今日はまずフィルムセンターでマキノ雅広監督の『日本侠客伝』シリーズを3本鑑賞。
『日本侠客伝』。
文句なしに素晴しかった。
様式美の世界に魅了されっぱなし。
どのショットも写真にして額に入れて、床の間に飾りたいぐらい。
とりわけ高倉健が登場したとたん、スクリーンが断然引き締まるのを感じました。
特に健さんのアップのショットが最高。絵になるなぁ。
『日本侠客伝 浪花篇』。
出演者の中でひときわ顔も身体も醜い村田英雄がバッチリ目張り入れて眉描いて、大見得切った浮いた芝居をしているのには、観ていて片腹痛かったなぁ。
明らかに一人だけ違う芝居(コマ劇の舞台芝居みたいの)をしていて浮きまくっているんだけど、本人は本当に気持ちそうにやっていて、ああ、マキノも手の施しようがなかったんだろうなぁって、観ていて思いました。
(唄は素晴しかった)
村田英雄が殺されるトンネルのシーンが特に素晴しかったです。
『日本侠客伝 関東篇』。
これ、すごく面白かった。笑いっぱなし。
先の2作に比べてかなりユーモアの部分を強調した感じ。
高倉健の登場の仕方に意表をつかれました。主人公なのに、いつの間にか映っていた、という登場の仕方。
高倉健が悪役のヤクザ対し、「おい、ヤクザ!」とか「ヤクザくん!」と呼びかけるのには本当におかしい。
先ほどの村田英雄と違って、北島三郎の演技がうまく感心いたしました。勘がいいんでしょうね。
サブちゃん、見た目今も当時もあまり変わりなかったなぁ。
あと、この作品、脚本に突っ込みどころが多かったです。
小揚(荷物を運搬する者たち)の大木実(頭デカい)は、昔から世話になっている築地の魚問屋「江戸一」が窮地におちいっているのを見て、小揚組合の金に手をつけて、「江戸一」の女社長の南田洋子に渡します。大木実は「これは横領・背任だ」と言いながら公金を渡すのですが、南田洋子と高倉健は断ることもなく嬉しそうに受け取ります。これにビックリ。
「江戸一」は丹波哲郎の網元から魚を陸揚げしようとしたところ、ヤクザと癒着した水産庁は突然陸揚を禁止してしまいます。が、何とか陸揚げしたい高倉健が大木実ら小揚に頼みこむと、大木実は「法律を犯すことはできない!」と言い断ります。直前に公金横領くせによく言うよ、と突っ込みたくなります。
すると、健さんは他の小揚連中に「これは皆の問題だ!この取引の金は小揚組合の公金から出ているんだ!」とぶっちゃけます。
が、驚いたことに、小揚組合の組合員たちは、誰も大木実の公金横領に怒ることもなく、「そうか!じゃあ、俺たちの問題だ!皆で魚を陸揚げしよう!」と、法律違反はイヤだと言った舌の根も乾かぬうちに俄然やる気になり、一致団結して陸揚げします。
という感じに不思議な脚本なのですが、そんなことは些細なことで、そういう次元を超えた素晴しさがこの作品にはありました。
焼津の網元役の丹波哲郎がいつもの丹波哲郎そのままで、お銚子ごと口につけて酒を飲んでおりました。
あと、この作品、前2作以上に高倉健の肉体美を誇張した作品でありました。特に脱ぐ必要もないのに裸を見せるシーンが何箇所かあって、後半の健さんが裸になって身体を手ぬぐいで拭いているシーンなんて、背中の美しさをひどく強調していてゾクっとするほど艶かしかったです。
(同様のシーンは、楊凡 (ヨンファン) 監督の『華の愛 遊園驚夢』にあり。)
大急ぎで渋谷に移動し、シネマヴェーラの東宝アクション特集へ。
西村潔監督の『ヘアピン・サーカス』。
この作品もまた、違う意味でものすごく面白かったです。
テレビモニターではなく劇場のスクリーンで絶対観るべき作品。手に汗握ります。
昼間の首都高をかなりのスピードで車がズンズン走っていく冒頭から、スリル満点で、車酔いしそう。
菊地雅章の音楽がムチャクチャかっこいい!
