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『娘はかく抗議する』と『不良少女 魔子』

本日はラピュタで2本鑑賞。

モーニングで川島雄三監督の性典もの『娘はかく抗議する』。
この作品、夏に行われたフィルムセンターの川島雄三大特集ではプログラムに含まれておりませんでした。
今日観てみて、出来が悪い作品だからフィルムセンターで上映されなかったんだなと思いました。
『娘はかく抗議する』は「生活のために撮った」方の作品のようです。
ちなみに桂木洋子は主演ではなく、主演の女子高生の親友役でした。

レイトで『不良少女 魔子』(1971年、日活)。
蔵原惟二監督は蔵原惟繕監督の弟ですね。
この作品は、『八月の濡れた砂』と共に、日活がダイニチ映配に提供する最後の作品なのだそうです。
そういう背景にもかかわらず、かなり完成度の高い作品でした。
渋谷を舞台している不良少女のグループに属している少女・魔子(夏純子)のお話。
ワーグナーの楽劇なみに一部を除いて最初から最後まで音楽が流れていて、この鏑木創による音楽がムチャクチャかっこいい!
やはり鏑木創は天才だなと。
ところで、魔子の兄(藤竜也)の所属する安岡組の組事務所が、橋のたもとに建っている茶色い装飾タイルの相当古そうな趣のある建物なのですが、この建物『白い指の戯れ』(1972年)のタイトルロールのところでも映っていて、かなり印象的な建物でしたので(「池田パン」という看板がかかっている)、『不良少女 魔子』を観て、すぐ同じ建物だとわかりました。
『白い指の戯れ』では風景として1回映るだけなのですが、『不良少女 魔子』の方はストーリーの中の舞台の一つなので何度も映し出され、アンティークな雰囲気満点の建物内部でも撮影されていて、さらにこの建物のことが気になりました。
『不良少女 魔子』で住所表記の看板が映るシーンもあったので、目を凝らしたのですが、判読できませんでした。どこにあった建物なのでしょうか?気になります。
『不良少女 魔子』は渋谷が舞台の話ですし、『白い指の戯れ』も冒頭渋谷の喫茶店でのシーンで始まって下の写真のスタッフ・ロールにつながっていくので、渋谷近辺だと推測いたします。

『白い指の戯れ』より。この茶色い建物が『不良少女 魔子』の安岡組事務所。
白い指の戯れ
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『母のおもかげ』『美貌に罪あり』そして「映画のポケット」

朝10時半から神保町シアターで『母のおもかげ』を鑑賞。
清水宏監督の最後の作品だそうです。
カメラの横移動(いつも右から左)の連続にひどく驚きました。
普通、カット割するようなシーンでも、割らずにそのまま横移動。
病院の廊下から厨房にかけても横移動、少年の家の中でも横移動。登校・出勤で道を歩くシーンも横移動。
あまりに繰り替えされるので、段々とディズニー・ランドのイッツ・ア・スモール・ワールドやホーンテッド・マンションに乗っているような気分になりました。
中でも驚いたのが、冒頭の、少年の家の中で動きを追ったカメラ。
部屋の中を右から左にグーッと横移動して、そのままワンショットで上方向に移動して屋根の上にある鳩小屋までカメラが動くのです。
上への動きは意表を衝かれました。

カメラの動きばかり気にしていたわけではなく、淡島千景演じる母親の涙に、ワタシもいっしょに涙しました。
『母のおもかげ』、素晴しかったです。

シネマアートン下北沢で『美貌に罪あり』を数年ぶりに再見。
観終わって劇場を出ると台風が接近していて外は嵐。
ずぶ濡れになりながら、古本カフェ・気流舎へ。
アレン・ギンズバーグ詩集を購入。
お店の方にここのコーヒーの味について質問すると、凄い深煎りとのことだったので、それじゃあとコーヒーを注文。
ちゃんと豆をその場で挽いてネルで淹れられていて、美味しいコーヒーが出てくる予感がし、そして出てきたコーヒーを口に入れた途端その美味しさにビックリ。
深くて甘くて濃厚で香り高く、絶品。
どこの豆を使われているのか伺うと、銀座の十一房珈琲のフレンチ・ブレンドとのこと。
十一房のブレンドならワタシも何度も買ったことがあるけれど、こんなに美味しく淹れられなかったです。
下北沢で美味しいコーヒーを飲むなら、気流舎がオススメです。

その気流舎で19時から鈴木並木さんが開催されている映画に関するトークイベント「映画のポケット」に参加。
今回はゲストに原田和典さんを迎えて「告白的女優論」というタイトルで行われました。
前半は鈴木並木さんによるトーク。五十音順に主役女優を紹介していくということで今回は「あ」の女優さんから。
浅丘ルリ子について舛田利雄監督「女を忘れろ」、蔵原惟繕監督「憎いあンちくしょう」、 岩下志麻について中村登監督「古都」、渋谷実監督「好人好日」の一部を上映しながら説明。
後半は原田和典さんによる若尾文子についてのトークと溝口健二「赤線地帯」、川島雄三「しとやかな獣」、増村保造「妻は告白する」の上映。
原田さんは女優のパーツ重視主義者でらっしゃるようで、若尾文子についてはうなじの魅力を話されていました。

当たり前のことですが映画の見方は人それぞれ違います。
たとえば、原田さんは監督より俳優を基準に作品をご覧になるそうで、逆に鈴木並木さんは俳優ではなく監督で映画をご覧になるのだそう。
(ちなみにワタシは両方)
「映画のポケット」、人それぞれな色々な映画の見方のお話を聞くことができる楽しいイベントです。コーヒーと同じくオススメです。

イベント終了後打ち上げで、出席者にまだ20代半ばにもかかわらず驚異の博覧強記な好青年がいらしていて、その方のお話を聞いていて驚き感心し恐れ入ってしまいました。
70歳ぐらいの人がリアルタイムで経験したことに関して、恐るべき量の知識を持ってらっしゃるんですよ。それも衒学的な感じではなく、本当にそういうものを愛好してらっしゃる視点からの知識なんです。
いやはや。世の中凄い方がいるものです。
(「映画のポケット」は映画マニアのためのイベントではなく、初心者から楽しめる催しです。もちろん、コアなファンも楽しめますが。)

