『接吻』
2008 / 04 / 11 ( Fri )
小池栄子の演技が素晴しいと評判の万田邦敏監督の『接吻』を観に行きました。
ユーロスペースへの道中、タリーズあたりを歩いていたら、ワタクシメと同じ街にお住まいで、数年前ワタシの私生活のゴタゴタに巻き込んでひどく迷惑をかけてしまった大石ご夫妻に遭遇。
大石ご夫妻も『接吻』を観に行かれるということで、数年ぶりに色々お話をさせていただきビックリ。
何と奥様の大石三知子さんが脚本を書かれた『東南角部屋二階の女』が今度公開される、と。
その映画知ってる~。西島秀俊や香川京子が出演していてエキストラ募集していた映画だー。
そういえば数年前、三知子さん、よくシナリオの本を読まれていたなぁ、でも普通にお勤めされていたのにどういう経緯で?と、いきさつを伺うと、東京藝大の大学院映像研究科の第一期生になられ既に修了されたのだと。
ワタクシ、失礼にも数年間ご無沙汰してしまっておりましたので、そんなご活躍をまったく存じ上げませんでした。
『東南角部屋二階の女』、絶対観に行きます。
で、『接吻』です。
冒頭、住宅街を豊川悦司が上手から下手に向かって歩いていくのが映るところから、もうアクセル全開。メータの針は激しく揺れ、切迫感で観ていて心臓が痛くなります。
で、この切迫感、映画の最後までコンスタントに続き、映画が進むにつれ、針は段々とレッドに振り切れる頻度が高くなり、終始緊張感で胸が痛かったです。
ザラザラした質感の映像がこの殺伐とした作品にとてもマッチしておりました。
前半、緑地でトヨエツの足元にきたサッカー・ボールを拾いにきた男の子をトヨエツがハンマーで襲おうとして、母親が抱きかかえ逃げ、そしてカメラがひいたとき、トヨエツの背後に大きなマンションがドーンと映るのですが、そのショットを観て、ワタクシ、もうヤラレターと思いました。
そして、小池栄子です。
彼女の目、虚ろだったり、ひんむいたりで、とにかく凄い。
凄い凄いとは聞いていたけれども、本当に凄い。
彼女はとても頭がいい人なんでしょうね。
あと、とてもいいなと思ったのが、ロケーション選びのセンス。
トヨエツが逮捕される背後にマンションがあるブランコがある緑地も素晴しいですし、小池栄子と仲村トオルが篠田三郎に会った後、車を降りて歩く田んぼも良いなーと思いました。
ロケーションの選択もいいのでしょうが、それを映すカメラがいいんでしょうね。
音楽も冒頭からアクセル全開。映像だけでもすごい緊迫感あるのに、さらにこれでもかと観客に畳み掛けてきます。
途中、挟み込まれるホラー演出に関しては(特に手が出てくるところ)、これは必要なのかな?と観ていて思いました。
そして、問題のラストです。
(以下、青文字部分、ネタバレあり)
もう小池栄子はトヨエツを殺すしかないのだろうなと、観ていてわかったので、拘置所の職員にケーキの箱のチェックをされているとき、ひょっとしてケーキの中に凶器が隠されているのでは?と想像いたしました。
で、小池栄子がハッピー・バースディを唄いながら、仲村トオルのバッグから包みを取り出して、いまや(小池栄子的には)普通の腑抜けに成り下がったトヨエツのそばに行ったとき、当然やるなやるなと思ったのですが、やった直後の展開が想定の範囲外でありました。
あんな風に、小池栄子に目を引ん剥かせ、ウォーッと仲村トオルに襲い掛かり、接吻して、ウォーッと連れていかれ、ジ・エンドで「接吻」と出るっていうのはどうなんだろう、と。
小池栄子に静かに殺させ、フっと終るという演出でも良かったのでは?と。
その疑問を解決したいから、もう一度観たいな。
ともあれ、とても面白かった。
『ヘアピン・サーカス』以降、最近ワタシが観た狂気映画はいい作品ばかりです。
帰り道、大石ご夫妻とお話しながら帰ったのですが、トヨエツの話になり、ワタクシ昔、TBSドラマ『愛していると言ってくれ』の撮影をしていたトヨエツを近くで観て、この世にこんな美しい男がいるのかと息をのんだ、と申し上げたのですが(ホント、これまでの人生で、実物を見た中で、女性も含めて一番美しかった人がトヨエツ)、そういえば、『愛していると言ってくれ』のトヨエツの役も、思い込みの激しい年下女性(常盤貴子)に追われる役だったなぁ、と。
トヨエツは、女をそういう風に狂わせる魅力が確かにあるわなぁ、と。『接吻』の逮捕されるときのあの笑顔も観ていてキターっと思いましたよ。
最優秀演技賞ものの小池栄子の狂気の熱演についての記述がちょっぴりになってしまいましたが、とにかく凄かった。
彼女の演技をもう一度観たいし、あの終らせ方について考えたいので再度観たい『接吻』でした。
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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画