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『反逆のメロディー』『盛り場流し唄 新宿の女』

今日はラピュタのダイニチ映配特集で2本鑑賞。

『反逆のメロディー』(1970年・日活)。
主役の原田芳雄はジーンズ着てジープに乗っているけれど、映画の内容は高倉健や鶴田浩二の仁侠映画と同じ。
シナリオが弱い。原田芳雄の行動に一貫性が無く、自由人だったり昔気質のヤクザだったりを映画の中でコロコロ変わるので、彼のキャラクターがよくわからない。
冒頭、所属していた淡野組が解散し、夜、暗い中で組の看板を焼く場面から始まり、次にジーンズ姿で(しかも裸にジーンズ)ジープを飛ばすショットに変わり、チョッパーバイクに乗る佐藤蛾次郎やチンピラの地井武男と梶芽衣子のカップルなど出てきて藤田敏八みたいなカラっとしたドライな映画なのかと観ていたら、途中、原田芳雄と地井武男が時計を交換をする場面からものすごくウェットでベチョベチョした映画になってガッカリ。
フーテン・ルックスなのに「オレはオマエが好きだ」なんて大の男二人(しかもヤクザ)が会話しているのを見せられるなんて失笑。
最後一緒に殴り込みに行く藤竜也もよくわからない役。
地井武男は狂犬の役なのに、全然迫力ないし。
とはいえ、映像は力強く素晴しく、サックスを擁した音楽(玉木宏樹)もとてもカッコよくて、最後まで魅せてくれます。
総合してみると、なかなかのクォリティの作品なのです。

次に『盛り場流し唄 新宿の女』(1970年・日活)。
これは素晴しかった。新宿映画の傑作を見つけたと思いました。
川内康範が原作ということで、ズブズブのド演歌な物語が新宿ネオン街を舞台に藤圭子のド演歌が流れるなか繰広げられます。
おとなしい女子大生・沙知子(北林早苗)は父親が飲酒運転で人を死なせことにより背負った多額の賠償金のために新宿でホステスとして働き始めるものの、彼女を手篭めにしようとする男に狙われたり、先輩ホステスにイジメられたり苦難の日々。
そんな中、同じ夜の街で働く紳士的な男・藤竜也が登場し、彼女の相談相手となり、二人は互いに好意を持ちます。
しかし、多額の賠償金を抱える沙知子にはさらなる苦難に襲われるのです・・・。
とまぁ、一人の純情な女性が辛酸を舐め、男と出会い別れ、一人前のホステスになるまでを描いたお話です。
北林早苗は、彼女の人気をねたんだ先輩ホステスによって衣装に赤いマニュキアをかけられるのですが、マニュキアをかけられて呆然とした瞬間、藤圭子の「ここは新宿なみだ街~♪ ここは新宿うその街~♪」という熱唱が流れます。
映画のいい場面で藤圭子の怨念に満ちたド迫力の歌が繰り返し流れるのですが、藤圭子自身も歌流しの歌手の役で何度も出てきます。歌う姿だけでなく、セリフもちょっとありました。
この作品、これまで観たどの映画にも増して新宿の昼夜の景色満載で、新宿駅西口、廃線になった都電跡、歌舞伎町、建設中の高層ビルが後ろに見える西新宿、大ガード、ハルク裏の現在エルタワーがある辺りの歩道橋、小田急百貨店と京王百貨店の間の通路(現在はモザイク通り)などなど映っていて、新宿の街並みを見るためだけでもこの映画を見る価値があります。
中でも、新宿の街を一望できる回転するスカイ・ラウンジのシーンがあって、スクリーンに映る窓の外の景色に目をこらすと八千代銀行(新宿5丁目近辺)の看板が見えたりするのですが、70年当時新宿に回転スカイ・ラウンジがあったとは。
いったいどこにあったのでしょう?ご存知の方がいらしたら、教えてくださいませ。
藤竜也が勤めるクラブの内装が原色を多用したつくりで、ぶら下がっているランプシェードなども含めて強烈に70年代を匂わせておりました。
それから、北林早苗と藤竜也はビルの中らしき喫茶店の窓際のカウンターに座って話しているシーン、二人の目の前の窓ガラス越しに大降りの雨模様が見えて、ここが何とも雰囲気がありました。
ラピュタの作品解説では山本陽子の名前が一番最初にきているのですが、主演は北林早苗で、山本陽子は北林早苗の友人ホステス役。
山本陽子はとことん男運のない不幸な女性で、彼女にまつわるお話は映画の中ではエピソード的な扱いです。
大信田礼子は北林早苗の妹役で、家の不幸を背負った暗い北林早苗とは対照的に明るくてドライな性格。『スベ公』シリーズの時とセリフ回しは大して変わりませんが、『スベ公』より顔がパンパンに見えます。
藤竜也はいつものヒゲがなく、終盤あっと驚く姿になります(この時笑い出しそうになってしまった)。
あとホステスのスカウト役で小松政夫が出ているのですが、とても若くてびっくり。
とにかくこの作品、時代を閉じ込めたような作品で、70年代初めの新宿の街を見ているだけでも、お腹いっぱいになります。
日活作品というより東映東京っぽいなとも思いました(『ネオンくらげ』とかのね)。
辛酸を舐めた女が強くなり覚悟を決め新宿の雑踏を歩いていく姿は感動的でもありました。
プリント状態はとても良好(劇場でかかる機会があまり無かった?)。

ということで、今日観たダイニチ映配作品2本は両方とも日活作品。
どちらも水準の高い作品で、翌年ロマンポルノとして姿を変えながらも作家性の高い作品をつくり続けた日活という会社の力を感じさせる作品でありました。
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 リネン

Author: リネン
♀。会社員。独身。
東京23区在住。
深煎りコーヒーが好き。
成瀬巳喜男監督作品56本を
劇場で観たのが自慢。

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