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『野獣狩り』

本日も東京国際映画祭へ。
ル・シネマにて須川栄三監督作品『野獣狩り』(1973年、東宝)を鑑賞。
今回の映画祭で一番楽しみにしていた作品。期待以上に素晴しかったです。傑作。
「1973年5月17日」というキャプションから映画は始まります。
次に電車の週刊誌の中釣り広告のカット(ハイセイコーや小川知子結婚などの記事)が映り、チャカポコチャカポコいってるムチャクチャ格好いい音楽が流れています。
ううううむ。この映画は傑作に違いないな、と。
熱血漢の主人公・藤岡弘は、伴淳三郎演じる父親ともども銀座署の刑事。
親子揃って同じ署に務めるはずないだろうとか、親子なのに全然似てないとか、伴淳三郎あんなに歳とってるのに現役刑事のはずないとか、親子刑事が男二人だけの所帯という設定が不自然とか、そういう突っ込みはナシです。
この映画の凄いところは、早い段階で、誘拐事件の犯人グループの正体も潜伏先も観客に明らかにしていて謎解きは終っているにもかかわらず、最後までものすごい勢いと緊張感で引っ張っていき観客を魅了するところです。
これは、木村大作による驚異的なカメラ、銀座・日比谷など街頭ロケ(日劇のビルなどが映っている)、村井邦彦の音楽にもよりますが、何と言っても主演の藤岡弘の魅力によるところが大きいでしょう。
太い眉毛、フサフサした揉み上げ、見事に鍛え上げられた肉体の2枚目藤岡弘は暑苦しいまでの男らしさを撒き散らしていて、その藤岡弘が肉体的魅力を誇示するように走ったり飛んだりするものですから、観客は引き込まれずにいられません。
正直ワタシは藤岡弘の性的魅力にすっかり撃沈いたしました。
性的魅力といえば、この作品、ニューロック風だったり、70年代のドン・セベスキー風だったりする音楽が異常にカッコイイのですが、藤岡弘と渚まゆみのベッドシーンだけ音が排されていて、代わりに金魚がゆらゆら泳ぐ水槽のカットが差し込まれて、これがまたカッコイイ。
木村大作のカメラが本当に凄くて、特に衝撃的だったのが2ヶ所。
社長が誘拐されたポップ・コーラ社が入っている日比谷のビルの前の道路で藤岡弘はすぐ近くにある取り壊し前のビルに不審な様子を感じとった時のカメラの動き。藤岡弘目線で荒々しく東宝(宝塚?)のビルのてっぺんを下から撮り、次に藤岡弘の体の動きを中心に街頭の俯瞰のカット。
この映画、街頭での俯瞰ショットがとても多く、俯瞰ショット・フェチのワタシは狂喜乱舞いたしました。
もう一つの驚異的なカメラは犯人グループの一人がタクシーに乗って、走って追いかける藤岡弘から逃げる長ーいワン・ショット。
日比谷の道路を走るタクシーの後部ガラス越しに追いかける藤岡弘が最初は大きく見え、タクシーが走り出すにつれ藤岡弘が小さくなり、さらにタクシーが信号か渋滞で止まると段々とまた藤岡弘が大きくなって迫ってくるという状況を驚異のワン・ショットで撮っていているのです。
ここのシーンで劇場が沸きましたね。こんなカメラ見せられたら痺れずにはいられません。
藤岡弘が銃を持った犯人グループ2人に歩行者天国の銀座(今の銀座とは比べ物にならないほど人が多い)を連れまわされ、それを警察が追うシーン、次から次と迷路のように入り組んだ細い路地を入ったり抜けたりするシーン(途中、香港映画みたく飲食店の厨房まで通る)も素晴しかった。
藤岡弘のアクションも驚異的で、エレベーターのシーンもビルの間を飛び移るシーンも何とノー・スタントなんだそうです。しかもエレベーターに撃ち込まれたのは実弾の散弾銃なんだそう!(下記、コピペ参照。)それって銃刀法違反じゃん!

この映画、藤岡弘やらアクションやら暑苦しい魅力満載なだけではありません。
電車の中のチカン役で三谷昇が出演しております。
身長180cm、ムキムキな肉体の藤岡弘はチカンした三谷昇をとっ捕まえ、殴りかかります。
父親役の伴淳三郎は相当違和感があって、一人だけ仁侠映画の老親分みたいな古臭い言い回しをする演技をしていて周りの俳優の演技と違和感ありまくりです。
藤岡弘とも年齢差あり過ぎて全然親子に見えないし、繰り返しますが、どう見ても伴淳三郎から藤岡弘は生まれません。人種が違います。

『野獣狩り』、最後の血糊の色の不自然さ以外完璧で、毎日でも観たい素晴しい作品です
(しかしDVD化されておらず)。

下は藤岡弘によるこの作品についての解説です。
http://forest.kinokuniya.co.jp/CngSpe/269
東宝の最高のスタッフが結集し、伴淳三郎さんと共演させていただき、一番熱くて一番燃えた、思い出の主演作です。木村大作さんという名キャメラマンのデビュー作でもあります。私が演じているのは型破りな若い熱血刑事。タクシーで逃亡する犯人の追跡場面が圧巻です。日比谷の東宝の映画館のあたりから日比谷警察まで。タクシーに乗り込んだ逃走犯と並走する形で、手持ちキャメラでバイクの後ろに乗り、私の全力疾走をワンカットで撮り続けています。40階建てビルの屋上を飛び移るカット、実弾の散弾銃が打ち込まれるエレベーターに紙一重で飛び降りるカット、全部スタントなしです! ビルから人質を逆さ吊りにする場面をゲリラ的に撮ったら、本物のパトカーや消防車が駆け付けてきて、それをそのまま撮影してさあ(笑)。映画作りに対する真剣さが、今とは全然違うんだよねえ…。

野獣死すべし-復讐のメカニック、野獣狩り 野獣死すべし-復讐のメカニック、野獣狩り
村井邦彦、映画主題歌 他 (2007/08/25)
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『闇のカーニバル』、山本政志&諏訪敦彦トークショー

就業後、東京映画祭の会場であるル・シネマへ。
『闇のカーニバル』(1981年)を鑑賞。
新宿の街をどんどん横移動しながら映画は始まります。
次に映る主人公の女性ロックシンガー・クミ歌っているライブハウスを長廻しで舐めるように撮り、楽屋風景に切り替わります。
バンドメンバーがおしゃべりしているのだけれども、彼らが何をしゃべっているのかは殆ど聞き取れません。と思いつつ見ていたら、突然次に男がボコボコに暴行され血だらけになっているカットに切り替わる。
唐突過ぎて何が何だかわかりません。
その後、また楽屋風景に戻りバンドメンバーが話すセリフから先ほどの暴行シーンについての状況を多少推測することはできるのですが、こういった唐突なカットつなぎが時々見受けられる作品でした。
主人公・クミはシングルマザーで小さな息子がいて、ベビーホテルに子供を迎えに行ったり部屋で絵本を読んであげたりしているのですが、息子の父親と紀伊国屋書店で待ち合わせして、息子を父親に預けたところから真の意味での物語が始まります。そして映画はカラーから白黒に変わり、新宿を舞台に、クミを中心に何人かの人物による驚異的なエピソードが次から次と映し出されます。
そしてあんなこと、こんなこと色々あって、血だからになってズタボロになったクミは足を引きずりつつ自宅にもどり顔にこびりついた血の固まりを取り、次の日には何もなかったように爽快な顔をして紀伊国屋書店前で息子を迎えてにいきます。
そして最初と同じように新宿の街をカメラが横移動して、映画は終わります。
という作品で、特にストーリーはなく、ひたすら驚くべきエピソードの連続を見せられる映画です。

映画上映後、山本政志監督と10年強山本監督の助監督だった諏訪敦彦監督によるトークショーが行われました。
映画の内容に負けず劣らず、驚異的なエピソードが次々と披露されました。
『闇のカーニバル』の火葬場のシーンは、青梅にある火葬場に不法侵入して撮影したのだそう。
さらに映画の出てきた人骨はその火葬場に実際にあったものを失敬したものだとか…。
公園のシーンに出てくる最初ののぞきのオジサンは俳優ではなく、本当にあそこでのぞきをしている人で、しかももともと出る予定だったオジサン(傘で目をつかれて碧眼だったのだそう)が山本監督とケンカして役を降りてしまったのだとか(でも代わりに別ののぞきのおじさんを紹介してくれて、そのピンチヒッターが映画に出たのだそう)。
桑原延享が突然襲い掛かる牛乳配達員は、最初ある俳優が演る予定だったのだけれども逃げてしまい、結局、諏訪敦彦が演じたのだそうで、殴りかかる牛乳瓶のみフェイクであとは全部本物のガラスの牛乳瓶で撮影したのだと(ケガはしなかったとのこと)。そのシーンを一度撮影してラッシュを見た後、再度撮り直した時は、牛乳瓶の箱の中に割れたガラスを最初から入れて、破片がザーっとなるように撮ったのだそう。

