『スパルタ教育 くたばれ親父』『番格ロック』
2007 / 11 / 07 ( Wed )
今日はラピュタにて2本鑑賞。
まずダイニチ映配特集から『スパルタ教育 くたばれ親父』(1970年・日活)。
先日観た『俺の血は他人の血』があまりに救いようのない駄作だった舛田利雄監督の作品なだけに不安を感じつつも、石原裕次郎・若尾文子主演という異色の組み合わせ2大スターの共演ということで、不安80%期待20%を抱きつつ鑑賞。
ドカベンみたいな曲が流れる中、映画はスタート。
「スパルタ教育 くたばれ親父」とタイトルが出た後、スクリーンに
パパ 石原裕次郎
ママ 若尾文子
と出たのには驚いた。パパ、ママという役名なんだぁ。
石原裕次郎は、以前は6大学野球のエースだったものの、肩を壊して今は審判員。妻は若尾文子で二人の間に子供が5人もいて団地に住んでいる、という役柄。
裕次郎、審判員ながらも白いスーツで出勤するところが裕次郎。
若尾文子も5人の子供がいる団地妻にもかかわらず、そこにいるのはまぎれもなく若尾文子で、やつれた風に見えるけれども(年齢のせい?)、相当不自然。
この二人の子供達がとんでもないガキで、団地の中で癇癪を起こしていたずらをするのだけれど、それが度を越していて、よそ様の車の上でおしっこしたり、窓ガラスを割ったり、牛乳瓶を割ったりで、補導した方がいいぐらいなのに、裕次郎・文子夫婦はこのガキたちを放置していて、どこが「スパルタ教育」なんだ??と疑問に思いつつ観ていたら、映画がずいぶん進んでから一瞬だけスパルタとまではいかないまでも人並みに厳しく接しているシーンがあって、でもそれだけ。看板に偽りあり。
映画の冒頭、二軍の野球選手役で渡哲也が出てきて石原裕次郎に食って掛かるのですが、その姿が『仁義の墓場』なみの狂犬っぷりで観ていてオオっと喜んだのも束の間、次の場面ではいきなり改心していいアンちゃんに変わっていて、わけわからん。
渡哲也、審判に猛抗議したことで1ヶ月間出場停止を食らうのですが、同時に何故か住む場所もなくなっていて審判の裕次郎宅に居候しにくるのですが、そんなことあるわけないだろう。
そもそも審判と選手があんないベッタリ仲良くするわけないだろう。
などなど思ったり、どう見てもパパ・ママが裕次郎・文子というのは違和感あり過ぎで、しっくりしないまま観ておりましたが、それでも途中までは普通のホームドラマでした。
ところが!
夏休み、若尾文子と子供達が裕次郎の実家に遊びに行く場面から、映画は突然目を覆いたくなるような崩壊を見せ始めます。
ホームドラマだったはずなのに、いきなり暴走族のようなのが出てきて、実家をバイクで破壊し(族が家の中をバイクで走り回る!)、族は若尾さんといっしょに子供の面倒を見ていた女子高生を拉致。
しかーし、誰も警察に通報せず、暴れ狂う暴走族を一晩中静観するのみ・・・。
そしてそこに裕次郎登場。
裕次郎は棒を持って族をバッタバッタを倒します。実は、裕次郎は野球の前は剣道をやっていたのです(と、剣道の心得があることはこの場面でいきなり取って付けたように裕次郎父のセリフで説明される)。
裕次郎が族と戦う際、それを見ている若尾さん、何を言うのか思ったら、子供達に向かって「パパが勇敢に戦う姿を見ておきなさい」だって。アホか。
そしてあっさりと族に勝利した裕次郎を見て感激して涙ぐむ若尾さんのアップが映った瞬間、思わずワタクシ、スクリーンに向かって
「ふざけるな!」と汚い言葉を吐いてしまいました。
あとですね、観ていて許せないと怒りを覚えたシーンがありまして、大人(渡哲也)が子供達(小学生、もしくはそれ以下の幼児)をけしかけて、いじめっ子に復讐をさせるシーン。
子供達はグーの手で馬乗りになりつつ相手の子供を思いっきり容赦なく殴っていて、それを後ろにいる渡哲也がやれー、やれーとけしかけてるですよ。
ありえん。
いちいちゼネコンのCMが流れるのもわけわからん。
この作品のいいところも(なんとか)あげておくと、王・長島がちょっとだけ出てます。
あと、金田正一が野球解説者役で出ているのですが、「ヘボピッチャー」とか「長島は盗塁がヘタ」とか口が悪くて笑えました。
そうそう、川地民夫が端役で出ているんですよ。もったいない。
ということで、まったくもってヒドい作品でした。
映画が終った瞬間、隣で観ていた知人とワタクシ、同時に「酷い!」と声に出してしまいました。
石原裕次郎、若尾文子の2大スター、しかも川地民夫までつかってこんなヘボ映画をつくるとは、繰り返しますが「舛田利雄よ、ふざけるな!」
とあまりにヒドい作品を見せられて憤っている中、内藤誠監督の『番格ロック』を鑑賞。
場内、キャロル・ファンがたくさん来ているのか満席で補助椅子に座布団まで出ておりました。
キャロルの歌が流れる中、映画スタート。
始まってすぐ、ワタシの機嫌はすっかり良くなりました。
最初から最後まで常に一定の緊張感が走っていて、それがブレることはありません。
その緊張感は画からきていることは勿論ですが、音楽(八木正生とキャロル)と女優達のドライな演技によるところも大きいです。
特に山内えみこの眼力とクールさ。
『ネオンくらげ』『性獣学園』でも思いましたが、やっぱりこの女優さん、スゴいです。根性すわってます。
(眼飛ばしのスゴさという点では沢尻エリカ主演でリメイクしてみるといのはいかがでしょう?)
その山内えみこ、基本的に超クールなのですが彼氏(ヤクザ)の前でだけはデレデレで、彼氏に「カッチン!」とか言って甘えていて、いわゆるツンデレ・キャラです。
赤羽のスケバン対池袋のスケバンの話なので、赤羽・池袋ロケ多数で映画からもの凄いすさんだ場末感が漂っております。これがまたこの作品の魅力。
新宿が舞台だとここまでの場末感は出ませんね。
劇中、池袋・ロマンス通りにあるように映っていた映画館(東映の2番館、3番館らしき劇場)に『東京=ソウル=バンコック 実録麻薬地帯』と『(秘)女子短大生集団妊娠』のポスターと『さそり』の写真が貼ってありました。細かい話ですが。
ワタクシ、数年前、池袋全域でドブ板営業をしてたので池袋には詳しいのですが、今日の映画に映っている場所、わからない所が多かったなぁ。すっかり変わってしまったということでしょうか。
あと、ジョニー大倉が細くてカッコよくてビックリ。
キャロルのこの映画の主題歌、とてもいいです。
『番格ロック』何度でも観たいです。
場末感、クール感が最高で、少しの隙もない一定のテンションで突き進むところが見事でした。
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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画