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鈴木則文監督 美は乱調にあり 『文学賞殺人事件 大いなる助走』 『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』

ゴールデン・ウィーク初日の朝、駅には旅行トランクを押す人が多い中、私は鈴木則文特集に行くためにシネマヴェーラへ。

『文学賞殺人事件 大いなる助走』。
文壇を描いたとってもよく出来たパロディ映画。
文学が好きな人、文学を商売にしている人、かつて文学を商売にしたかった人が観ると、かなり面白い。
ワタシ、可笑しくって笑いっぱなしでした(もちろん、文学が好きな人として)。
一大企業にたよる地方都市・焼畑市(架空の街。日立市や豊田市みたいな市)の描き方や、登場人物一人一人のキャラクター像がとても具体的でハッキリしていて生々しく、素晴しい。
文壇の腐った内幕をこの上なく面白おかしく戯画化して描写。
当然筒井康隆は出てくるんだろうなと思って観ていたけれど、途中、胡桃沢耕史と団鬼六が出てきてビックリ。
佐藤浩市がオカマをほられるシーン、あははは。
そして第九が流れる中、お約束のハチャメチャな主人公の暴走。
筒井康隆の怨念と、そもそも文学は世の中に必要なものなのかという疑問(というかタブー)が根底に流れている一作。
地方の同人誌の面々も中央文壇も救いようのない腐り様に描かれていて、まぁある程度は現実なんだろうな、と。
石橋蓮司がすごかった。

『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』。
ああやっぱり、なんて面白いんだーと思いながら鑑賞。
見せ所がいっぱい。
何と言っても、最初から最後まで色彩の美しさに目を奪われっぱなし。
花札の絵柄の色調を中心に、スクリーンがカラフルなことこの上ない。
石井輝男監督の『やさぐれ姐御伝 総括リンチ』は迷路に迷い込む感覚で観客を眩暈させるけれども、『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』は色の洪水で観客を幻惑するのです。
観ていて、この作品も『キル・ビル』の元ネタの一つだったんだな、と。
雪での殺陣のシーンなんて、それっぽい。
本作での荒木一郎の音楽も超クールです。
主演の池玲子もいいんだけれど、ワタシ的にはクリスチーナ・リンドバーグがツボ。
ロリータ顔に豊満なボディが魅力的な女優ですが、この作品では鹿鳴館ファッションに身を包んで銃を撃ったり、和服を着たりで、魅力全開。
この和服姿のクリスチーナ、超ラブリー。
(本作品の撮影のために東映に招聘されたクリスチナ、撮影日数が余ったのでついでに製作されたのが荒木一郎と共演した中島貞夫監督作品『ポルノの女王 にっぽんSEX旅行』)
クリスチナの相手役の成瀬正孝、イケメンなんで、クリスチナとのツーショットは目の保養になりました。
大満足の90分。やっぱり娯楽映画はこうじゃなくちゃね。
9月にDVDが出るようですが、絶対買います。

客席を出ると、窓口に鈴木監督ご本人を発見。
帰り際監督と同じエレベーターに乗ると(監督とワタシ二人きり)、監督からワタシに話しかけてこられました。
どうだった?と監督。
もう、面白くって感動しました、とワタシ。
色、きれいだったでしょ?と監督。
ハイ。もう、色がきれいでビックリしました、美術も素晴しかったし、音楽もよかったです。とワタシ。
ああ荒木一郎だね。次の作品も観てね、と監督。
ハイ、行きます!とワタシ。
そして、1階に下りたところで、監督にサインをお願いしました。
すると監督、「そんな大した監督じゃないよ」とおっしゃりながらも、書いて頂きました。
手帳にシャープペンシルしか持っていなくて、ちゃんとしたものにお願いできなかったのが、残念ではありますが、
 美は乱調にあり 鈴木則文
と芸術的な御文字。
うーん、この言葉について、これからの人生じっくり考えていこうと思います。
美は乱調にあり


劇場から外に出ると、雨がおちてきそうな感じ。
すぐそばのブック・ファーストに入り、本をみていると案の定雷が鳴り土砂降りに。
傘がなくそのままでは外に行けないので、雨が止むまで本を数冊買ったり立ち読みしたり。
安藤昇の「戯言」を手に取る。彼のある意味でのフェミニストぶり、女性崇拝ぶりが面白いね。これじゃモテるはずだ。
それから『網走番外地 吹雪の斗争』の撮影時、石井輝男に無断で現場を離れ東京に帰ってしまった時のエピソードが載っていました。
当時石井輝男は大監督といわれていて、端役の俳優に対し粗末な対応をしたり、弱いものいじめをするのという噂がありもともと好きでなかった、そして・・・・というエピソードが書いてありましたよ。
そして安藤昇のヰタ・セクスアリス「不埒三昧―わが下半身の昭和史」を買って帰ろうかと思いましたが、何だか急に恥ずかしくなり退散。

美は乱調にあり。これから毎日携帯します。
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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

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 リネン

Author: リネン
♀。会社員。独身。
東京23区在住。
深煎りコーヒーが好き。
成瀬巳喜男監督作品56本を
劇場で観たのが自慢。

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