そんな感じで諏訪監督が警察に留置されたことも含め、法を犯しつつ映画を撮っていた話が繰広げられました。
諏訪監督が山本監督から影響を受けたこととしてあげられていた話、自分は高校の頃から8ミリで撮影していて、撮影する時に撮りたい構図があって、カメラの中にうまく入るよう役者を動かしていたのだけれども、山本監督に「カメラを持っているオマエの方が動けよ」と言われたという話は面白いなと思いました。

途中、伊地知徹生プロデューサーも登場して挨拶されてました。
海外でDVDが発売されるそうです。
ちなみに本日の上映はニュープリントではありませんでした。
山本政志監督と諏訪敦彦監督

山本政志監督と諏訪敦彦監督

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『やっちゃ場の女』

就業後、神保町シアターへ。
この劇場に行くのは初めて。年齢層はフィルムセンターの次に高いです。
『やっちゃ場の女』(62年、大映、木村恵吾監督)を鑑賞。
若尾文子目当てです。
この作品の若尾文子、ちょっとムチムチしていました。
築地の青果市場を営む一家のお話なのでウォーター・フロントがいっぱい映っております。
特に佃の渡しの蒸気船や乗り場のカラー映像は貴重だと思います。
(若尾文子の父親が女をつくって家を出て佃で暮らしている設定)
新東宝倒産後、大映に移籍してきた宇津井健が若尾文子の見合い相手として出演しておりました。
主演女優が屋台で冷酒を立ったまま一気飲みして「終」っていう映画は初めて観ました。

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『新宿泥棒日記』

就業後、東京国際映画祭で『鐵三角』を観たいなぁと思いBunkamuraに向かう途中、駅方向に歩いてくるNさんに遭遇し、もう当日券ないよ、と教えられる。ガーン。
ということで代わりに大島渚の『新宿泥棒日記』を鑑賞。
若い、というか青いですねぇ。映画も出演者も。
横尾忠則、これまでも写真に写っている姿を見てフォトジェニックな存在だと思っていたけれど、映画の中で演技したり話をしたりしている横尾忠則を観てやっぱり被写体になるべき人物だなぁと思いました。
顔もいいし、目もいいし、物腰もいい。
佐藤慶(サディスティックでカッコイイ!)と渡辺文雄コンビが相当ヘン。
ところで、横尾忠則が紀伊国屋書店で万引きすることからこの映画のお話が動き始めるのですが(盗む本がジャン・ジュネの「泥棒日記」とかバタイユとかで頑張ってる感が満載。この映画のタイトルもジュネから取ったのかな?)、紀伊国屋書店で本を万引きするシーン、これまでワタシが観た中では『白い指の戯れ』『マノン』にもありました。
他にもあるのかしら?
なぜ映画の中で紀伊国屋書店での万引きが繰り返されるか?
『新宿泥棒日記』の影響から?店が撮影に協力するから?(万引きなだけに他の大手書店だと撮影お断りなんだろうなぁ)
『新宿泥棒日記』、他の方のご指摘にもある通り中島貞夫監督の『にっぽん'69 セックス猟奇地帯』と兄弟のような作品で、今回たまたま2作品を期間を置かずに連続して観ることができ幸運でした。

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『ずべ公番長 ざんげの値打ちもない 』

ラピュタのレイトで、山口和彦監督の『ずべ公番長 ざんげの値打ちもない』を鑑賞。
このシリーズ、1作目の『ずべ公番長 夢は夜ひらく』を見逃していて『ずべ公番長 東京流れ者 』『ずべ公番長 はまぐれ数え唄』と観ていっているわけですが、どの作品も山口和彦的な魅力にあふれていて、1作目を見逃したことが残念でなりません。
『ざんげの値打ちもない』、ワタシが観た中で一番出来が良かったです。

注目点は、
・何と高倉健も出演。
・原色が多用されていて、目にもあざやか。
・ゴーゴー・キャバレーのダンサーのファッションなどポップ。今の10代の女の子のファッションと同じ。
・いい場面でカメラは俯瞰。
・この作品にもヌードスタジオ登場。
・賀川雪絵の不幸メイクが強烈。
・賀川雪絵が中谷一郎演じる病気のヤクザと所帯を持っている場所は、新宿の旧青線地帯。廃線となった都電沿いの超オンボロな建物。
・ヤクザの親分演じる金子信雄は何とオカマで白塗りでオネエ言葉。しかし怒ったときは男言葉。超熱演。
・グレて、伴淳三郎演じる父親に迷惑かけまくっていた狂犬のような片山由美子が突然理想的な父親思いの娘に一瞬にして豹変。あまりの変貌ぶりに驚愕。
・賀川雪絵が妊娠し、病身の中谷一郎が夢見るのは、二人で菜の花畑で歩く天国のような光景。いい画だー。
・金子信雄の組のイヤガラセに我慢できなくなったずべ公たちはついに殴り込み。突然一同『ずべ公番長 東京流れ者』で見せた赤のトレンチコートをズラーと着て、新宿の街を出陣。今回は、コートの下はサラシにホットバンツ。
・ガラスの床下から金子信雄の死に際を撮るというのは凝ってるなぁ。
・映画のとどめは、あだ討ちが終ったその場での、賀川雪絵の○○○。一番の爆笑シーン。
・警察に逮捕され連行されるズベ公一同と渡瀬恒彦。しかしなぜか賀川雪絵はいっしょに現場にいるのに逮捕されない。何故だ?
・最後は、今はサザンテラスなど出来てすっかり変わってしまった新宿南口。な、懐かしい。

ワタシ、こういうカメラや美術が手堅い出来で映像が素晴しく、脚本やキャラがつっこみどころ満載という映画、大好きです。
そして時々びっくりするような凝りに凝ったショットが挟み込まれているのです。
これはこれまで観た山口和彦の作品全部に共通している傾向です。
それから、ずべ公番長シリーズの魅力は、大信田礼子の太ももにあると言えましょう。

