本日はラピュタにて2本鑑賞。
いま、大注目している鈴木英夫監督の『彼奴を逃すな 』(1956年)。
場内満員。こういう作品の入りがいいのは嬉しいですねぇ。
期待通りに素晴しい作品でした。
貧しいながらつつましく暮らしている夫婦が殺人事件の犯人を目撃したことから、犯罪に巻き込まれていく、というストーリー。
スクリーンに映し出される写真ひとつひとつが少しも緩んだところがなく、完璧。
全体的に露出アンダー気味な映像で、それがまた効果的。
前半、殺人犯を目撃したことを隠している夫婦がアパートの自室で困り果てているシーンで、後ろの窓に露出が合っていてアップになっている二人の顔が真っ暗。それが二人の心の様子を表しているようにみえるのだ。
警察に呼び出されても、何も目撃してないと言い張る二人をベテラン刑事の志村喬が揺さぶるシーンの緊張感。見事。
音の使い方も非常に上手い。汽車の音、チンドン屋のクラリネットの音、坊さんが叩く太鼓の音、ラジオの音など。
そして絶対絶命のクライマックス、久しぶりに映画を観てとってもハラハラドキドキいたしました。
が、観終わった後、後味の悪さを感じた。
善良な一般市民をあんな危険にさらすとは、警察はいったい何をしてたんだよー!やっぱり、証言しない方がよかったじゃないかー、と。
それはともかく見事な作品でした。
次に野村芳太郎監督の『張込み』。
脚本は橋本忍。音楽は黛敏郎。
『彼奴を逃すな』では犯人役だった宮口精二が今度は刑事役。大木実演じる人生の決断に迷っている若手刑事と、殺人犯の元恋人で今はケチな歳の離れた銀行員の人妻になっている高峰秀子を見張る。
大木実は、地味で所帯染みた女だと思っていた高峰秀子が昔の恋人・田村高廣の前で情熱的になるのを見て、女というものを理解するのですよ。
ミステリー・サスペンスというよりも、女の性(サガ)と、一人の刑事が人間的に成長する過程を描いた作品。
感傷過多にならず、地味ながら丁寧に撮った作品でした。
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