『流血の抗争』『白昼の襲撃』
2007 / 12 / 04 ( Tue )
本日、もともと家事をするために有給休暇を取っていたのですが、あまりの体調不良につき結局家事はできず寝込んでしまい、観たい映画の時間のみ起きてラピュタにて2本鑑賞。
ダイニチ映配特集の長谷部安春監督作品『流血の抗争』(日活・71年)。
東映のヤクザ映画に慣れた目から観ると、『流血の抗争』はとてもユニークというか不思議な感じの作品でした。
鏑木創のドンドンドンドンと鳴り響く曲がヤクザ映画らしくなくて、冒頭の音楽からしてとてもユニーク。
とは言っても、前半は地方の弱小ヤクザ組織が大都市の血も涙もないヤクザにいいようにされるという、ありがちなプロットに沿って物語が進み、なかなか宍戸錠演じる地方ヤクザの若頭が都会ヤクザの悪巧みに気付かないことにイライラさせられるも、ごくフツーのちゃんとした方のヤクザ映画じゃないかと思いつつ観ていたんです。
ところが、ついに地方ヤクザが都会ヤクザに殴り込みに行く段階になり、これまで観たどのヤクザ映画とも違う展開を見せます。
宍戸錠とその下の藤竜也(ヒゲ無し)が敵の都会ヤクザの親分の所に殴り込みに行くのですが、二人は親分の所に行く前に既に重症を負っていて特に藤竜也はかなり出血していて瀕死の状態。
二人は敵の組事務所のビルの中に入ります。
途中何度も藤竜也は宍戸錠に「寒くないっすか」と言います。
二人は血だらけの状態で自らの血で足が滑らせながら、這うようにエレベーターに乗り降りるのですが、たかがこれだけのことがやっとの状態で、目的の階でエレベーターから降りようとするのですが、降りる前に扉が閉まりかけたりします(エレベーターのシーンはワンカット)。
このエレベーターのシーンがとても丁寧なのです。
エレベーターのカットの後、目的の組長の部屋に入るのですが、何と組長は不在。
不在って展開初めて観ましたよ。逃げたじゃなくて、ただ不在なのです。あんなに丁寧に殴り込みに行く道程のエレベーターのシーンを見せたのに。
そして標的が不在で二人はどうするのか?
待つのです。壁に持たれかかって、気付けに瓶ごと酒を飲みながら。藤竜也は「寒くないっすか」を繰り返します。
さらに二人は待ちます。壁にもたれかかって待つ二人をカメラは写し続けます。
そして藤竜也の息が絶えます。
うーむ、ユニーク。東映じゃこんな変則的な展開ありえないなぁ。ふつう観客をスカっとした思いにさせる殴り込みの場面を、男がひたすら待つという描き方にするとは。
ヒロイン役で梶芽衣子が出ているのですが(宍戸錠の別れた女で今は小料理屋の女将という設定)、パンパンに太っておりました。
レイトの岸田森特集で西村潔監督の『白昼の襲撃』(東京映画・70年)を鑑賞。
日野皓正による音楽はとてもカッコイイし、極限までスタイリッシュに撮られた作品なのですが、傑作となっていないのは何故か?
主人公がバカで魅力が無い人物であるせいなのか、主演俳優の黒沢年男に魅力が欠けるのか、脚本にひねりがないせいなのか。
若者たちが破滅に向かっていくという典型的なプロットで、作品によって心を動かされたり動かされなかったりする、その違いはどこにあるのだろうか?ううむ。
主人公の黒沢年男&高橋紀子ペアより、岸田森&緑魔子ペアの方がずっと魅力的なんだもん。
血が出るくらいスタイリッシュにシャープに撮っているんだけどねー。衣装の色など色彩の洪水で、赤い土管の上に鮮やかな衣装を着た俳優を置いたり、すごく色にこだわっているのも痛いほどわかるのし、作品のキレをよくするように編集もものすごく頑張っているのがわかるのだけれど、いずれも努力の割りに報われていない感じがしたのです。
もしかしたら主演が黒沢年男ではなく藤岡弘だったら、傑作と感じたかもしれない。その程度のことなのかもしれないです。
いや、つまらない作品とか駄作とか言いたいのでは決してありません。ただ、こだわり抜いた割りにはうまくいってないのじゃないか、という程度で。
あ、それから殿山泰司の「牛乳飲むか?冷たいぞ」には受けました。
スポンサーサイト
テーマ:日本映画 - ジャンル:映画