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東京国際映画祭『タイペイ・ストーリー』

本日も東京国際映画祭へ。
TOHOシネマズ 六本木ヒルズで、「エドワード・ヤン(楊徳昌)監督追悼特集」から『タイペイ・ストーリー』(原題『青梅竹馬』)を鑑賞。

映画の上映前に、蓮實重彦のトークショーがありました。
今回のトークショーは作品についての言及はなく、個人的にも親しかった楊徳昌との思い出やエピソードの披露といったものでした。
以下、内容を簡単に箇条書きにすると
・蓮實氏は楊徳昌の死を海外からの電子メールで初めて知った。その時、印象深かった楊徳昌の3つの姿を思い出した。一つは97年12月の京都映画祭の際、京都東山で嬉しそうに颯爽と自転車を漕いでいた楊徳昌。2つ目は2001年5月11日にパリのドゴール空港で疲れきった表情で殆ど眠っていたように見えた楊徳昌。3つ目は2002年4月東京のホテル・オークラで、子供が生まれ嬉しそうに落ち着いた姿でベビーカーを押しながらエレベーター降りてきた姿(この時既に『ヤンヤン 夏の想い出』を撮り終えていた)。
・2001年ドゴール空港での遭遇は、楊徳昌がカンヌ映画祭の審査員を務めた後で、疲れきった様子だった。蓮實氏が声を掛けると、そばに同じく審査員だった王家衛が側にいたにもかかわらず、楊徳昌は蓮實氏をファースト・クラス・ラウンジに連れて行き、「自分は女性に対し反感は持っていないが、映画祭の審査員である女優については不快に思っている」と吐露した(その年、シャルロット・ゲンズブールなど蓮實氏曰く何故審査員を務めるか理解できない女優数名が審査員であった)。
・2002年ホテル・オークラで会った際、蓮實氏がこれからどこに行くのか尋ねると、神社と答えた。『ヤンヤン 夏の想い出』の撮影中、神社に行き(新しい)奥さんとの間に子供が授かるように祈願したところ、その後すぐ子供ができた。今からその時祈願した神社に生まれた子供を見せに行くのだと言っていた。
・『ヤンヤン 夏の想い出』の後、楊は『Assassination』という映画をレスリー・チャン主演で撮影しようと考えていた。戦前の上海が舞台で、しかし既に現在の上海には当時の姿ではなく、また上海にある映画撮影用の上海を再現したセットも絵はがきのようでイメージと異なり、そこでは撮影できないので、東欧のプラハなどの街で撮りたいと言っていた。
・Eメールで連絡するようになる以前、楊徳昌から送られてくるFAXにはいつもメガネマークの印が押してあった。
・蓮實氏が楊徳昌の自宅に招待された時、楊徳昌の兄夫婦も同席していた(他、妻を同伴していなかった蓮實氏のために楊徳昌は台北にいた粉雪まみれ氏も呼んでいた)。兄は日本の通産省にあたる役所の高級官僚で、話をすると映画にとても詳しい人であった。好きな女優を尋ねると兄はステファーヌ・オードラン(クロード・シャブロルの元妻)の名を挙げた。すると、楊徳昌がそれは誰だ?知らない、と言った。
・1991年の東京映画祭で、大学に勤めていた蓮實氏は人をかき集めて『クーリンチェ少年殺人事件』の上映に行き、集団で拍手喝采し、蓮實氏もブラボーの声をあげた。そして審査員特別賞を受賞した。
・1987年のロカルノ映画祭の際、楊徳昌の美しく着飾った妹を見かけた。そして、91年の東京映画祭では母親にも会った。母親に映画祭のために東京に来たのか尋ねたら、違うと言われた。いけばなの大会が東京であるのでそのために来日したのだと、美しい日本語を交えて話していた。そして『海辺の一日』の中に、いけばなや日本語を話すシーンがあるのだそう。
・『クーリンチェ少年殺人事件』は非常に難しい権利の関係で、上映の機会も無いし、DVD化もされない。こういった状況を何とかしねければいけない。
・蓮實氏が東大総長時代、入試で忙しい時期に楊徳昌からどうしても会いたいと言われ、東大に来てもらった。昔の台湾大学を舞台に撮影したいのだが、既に今の台湾大学は変わってしまっていてロケができないので東大で撮影させてくれ、と頼まれた。そして「蓮實、おまえも出てくれ」と言われた。出演に関しては断ったが、東大での撮影については取り計らった。が結局、東大でロケをしても昔の台湾大学のように撮ることができないとわかり、撮影は行われなかったけれども、映画のエンド・ロールに自分の名前を入れてくれ嬉しかった。
・2003年8月から9月、小津安二郎の催しに出席するよう依頼したが、楊から自分はとても小津について論じることなどできないと固辞された。そこで蓮實氏は、ではその代わりに『Assassination』を早く撮るよう頼むよと言ったところ、楊はレスリー・チャンが亡くなってしまったので撮れないかもしれないと答えた。そしてその後楊は病気になり、そのうち連絡もなくなり、そして楊が亡くなった、と。

おおよそ以上の話の後、かつての盟友・侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『冬冬の夏休み』に父親役として出演した楊徳昌の登場シーンが短い時間ながら上映されました。

そして、『タイペイ・ストーリー』(1985年)本編の上映。
侯孝賢(ホウ・シャオシェン)と楊徳昌の元夫人だった蔡琴(ツァイ・チン)が主演。
映画は台北に住む侯孝賢と蔡琴のカップルが、蔡琴が一人暮らしをする部屋を見つけるところから始まります。
この二人は幼なじみで、侯孝賢は元少年野球のエースで今はあまり景気良くなさそうな商売をやっていて、蔡琴はキャリアウーマンとしてバリバリ颯爽と働いていたのだけれども勤め先が大企業に買収され辞める羽目になってしまう。
侯孝賢は蔡琴の部屋で寝泊りをするようになっていて実質同棲状態。
しかし二人はそれぞれ別の相手もいる模様で、二人の公私に次々と不運が降りかかっていって・・・というストーリーです。
二人の状況が段々とドン詰まりになっていくにつれ、二人の価値観の違いやコミュニケーションの難しさから生まれるズレがどんどん広がっていく切ないお話が思いっきり80年代な風俗や音楽をバックに繰広げられます。
私的には、いったい侯孝賢がどんな演技をするのか?というのが大注目だったわけですが、最初スクリーンに現れた侯孝賢を観たときは、侯孝賢の顔を知っていたにもかかわらず、正直アチャー、と思いました。
髪型はマシュルーム・カットで顔はトッチャン坊やみたいで、小柄でしかも背中は猫背で、蔡琴の恋人というのはどうみても無理があるだろーと始めのうちは思ったのですが、観ていると段々違和感がなくなってきます。
(といっても、演技が下手というわけではありません。もともと素人に演技させる監督ですしね。極自然な演技をしておりました。あくまで見た目に対する違和感です。)
そして侯孝賢の最後の出演シーン、長い1カットでの演技なのですが、これが渾身の演技でした。
ネタばれになるので詳細伏せますが、侯孝賢の長いカットの次に○○のカットが入り、うーん、こういうのはありきたりなのかもしれないけれど、痺れると思いました。

上映後、「まぜるなきけん」でお馴染みのせんきちさんと、せんきちさんのお友達の熱烈映画ファンご一行様と南翔饅頭店で小龍包などなど頂きました。
せんきちさん、ブログを拝見していてその博学ぶりは存じ上げていたのですが、実際お会いしてお話を伺うと、その博覧強記ぶりに改めて驚嘆し感動するしかないと思いました。
(「弟子にしてください!」とお頼みしようかとも一瞬思いましたが、自分には到達できない域だと願い出る前に気付きました)
写真は最後に食べた杏仁豆腐です♪
南翔饅頭店

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『東京五人男』『恐怖分子』『ションベンライダー』『少年、機関車に乗る』

どうも。久しぶりの更新です。
シネマヴェーラの「妄執、異形の人々Ⅱ」特集が終わりしばらく静養しておりました。
そして、今日から東京国際映画祭が始まり、再始動です。
朝から映画祭会場のBunkamuraへ。