車が疾走するエンジン音といっしょに終始超クールな菊地雅章の音楽が流れて感涙モノ。
サントラも発売されております。
主演の見崎清志は俳優ではなく本物のレーサーで、結構な二枚目。
レーサーが出演した映画で思い出されるのが、石井輝男監督の『爆発!暴走遊戯』。
この作品に出ていた桑島正美は超棒読み・無表情で見るものを凍らせる演技でしたが(しかもお世辞にもハンサムとは言えないルックス)、それに比べ『ヘアピン・サーカス』の見崎清志は、それなりに演技をしていて、演技力不足で無表情な甘いマスクは、何か暗い過去のために感情を表に出さない陰がある男に見えなくもないのであります。
夜のドライブインで、見崎演じる主人公・島尾は、自分が教官を務める自動車教習所で一年前に教えた美樹(マルシア似)に偶然再会いたします。
ここで、映画は一年前の教習風景に戻ります。この教習所でのプレイバックが奇妙に長い。自動車免許の教習ってそんなスリリングな場面じゃなのに。
(島尾が美樹に教えた言葉は「ゆっくり走れ。後ろに注意。緩いカーブに気をつける」)
で、美樹とその仲間と別れた島尾は、雨の首都高を走り自宅に向かいますが、今度はマカオ・グランプリでの回想シーンに変わり、島尾がレーサーだったことがわかります。
このマカオでの回想シーンが結構見もので、実際のマカオ・グランプリで撮影されたらしき映像やドライブしている姿をアップで撮ったショット、事故のシーンや、マカオの病院のシーン(ちゃんとマカオ・ロケしている)などなどマカオに行ったことがある人なら懐かしくなってしまう風であります。
映画はまた現実の雨に濡れた首都高に戻り、菊池雅章の音楽に合わせて、島尾の車がどんどん疾走するのを見ていて、ワタクシ、どんどん気持ちよくなりました。
で島尾の住まいは川崎の公団住宅。妻と赤ん坊が待っております。所帯染みた感じがリアルです。
家で寝ていても、マカオ・グランプリを思い出す島尾(ここでまた長いマカオでの回想シーン)。
そして、島尾は、美樹とその仲間は公道で他の車を挑発し、挑発にのってきた車をヘアピン・カーブで撃墜し事故に遭わすというゲームをしていることを知ります。
島尾は危険な行為を止めるよう美樹を説得しますが(と言っても、強く説得するわけでもなく、美樹の車に同乗して、危険なゲームに延々付き合い続けます)、言葉で説得しても美樹は忠告をきかないと結論を出した島尾は、自らのドライビングで美樹とそのグループを撃墜することにします。
ここからが、驚異の天下の公道でのカー・アクションの連続。
今では絶対に撮影不可能でしょう。
普通にタクシーが走っているすぐそばで公道レースをしております(もちろん、時代柄シートベルト無し。おそらく夜中に撮影していると思われますが、それでも危険極まりない感じ)。
それを車の前後至近距離から撮影し続け、菊地雅章の音楽も相成って、とにかくスリリング。
そして驚異のラスト。想像を超えた終わり方で、観ていて噴出しました。
「東映か!!」と、突っ込まずにはいられません。
脚本はいい加減。そもそも脚本はどうでもよい作品で、この作品の主役は車(トヨタ2000GT)と菊池雅章の音楽です。
観ていて車酔いしそうな映画でした。DVDが発売されたら買いたいです(されないでしょうけど)。
とりあえずサントラのCDを注文いたしました。

最後に福田純監督 『100発100中』 。
最初の60分はテンポよくて、面白く観ていたのですが、最後の30分がどうにも冗長でかったるく疲れちゃいました。
もっともそう感じたのは、5本目の映画で疲れていたためかもしれません。
布施明が歌う主題歌、よく耳にするのですが、はてどこで聞いたのかしら?
今日一日、食事もせず朝から5本観たので疲れ果てました。