『日本暴行暗黒史 怨獣』『狂走情死考』
2008 / 03 / 17 ( Mon )
シネマヴェーラの若松孝二特集へ。
『日本暴行暗黒史 怨獣』(70年)。
江戸から明治になった頃の金蔵破りだった男たちのお話。
普通によく出来た作品。かなり楽しめました。
低予算の作品にもかかわらず、いい構図があったり、格調高いショットがあったり。
作品に緊張感があり引き込まれました。
昨日観た『新宿マッド』『処女ゲバゲバ』『秘花』と製作は同じ頃ですが、こちらの方が断然プロの仕事という印象。
『狂走情死考』(69年)。
これ、好きタイプの作品だと思いました。
最初、イデオロギー云々の話かと思いきや、それは全然本筋ではなく、男女の愛の逃避行の物語でありました。
吉沢健演じる主人公と義姉のカップルが東北を北上して行くのを観て、二人が雪景色を歩くさまが大島渚の『少年』にそっくりじゃないかと思ったのですが、後でプログラムを見たら、「大島渚の同じくロードムービーである『少年』の撮影と伴走しながら」って書いてありました。
なるほど。どうりで。
北海道に行くのに飛行機でしか行ったことがないので、青函連絡船の中が見られたのは嬉しかった(『飢餓海峡』も青函連絡船でしたっけ?)
冬の小樽は本当に絵になるなぁ。
それに吉沢健の声が素晴しかった。低音で魅力的なイントネーションで。
義姉役の武藤洋子、最初オバサンぽかったのに、吉沢健と逃避行しているうちにどんどん娘っぽく若々しく変貌し、でも最後またいっきにオバサンにもどっておりました。
観終わった後、劇場で遭遇したKさんに、『少年』によく似ていると思ったと感想を伝えたところ、Kさんは成瀬巳喜男監督の『乱れる』を彷彿させられたとのこと。
確かに、『狂走情死考』は若松版『乱れる』でした!
今日まで若松孝二作品を観た感想としては、作品のテーマがイデオロギー、政治から離れている作品ほど出来がいいな、とで(付属的な扱いで政治が出てくるのはOK)。
さて今回の特集で、政治的な内容で傑作と思える作品に出会えるでしょうか?楽しみです。
スポンサーサイト
テーマ:日本映画 - ジャンル:映画