まず1本目ル・シネマで「映画が見た東京」特集より、斎藤寅二郎監督の『東京五人男』(東宝)。
1945年の製作。終戦直後の焼け野原の東京でロケ撮影しております。
住宅難、配給、国民酒場、超々満員の路面電車、食料入手のために農家に物々交換に行く都会人(農家の金満ぶりを表わす描写がすごい)、疎開児童の帰京などなど、戦後の混乱期の興味深い光景がロケ撮影で見ることができ、かつユーモアあふれる娯楽作として楽しむことができる素晴しい作品でした。
この作品に映っている東京は、まだ全然復興されていない文字通り焼け野原で、登場人物達は掘っ立て小屋に住んでいます。
配給所や国民酒場のとてつもない行列の描写も興味深いのですが、芋の配給のシーンは皆で踊り出しそうなほどにリズミカルで、配給をこのように撮るなんてセンスいい。
映像資料としても、作品の出来から言っても素晴しい作品でしたが、残念ながら場内の半分以上が空席でした。

2本目はシアター・コクーンにてエドワード・ヤン監督の『恐怖分子』。
見始めてすぐ気付いたことは、おおよそどのカットにも直線が映っているなぁと。それも縦の。
建物、部屋の中の柱、窓枠、廊下、車線とか。
縦の直線を多用した画面によって、より作品の印象が硬質なものになっっているなと思いました。
接点の無い、職業や状況も異なる複数の登場人物達の話がバラバラに進行していき、それが1本のイタズラ電話によって登場人物達が一つにたぐり寄せられ、そのまま最終局面に向かって進んでいく緊張感は見事。
映画の途中でラストの展開が大体読めた後でもその緊張感は緩むことはありませんでした。
オリジナル予告編にあった、古アパートの壁一面に貼り付けた少女の顔写真、それは複数の小さなサイズの印画紙をつなぎ合わせたものでそれらが風でバタバタとめくれる有名なシーンや巨大ガス・タンクのカットを今回スクリーンで観ることができ嬉しかった。
音楽は元奥さんの蔡琴。ワタシ、この人のファンです。

シアター・コクーン前にエドワード・ヤンについての冊子が400円で売っていて、何となく買ったのですが、内容薄!400円は高いなぁ。

『恐怖分子』上映後、歩いて1、2分のシナマヴェーラへ移動。
「子供たちの時間」という特集、来るのは今日が始めて。
1本目、『ションベンライダー』。
相米慎二監督の、傑作と誉れ高い作品であることは勿論わかっているのですが、観ていてずっと気色悪い感覚がつきまとい、それが何故なのかは自分でわかっていて、そういう気持ち悪さが一番表れていたのが河合美智子が泣きながら海に入るシーン。
と軽度の嫌悪感を感じながらも、終始見られるロングでのなめらかな長廻しに凄いなぁと感心しつつ観ておりました。
特に、主人公3人や藤竜也や担任が運河に浮かぶ丸太の上をどんどん飛び走りながら、ヤクザ2名とデブナガを追いかける超ロングショットったら奇跡です。
この作品、ロングで子供達の運動神経バツグンなアクションを映しておりますが、中でも河合美智子の動きが素晴しい。橋から川に飛び降りちゃったり、踊っている仕草なんかも。歌も上手いしね。
名古屋のヤクザの組員が中日ドラゴンズのユニフォームに似せた制服(帽子まで被っている)を着せられているのはおかしかった。

もう1本は『少年、機関車に乗る』。
タジキスタン映画だそうです。
この映画について何の前知識も無く期待もせず鑑賞したのですが、いやぁ素晴しかった。
こういう作品に出会うと、映画を観ていて本当に良かったぁと思います。
ストーリーは、貧しい家に住む祖母と10代後半(と思われる)少年と7歳ぐらい(に見える)弟が汽車に乗って遠くの町に住む父親を尋ねるというもの。
これだけの単純な話なのですが、もう、スクリーンに映る何もかもが映画的なんです。
機関車から見える光景(彼らが乗っている機関車は貨物列車で「車窓からの光景」など言える車両じゃあない)の何もかもが映画的で、風景も貧しそうな人々の姿も動物までも、映画的なたたずまいを見せるのです。
この機関車の運行が、この国の人々の暮らしぶりを表わすようにおおらかと言うかいい加減で、運転手が自分の家の前に来ると勝手に止めたり、美人な女性を乗せるために勝手に止めたりと、やりたい放題に見えるのですが、これがこの国では普通のもよう。
一見不幸な境遇にある主人公兄弟の、素朴で深い兄弟愛の描写の素晴しさ。
そして何より弟・通称「デブちん」が愛すべき好キャラクターで、土を食べちゃう困ったクセがある食いしん坊で、表情豊かで、ワンパクで、兄を慕っていて、そんな愛すべき「デブちん」を演じた男の子の演技の自然なこと!
あと音楽も良かった。
機関車が走っている時に流れるのですが、ちょっとジプシー・キングス風なエキゾチックな感じで映画にとってもマッチしておりました。

今日のシネマヴェーラの上映に、7歳ぐらいの女の子と母親が来ていました。
『少年、機関車に乗る』はストーリーの細かい意味がわからなくても観ていて楽しめただろうなぁ。
『ションベンライダー』、どうみても小さな子供向けの映画ではありませんが、どう思ったのかしらん?河合美智子が覚醒剤の白い粉を食べるシーンがあったので、親はギョっとしたかも。
「子供たちの時間」といっても子供が主人公なだけで、子供向け映画は『風の又三郎ガラスのマント』ぐらい?『青い凧』なんて、小学生だと観てもストーリーは意味不明だと思う。
が、ストーリーが意味不明でも素晴しい作品の素晴しい映像を子供の目に焼き付けるのはよいことかもしれませんね。

明日も東京国際映画祭にまいります。

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鈴木則文監督と

夕方、某喫茶店にて鈴木則文監督にお会いし、カナザワ映画祭の時の集合写真をいただきました。
ワタクシ、持参した『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』のDVDにサインしていただきました。
則文監督、青山真治監督とこれから九州各地での上映会を回られるそうです。
鈴木則文監督




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『牡丹燈篭』『怪談せむし男』

就業後シネマヴェーラへ。
本日特集「妄執、異形の人々Ⅱ」の最終日。
場内満員。中原昌也も来ていました。
1本目『日本怪談劇場・牡丹燈籠 鬼火の巻、蛍火の巻』。
物語が展開する舞台の裏長屋(というか掘っ立て小屋)はドブに面していて、そのセットをロングで固定して撮影。ドブに流れついた猫の死体の肉をカラスがついばんでいるのだけれど、この時ドブの色が血の海のように真っ赤で不気味。

2本目『怪談せむし男』。
撮影、照明、美術はちゃんとしていました。
ただし、皆さんが指摘しているとおり脚本がひどくいい加減。
収穫は弓恵子がスリップ姿になるとかなりの巨乳で、巨乳を強調するように身悶えするところ。オオーっと思った。

今回の特集で観たのは15本。
素晴しかったのは『二匹の牝犬』と『首』。
自分好みだったのは『ウルフガイ 燃えろ狼男』。
見逃して後悔しているのは『結婚の夜』。
衝撃的だったのは『震える舌』と9月22日のトークショー。
色々な意味で刺激的で楽しい特集でした。

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『太陽を盗んだ男』『青春の殺人者』『お熱いのがお好き』

今日は会社の業務量が突然奇跡的に減ったので、急遽午後から有給をとって映画を3本観に行きました。

まず長谷川和彦特集を観に早稲田松竹へ。ここの劇場は大学生の時分、ブルース・ウェーバーの『レッツ・ゲスト・ロスト』(チェット・ベイカーのドキュメンタリー・フィルムね)を観に行った時以来。内装、リニューアルしたんですね。
14:40からの上映にもかかわらずお客さんかなり入ってました。

