ラピュタの田中登特集、
本日は『発禁本「美人乱舞」より責める!』と『人妻集団暴行致死事件』を鑑賞。
『発禁本「美人乱舞」より責める!』(ニュー・プリント上映)。
傑作。素晴しい!
スクリーンに映し出される全てが完璧に美しい。
少しの隙もない、重厚な映像にどっぷり惹きこまれました。
冒頭、廊下の上をカメラがスローで動き、間もなくギーギーという音がする。
それは宮下順子を縛る縄の音。
もう、ここでやられたと思いました。
中島葵が雪原に埋められるシーン、雪の下を掘って下からカメラを撮っているようで、素晴しいショット。
そして何より、主人公・伊藤晴雨に勝るとも劣らない田中登の残酷さ。
宮下順子と中島葵に雪原の上を歩かせ、雪の中に埋め、氷が張った池の中に沈める。
恐ろしい田中登の責めっぷり。
その殺気がスクリーンからこちらに伝わってきて、その迫力に観ていて、心臓が痛くなりました。
それなのに、ひどく感動いたしました。
これまでワタシが観た宮下順子の出演作の中で、この作品での宮下順子が一番美しく写っているなと。
最初の濡れ場のシーンでの、彼女の肌の美しさったら、ちょっとないです。
そして脳梅毒で発狂した後、蝋燭の責めで一瞬正気を戻したようになって火鉢を倒すシーンの素晴しさ。
見事としか言いようのない作品でした。
上映後、結城良熙プロデューサーのトークショー。
ここで伊藤晴雨を演じた主演の山谷初男さんもサプライズでご登場。
結城氏によると、プロデュースした田中登作品5作の中でこの『発禁本「美人乱舞」より責める!』が一番しんどかったと。
現場は過酷で、田中登はまったく妥協しなかったとのことで、
日光の戦場ヶ原での雪の中でのロケのエピソードを披露されていました。
本当に襦袢だけの女優さんを雪の中の埋め、(ただし、池に沈めるシーンは実は下にドラム缶を入れてあり、ドラム缶には湯気が出ない程度のお湯を入れていたのだとか)、
宮下順子を木に縛るシーンで、撮影後すぐ抱きかかえ、宿に帰り、マッサージをして、身体を温めてからぬるま湯に入れたのだと。
なぜなら、冷えた身体をすぐに熱いお湯に入れると凍傷で皮が剥けるからだと・・・(恐ろしい)。
撮影後、宿でもともとお酒好きの宮下順子はヤケ酒でさらに酒量が進んだのだのだとか。
通常ロマンポルノでは、作品のためにセットを組むことはないのだけれど、この作品では庭と家のセットを組み、撮影日数も長めだったと。
劇中、山谷初男が巧みに縛るシーンがあったけれども、特に指導は受けてなかったと言っておられた(ということが信じられないほど、見事に手際よく縛っていて、観ていてワタシはオオ!すごいと思いました)。
山谷氏にによると、田中登はしつこく、それもうるさくしつこいのではなく、演技に納得いかない時に、黙ってしつこかったと。
大体以上のような過酷だったこの作品の撮影時の話を結城氏、山谷氏がされていました。
道理で殺気がスクリーンから伝わってくるはずです。
『発禁本「美人乱舞」より責める!』は、監督とスタッフ、そして何より俳優達の執念がこもった傑作でした。
(写真は左から結城プロデューサー、山谷初男氏、司会の高崎俊夫氏)

次に『人妻集団暴行致死事件』。
これも素晴しかった。何より音楽が良くって、
昨日観た『丑三つの村』は音楽がすべてをぶち壊していましたが
(音楽ナシにした方がよっぽどまし)、
この作品の音楽は最初から最後までカッコよく、かつ映像を引き立たせていて見事でした。
この作品、実際に起こった事件をもとにしており、
非常にセンシティブな問題がバックにあるので、
ともすれば、ひたすら暗くなるところを、美しく素朴な夫婦愛に昇華させていて、最後、警察で妻が心臓が悪かったことを知らされた時に室田日出男が言う意外なセリフなど、脚本の妙を感じました。
『発禁本「美人乱舞」より責める!』と『人妻集団暴行致死事件』、
両方とも、異形ではあるけれども、究極の夫婦愛を描いた映画でした。
感動いたしました。