサイやケルテスの写真にうっとり。
ポンピドー展のショップで金太郎飴が売ってました。
思わず、買ってしまいました。友人はこの金太郎飴を見て、
安藤忠雄の顔かなーと真面目に言ってましたが、
ポンピドー展に安藤は関係ありません。黒川紀章ならともかく。
金太郎飴

12時10分頃、美術館内のブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼに行くと、既にこの状態。
1時間30分待ちだと!どうかしてます。
ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ 


で、諦めて六本木ヒルズのTORAYA CAFEで至福のスイーツを頂く。
トラヤカフェ

トラヤカフェ


トラヤカフェを出たら、ドクター中松が演説しているではないですか。
ドクター中松

おや!ドクター中松の近くにいるオジサンは桜金造?。
金造

やっぱホンモノだ。
金造

ドクター中松の演説を聴く桜金造の図。
ドクター&金造

次は、石原慎太郎と浅野史郎をカメラに収めようと思います。

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お花見

4月1日お花見に行ったのでその写真をアップしたします。
ラピュタで映画を観る前、阿佐ヶ谷駅から小型バス「すぎ丸」に乗り(運賃100円)、善福寺川緑地で下車。
散り際の桜、美しかったー

桜


桜


桜


桜

こんな美しい桜を見た後、ロマンポルノと『安藤昇のわが逃亡とSEXの記録』を鑑賞したのでした。

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田中登特集『横溝正史の鬼火』『女教師 私生活』『安藤昇のわが逃亡とSEXの記録』

桜を見に行った後、本日もラピュタの田中登特集へ。

土曜ワイド劇場『横溝正史の鬼火 仮面の男と湖底の女』(1983年)。
昭和18年、信州の湖のほとりの旧家・漆山家の当主掬太郎(伊丹十三)は、水商売上がりの浦江(宇津宮雅代)を後妻に迎えた。家には先妻の子で11歳の満寿夫と1つちがいの弟代助がいた。兄弟は美しい義母にあこがれを抱くが、浦江は想像を絶する陰険な女で、あらゆる機会をつかまえては兄弟にけんかをさせた。仲のよかった兄弟は、この残酷な“教育”によって、骨肉相食む仇敵となってしまった。ある日、浦江と通じていた山番の死体が湖から上がり、同時に浦江もこつ然と姿を消してしまった。15年後、成人として画家となった満寿夫(中山仁)と代助(高橋長英)は相変わらずおたがいに憎しみを燃やしていた。満寿夫が代助の婚約者京子(風吹ジュン)を奪ってしまったのである…。
(テレ朝チャンネルホームページより
昨日観た『白い悪魔が忍びよる』同様メチャクチャ面白い。
この当時の2時間ドラマの作品に質の高さを改めて認識いたしました。
美しい自然、謎めいた悪女、呪われた運命の兄弟、と道具は揃っております。
主人公兄弟のファム・ファタールを演じた宇津宮雅代が魅力的かつ恐ろしい。
警察官役で植木等も出演していました(とてもいい味出してた)。
プロデューサー・岡田裕、企画・角川春樹事務所、とエンドロールに出ておりました。
この作品はCSなどで放送されることがあるようなので、機会があれば是非ご覧になられたらよいかと思います。

次に『女教師 私生活』。
ワタシ、この作品気に入りました。
当時24歳の風間杜夫が高校3年生の役をやっていますが、あどけない顔にニキビなんかあって、ちゃんと高校生に見えます。
幻想的でシンボリックな作品。
公園の芝生で、花びらが舞う中のセックスシーン、とてもファンタジックでした。
女教師演じる市川亜矢子が風間杜夫と同棲する(実質ペットとして風間杜夫を飼っている状態なのですが)部屋も、天井が高く梁なんかも凝ったつくりの古い洋館の一室で、現実感がありません。
音楽の選曲が良くて、『女教師』と同じくショパンが多用されておりました。
風間杜夫が同級生の女子生徒に夢について訊かれたとき、風間杜夫がアグネス・チャンの「ひなげしの花」のレコードをかけ、「おっかのうえ~」と流れる中、風船を膨らまして部屋の天井に風船が上がっていくのも印象的でした。
この作品は渋谷映画でした(道玄坂、渋谷地下街、公園通り、原宿駅駅前などでロケ)。

そして『安藤昇のわが逃亡とSEXの記録』(1976年・東映)。
昨年、横井英樹襲撃事件で犯人隠匿の罪で起訴された新聞記者を描いた鈴木英夫監督作品の『非情都市』を観てから(感想コチラ)、『わが逃亡と~』を観たくてたまらなかったので、とても楽しみにしておりました。
まず笑ってしまうほど、劇中安藤昇が格好いい人物となっております。
安藤昇の自伝を元につくられているし、何しろ安藤昇自身が演じるので、こうなるのは当然です。
気恥ずかしいぐらいに都合よくカッコよい「安藤昇」の自慢話を安藤昇自身が堂々と演じ続けるのは観ていて面白かった。
最後に逮捕される時のあのシーンと、パトカーの中でのあのシーンは、まさか本当ではないでしょう?脚色でしょう?
全編、脚本書いた人(高田純)が安藤昇にすごく気をつかっている感じがしました。
そもそも安藤昇の自伝自体が、いかに女性を喜ばした偉大な人物であるかという内容だとどこかで読んだことがありますが。
この作品、いかにも東映「実録ヤクザ映画」で、田中登色はあまり感じられませんでした。
でも、ああいう役を堂々と演じる安藤昇を観てるだけで面白かった。
当時安藤昇は50歳でしたが、とてもそうは見えません。40歳前ぐらいに見えました。
最後に横井英樹襲撃事件の本物の映像が流れるのですが、逮捕された時の安藤昇のモノクロ映像を見ると、さすがに若かったなとは思いましたが(事件当時32歳)。

田中登のロマンポルノ、東映作品、テレビドラマと見て、ロマンポルノが真骨頂であるのは言うまでもないですが、テレビドラマが見逃せないな、と。
テレビドラマ作品のDVD化を切に願います。

テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

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 リネン

Author: リネン
♀。会社員。独身。
東京23区在住。
深煎りコーヒーが好き。
成瀬巳喜男監督作品56本を
劇場で観たのが自慢。

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