1本目『太陽を盗んだ男』。
今回スクリーンで観て気付いたこと、思いついたことを並べると
・製作はキティ・フィルム(山本又一朗)。同年に製作されたのが『ベルサイユのばら』(怒)。
・朝の京王線。当時も地獄の混み具合。改装前の京王線新宿駅が懐かしい。車窓からの風景は結構変わっている(映っていたのはたぶん初台・幡ヶ谷・笹塚辺りから明大前までの景色)。
・この手の犯罪者の棲み家は当然中央線沿線。観た感じ中野・高円寺辺りか。
・最初の沢田研二の部屋が映る場面、カメラが180度回って部屋を舐めるように撮る。この室内の撮り方は『青春の殺人者』でも2回あり。
・新宿副都心がまだ新しくてピカピカしている。
・菅原文太ひとりだけ東映ヤクザ映画調の演技。正確には『県警対組織暴力』調。文太の演技、浮きまくっているけど、それがまたイイのです。
・沢田研二がズングリした体型なので、文太のスタイルがとても良く見える。なるほどファッション・モデルをしていたわけだ。頭小さい。足長い。
・プルトニウムって本当にあんな感じに赤紫なんですか?
・警視庁の大きな窓から見える東京の景色はどう見ても書き割り。
・同じ画面に神山繁&佐藤慶の(ワタシにとって)二大サディスティック強面エエ声オヤジが映っていて感激。夢の共演!痺れた。
・「ローリング・ストーンズの来日公演を実現させろ」って、当のストーンズには映画で名前使うことを許可とったのでしょうか?劇中の新聞記事に「ストーンズ来日公演決定!外務省 粋なはからい」と書かれてしまっているのですが・・・。
・映画の中で文太さん、確か「日立のビーバー・エアコンがいいらしいぞ」って言ってましたが、ビーバー・エアコンは三菱重工の製品なのですが。当時家庭用エアコン30万円もしたんだ・・・。
・デパートの屋上から5億円バラまくシーン、東急本店の設定ですが(渋谷電話局とか言っている)、撮影はどう見ても今は亡き東急日本橋店。外観のシーン、中央通が映り高島屋日本橋店も映っている。観ていて「エ?渋谷のはずなのにいつのまにか日本橋?」と驚いてしまった。
・文太、まるでターミネーター。(実際に文太さん、撮影でヘリから飛び降りるシーンはノー・スタントで演ったらしい!)
・そして沢田研二。キミも死なない人だね。
・音楽は井上堯之。「悪魔のようなあいつ」(1975年)の音楽がそのまま使われていた。
以上。思いつくままに書いてみました。

次に『青春の殺人者』。
父親を殺した後、水谷豊と市原悦子による室内劇というか二人芝居が長く続くのですが、ここでの市原悦子の演技が舞台の上で演じているかのように芝居がかっていて大袈裟でとにかくウザい。
原田美枝子、顔は子供、なのにカラダはかなり肉感的。悪声なのに大声で「順ちゃん!」と叫び続けるのにはまいった。
舞台が成田になっているはウマいと思いました。

新文芸坐に移動して、ラスト1本で『お熱いのがお好き』。
少し前シネマヴェーラで見逃したのですが、間もなくして新文芸坐で観られて良かった。
シネマヴェーラで上映したばかりのためか場内空席が目立ちました。
マリリン・モンローの巨乳を拝めて嬉しかった。
ラストの名台詞 Nobody's Perfect! にまいった。

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『ずべ公番長 はまぐれ数え唄 』

今週も素敵なショットを探しにラピュタのレイトに行き、山口和彦監督の『ずべ公番長 はまぐれ数え唄』を鑑賞。
音楽は津島利章。
ちょっと『仁義なき戦い』を彷彿させる音楽が流れ映画がスタート。
冒頭、大信田礼子と賀川雪絵が河原でパンチラさせつつキャット・ファイトを始めた瞬間カメラがグーっと退き、そこにバーンと『ずべ公番長 はまぐれ数え唄』のタイトルが出るというのはカッコよかった。が、この作品では前作のように凝りに凝ったカメラが特別目をひくことはなく(後半、大信田礼子が戦う時、西部劇みたいにお尻の背後から足を通して向うを撮っている箇所が2回あって、そこは凝っていたけど)、その代わりに個性的な登場人物たちの登場が観客を楽しませるのでした。
化け物みたいな老売春婦の清川虹子(ベトナム戦争の兵士相手に売っているらしい)とか裸にスリップで発情しっぱなしの中国人役の三原葉子とか(スリップに乳首すけてた)、船員相手にブルーフィルムの上映など胡散臭い商売している由利徹とか。
小池朝雄が大信田礼子と敵対するヤクザの組長なのですが、この組の手下の小林稔侍だけがなぜか女装したオカマだったり(いや、理由は深く追求しまい)。
昨日この映画を観られた東映原理主義者のHさん、大信田礼子がバイクに乗ったまま長ドスで小池朝雄の手下複数を斬るシーンについて「早すぎた松田優作だって!」と表現されていましたが、いやはやこりゃモロ松田優作でした。
ちょっとフラフラはしていましたがね。

『ずべ公番長 はまぐれ数え唄 』、楽しい作品でしたよ。

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『首』

シネマヴェーラのラスト1本で森谷司郎監督の『首』(1968年東宝。脚本・橋本忍)を鑑賞。
いやぁ、見応えある手堅い素晴しい作品でした。
表面的にはリアリズムの体裁をとっていて、これが見事に上手くいっておりました。
小林桂樹の取り憑かれたような演技もいいのですが、戦中の高圧的な満州帰りの検事を演じた神山繁の演技が凄い!
短い出演シーンながら神山繁の圧倒する雰囲気に、この人の演技を見るためだけでもこの映画を観に来て良かったと思いましたよ。
鋭い目つきといい物腰といい神山繁は検事役を演るために生まれてきたといっていいぐらい(この人、警察幹部など権力ある高圧的な役が多いですよね)。
この神山繁演じる検事の存在が、最初はのん気だった小林桂樹に狂気とも思える執念を燃やさせる原因となるわけで、この作品の中で重要なポイントであり転換点なのです。この作品が上手くいった勝因の大きな部分は神山繁によると言ってもよいでしょう。

この映画は小林桂樹が演じた正木ひろし弁護士による「首なし事件」についての手記が原作。
首なし事件についての無限回廊のページはこちらです。

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『人が人を愛することのどうしようもなさ』『戦後猟奇犯罪史』『砂の香り』『童貞。をプロデュース』

まず銀座シネパトスへ行き、石井隆監督、喜多嶋舞主演の『人が人を愛することのどうしようもなさ』(通称『人人』)を鑑賞。
実はワタクシ石井隆による名美&村木の物語はその閉塞感がこたえるので苦手に思っていて、以前『ラブホテル』についての感想で「もう観に行かない」と書いたのですが、脚本家Nさんが「めちゃくちゃエロい」と感想を書かれていて、Nさんに直接伺ったらやはりめちゃくちゃエロいと太鼓判を押されていたので、それなら必見だということで観に行った次第です。
で、観に行った『人人ですが』、期待通りのとんでもないエロさ。始まってすぐからむちゃくちゃエロい。喜多嶋舞が巨乳なので、見応えありました。
大トロという感じです。大満足。
それにしても、あの電車のシーン・・・。
女優魂を感じました。あっぱれ!
喜多嶋舞のあまりの頑張りに、石井隆作品に共通する閉塞感はもはや感じられず、達成感という突き抜けた感じがして、観ていて爽快な気分すらしてきました。
『人が人を愛することのどうしようもなさ』は気に入りましたぞ!

渋谷に移動し、シネマヴェーラへ。
まず『戦後猟奇犯罪史』を鑑賞。
有名な3つの事件(克美茂愛人殺人事件、西口彰連続強盗殺人事件、大久保清連続殺人事件)を再現した構成になっておりますが、取り上げられた事件はどれも他の映画やテレビドラマでも映像化されております(今村昌平監督作品『復讐するは我にあり』、田中登監督によるテレビドラマ『愛の報い』、TBS山泉脩によるドラマ『戦後最大の連続女性誘拐殺人事件』。ワタシは山泉脩によるドラマは未見)。
同じ事件をモチーフにしても作品によって映像の仕上がりが全然違うのが面白いです。
大久保清の役を川谷拓三が演じているのですが、強姦殺人の場面でほのぼのとした音楽が流れたり、拓ボンのとぼけたコミカルな演技といい、ワタシは昔、大久保清についてのルポを読んだことがあり自分の中で大久保清のイメージが出来上がっているので、違和感を感じずにはいられませんでした。

次に『砂の香り』。最初から最後まで睡魔との闘いでした。
途中寝そうになるも、浜美枝の裸を見るまでは眠れんと思いつつ、なんとか最後まで寝ずに観ました。
浜美枝、若い頃のマリアンヌ・フェイスフルにそっくりじゃないですか。美しい!
これまで観た浜美枝出演作の中で、『砂の香り』がダントツ美しい。
そんなにつまらない映画でもないような気もしましたが、フィルムの退色がかなり進んでいて全編真っ赤で、よくわからない状態でした。
90分の映画なのですが、実際よりかなーり長く感じました。

シネマヴェーラからユーロスペースに下りて、これまで都合がつかず見逃していた『童貞。をプロデュース』をやっと鑑賞。
母性本能くすぐられました。 楽しかった。
童貞1号クンがプロデュースされて童貞でなくなった後、絵に描いたように自信たっぷりな男に激変しているのに笑っちゃいました。
この作品の勝因は、童貞2名とも気持ち悪くない、母性本能をくすぐる好感を持たれるキャラクターであることだと思います。

今日の上映に童貞2号クンが劇場に観に来ていて、上映後お客さんから写真撮影を頼まれてました。
童貞2号クン、小柄なコでした。ガンバレ!と心の中で応援しておきましたよ。
童貞2号クン

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予定:東京国際映画祭

今日は東京国際映画祭のチケット発売日でした。
観たかった作品の何本かが平日の昼間の上映で観に行けないとか(ジョニー・トー『マッド探偵』、パトリック・タム『父子』、アレクシ・タン『天堂口』など)、エドワード・ヤンの『タイペイ・ストーリー』と鈴木英夫の『危険な英雄』が同じ日で時間も重なっていて、鈴木英夫の方を泣く泣く諦めなければならなかったとかありましたが、とりあえず4作品のチケットを押さえました。
確保した作品は、エドワード・ヤンの『恐怖分子』と『タイペイ・ストーリー』、斎藤寅次郎の『東京五人男』、須川栄三の『野獣狩り』。
他も都合が付いて気が向けば行くかもしれません。
ジョニー・トーについては、東京フィルメックスでも別の新作の上映があるので、こちらを狙う予定です。

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アメリカ人が店主のラーメン屋に行って、『壁男』を観た

会社で、映画ファンKさんの日記を読んでいたら、芦花公園にある外国人が店主のラーメン屋(!)についての記述があって、即お店のホームページをチェックしてみました。

アイバン・ラーメン
http://www.ivanramen.com/
アイバン・ラーメンを紹介したWall Street Journal(!)
http://online.wsj.com/article_email/SB119101434165143075-lMyQjAxMDE3OTIxOTAyMTk0Wj.html

店のホームページには、日本かぶれのアメリカ人アイバンさんが映画「タンポポ」を観てラーメンの虜になり、NYの料理学校を出て一流フランス料理店の料理人になり、大手投資顧問会社の料理人に迎えられたのだけれども、その座を投げ打って来日しラーメン店を始めた、というドラマチックなストーリーとアイバンさんの写真があって、それを見た私はもう行ってみたくてたまらなくなり、会社で興奮して騒いでいたら、向かいの席の京王線住民のMさんが「じゃあ、今日一緒に行こう」と誘ってくれたので、さっそく就業後、芦花公園駅に行きました。

うらぶれた芦花公園駅すぐ近くのド昭和なレトロ商店街に目指すアイバン・ラーメンはありました。
アイバンラーメン

アイバンラーメン

多少行列ができてます。店の中をのぞくと、厨房に眼鏡をかけた小柄な白人男性がTシャツを着て首にタオルを巻いて、日本人のラーメン職人とまったく同じように働いています。

中に入ると、BGMはAFNらしき英語のラジオ放送が流れておりました。
メニューに一番人気と書いてある「しょうゆ全部のせラーメン」(1000円)をオーダー。
サイドメニューにアイスもあるので、何味のアイスか質問すると、アイバンさん、「レモン!」と美しいLの発音で教えてくれました。
出てきたラーメンは魚介だしがきいたしっかりとしたしょうゆ味。
麺は極細。真面目につくったラーメンという感じで好感が持てました。
キワモノではありません。ただの外人ラーメンではなく、王道を目指したしょうゆラーメンです。
京王線住民だったらたまに行きたくなる店だと思います。
アイバンラーメン


Mさんとお別れした後、私は新宿テアトルに行き『壁男』を鑑賞。
熱烈映画ファンMさんが日記に『壁男』の感想を書かれていて、雪の札幌が舞台であることを知り、美しい街並を見たくなったのです。
諸星大二郎の漫画が原作なんですよ。
主演はいつも不気味な満面の笑みをたたえている堺雅人と小野真弓。
作品の出来としては殆ど期待できないことをわかっていて札幌見たさで観に行きました。

堺雅人(カメラマン)と小野真弓(TVのレポーター)は恋人同士でこじゃれたマンションで同棲していて、同じベッドで裸姿で寝ている場面が何度かあるのに(小野真弓の重要な部分は見えない)、二人がセックスしているシーンがなくて、観ていてひどく物足りなくて、「セックス見せろー!」と思っちゃいました。
私の頭は東映にどっぷりやられて中2脳になってしまったようです。
たまに映る札幌の雪景色は想像以上に美しくって、セックスシーンが見られなくても、この映画を観に来て良かった♪と思いました。
美しい坂道の雪景色を見ながら、ああ、こんな中途半端な怖くもロマンチックでもない映画ではなくて、ベタベタなメロドラマを札幌を舞台にしてつくってくれたらと思いました。
例えば、成瀬巳喜男の『乱れ雲』を雪の札幌を舞台にリメイクする。
これ、いけそうじゃない?と想像して興奮していたら、映画終わりました。

スミマセン。映画の感想になってませんね。
札幌を舞台にしたピンク映画、誰か撮ってくれないですかね?
そんな映画があったら、恋しい雪景色とエロがいっきに見られてとても嬉しいのですが。

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『ずべ公番長 東京流れ者』

先日シネマヴェーラで観た『ウルフガイ 燃えろ狼男』がまさに自分好みの映画だったので、今後は山口和彦監督作品はなるべく観なきゃと思い、今日はラピュタのレイトで『ずべ公番長 東京流れ者』を観ました。
(フィルモグラフィーをみると、これまで観た山口和彦作品は『怪猫トルコ風呂』、そして『ウルフガイ 燃えろ狼男』のみ)

『ずべ公番長 東京流れ者』は「ズベ公番長」シリーズ第2作目で1970年の作品。
話にひねりがなくても、ギャグが滑りっぱなしでも、最後まで楽しく観られるのは、どのショットも的確で、たまにオオっと驚くような斬新なショットもあって、華麗なカメラワークを観ているだけで面白いからです。
例えば、テキヤの女親分ガセ寅蘭子が墓場で刺客に襲われる場面、刺す瞬間を俯瞰で撮っていて、刺された直後グーっと俯瞰のままロングになるショット。これには参りました。
原色を多用した美術も斬新でシャープで、このセンスは後の『ウルフガイ』に通じるものがあります。
最後、殺されたガセ寅蘭子の敵討ちでズベ公たちが殴り込みに行く場面、ズベ公たちが赤いトレンチコートを着てズラーっと並びチューインガムを食べ夜道を歩く、というのは相当凝ってますね。成功しているかどうかは微妙だけど、とても斬新でした。
渡瀬恒彦、出番は少ないけど、いい役でした。
主演の大信田礼子は佐藤江梨子にソックリですね。何だか佐藤江梨子の主演映画を観ている気分になりました。

来週の『ずべ公番長 はまぐれ数え唄』もいいショットを見つけに観に行く予定です。

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『にっぽん´69 セックス猟奇地帯』

就業後シネマヴェーラへ行くと、次々と知人に遭遇。
佐野史郎までやってきました。佐野史郎、たまに劇場で見かけます。

今日は『にっぽん´69 セックス猟奇地帯』。
新文芸坐での中島貞夫特集での上映を見逃していたので、今回の特集で一番楽しみにしていた作品です。
オープニングの東映の「荒磯に波」がいつものと違うやつで初めて見るバージョンでした。何か意味があるのでしょうか?
映画は横尾忠則のイラストで始まります。ナレーターは西村晃!
新宿駅西口から始まり、次に東口を映し、夜になり若者が踊り狂う新宿の盛り場を映します。
この盛り場のシーンで『異常性愛記録 ハレンチ』よりソフトではあるもののピカチュウ・フラッシュ攻撃が起こります。
両方とも1969年の作品。当時こういうフラッシュが流行っていたのでしょうか?
次に唐十郎率いる状況劇場による花園神社での「腰巻お仙」赤テント公演を映します。
皆さん、熱いですね。
ここまで見て思ったことは、新宿は東口も西口も69年当時と現在ではほとんど変わっていないということ。東口・西口駅周辺のビルはアルタをのぞいて既に当時建っていたということがこの映画によってよーくわかりました(南口だとさすがに激変でしょうが)。
というのも60年代の新宿を舞台とした映画は多数ありますが大体白黒作品で、67年の『今夜踊ろう』(田宮二郎、荒木一郎出演作)がカラー作品で新宿駅西口を大きく映していたのが印象的だったくらいで、カラーでは他にあまり思い当たりません。テレビでよく流れている新宿騒乱の映像もモノクロなので、今日、カラーの鮮明な映像をスクリーンで見て、初めて当時の新宿の姿をハッキリ目にすることができました。群衆の服装なども興味深い。
シンナーのビニール袋持ってヨロヨロ歩いている若者達が映っていたり(ハイミナールが入手困難になったのでシンナーが流行ったのだそうだ)。
と新宿の光景を楽しんでいたら、突然「銀座整形」というオンボロ病院に場面が変わり、診察のシーンの後、恐怖の美容整形の手術シーンが始まってしまった。相当グロテスクなシーンがあることは事前に知っていたものの、隆鼻手術、豊胸手術、二重まぶた手術と続き、特に最後の二重まぶた手術のグロテスクさにはカラダが凍りつき心臓が猛烈に痛くなってしまいました。
恐怖の手術シーンの後はボディ・ペインティング、無人島でのブルーフィルム撮影隊(富士フィルムの「シングル8」を持って撮影しているのがいかにも。ここでの西村晃のナレーションおかしい)、前衛ハプニング集団、乱交パーティ(目をこらしたけど全然乱交してない)、ストリップ劇場、飛田新地等々、次から次と当時としては「猟奇」な光景が映し出されます。
前衛ハプニング集団が銀座をヘンな格好で練り歩いているのですが、新宿に比べ当時の銀座は老築化した建物ばかり並んでいる古ぼけた街であることにまたまた驚きました。ここまで美しくない汚い銀座をカラーで見たのは初めてです。
日大闘争を始めとした学生運動の映像も鮮明なカラーで見ることができて、ワタシ、とても懐かしかった。ワタシが大学に通っていたときも大学構内に全学連によるアジ看板があちこちにあったし、校舎の前に公安警察がいたり、授業料が値上げした時バリケードがつくられ授業が中止になったのを見ていたので。
一番ケッサクだったのが、性倒錯者のマゾヒスト男が出てくる場面。
痩せた風采の上がらないヨレヨレのオッサン(下着もヨレヨレ)が、足蹴にされたり、鎖につながれたり、色々されている映像にオッサンのモノローグが流れていて、苦痛を受けるより陵辱される方がいいとか、家畜願望だの、馬願望だの、モノ願望だの、最後には便器・ビデ願望とかアホみたいなことを坦々と説明していて、スクリーンにはオッサンが便器で顔を洗ったり、女性のお小水を飲むシーンが映り、こりゃ沼正三の「家畜人ヤプー」の世界そのものじゃないかと笑いながら観てたのですが、後でモルモット吉田さんのブログを拝見したら、しょぼくれたオッサンは沼正三ご本人だったとわかり、改めて笑ってしまいました。沼正三ってあんなに貧相なオッサン(映像みる限りはオジイサンに近い)だったとは。
映画は最後、唐十郎が返還前の沖縄に向かうのを追い、突然物語風・紀行記風になります。
沖縄の基地の街に訪れ、黒人との混血児と話をする唐十郎(ここでの女の子のセリフ「沖縄の人は嫌いだけど、沖縄は好き」がいい)。
そして映画は再び横尾忠則のイラストになり終わります。
貴重な映像資料を見られるとう意味でも素晴しい作品ですが、ワタシ、想像以上に楽しんで観ました(手術のシーン以外)。
中島監督がなんとか猟奇的に、おどろおどろしく撮ろうと頑張っているなぁとも感じました。

次の『海女の化物屋敷』はラピュタの「オンナ達の危ない夜」というレイトで数年前に観たのでパス。
連日のシネマヴェーラ通いで疲労は限界を超えました。

追記:この作品のオープニングの「荒磯に波」について、東映原理主義者のHさんから情報をいただきました。
当時スタンダード版の三角マークが既に無かったので、中島貞夫監督と撮影の赤塚滋が銚子の灯台あたりまで撮りに行ったものだそうです。
だからあの三角マークはあの映画ぐらいでしか登場しないのではないか、とのことです。詳しくは「遊撃の美学」参照とのこと。

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 リネン

Author: リネン
♀。会社員。独身。
東京23区在住。
深煎りコーヒーが好き。
成瀬巳喜男監督作品56本を
劇場で観たのが自慢。

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