今日一日、朝から晩まで渋谷東急での「ぴあフィルムフェスティバル」ロバート・アルトマン特集、
4作品を鑑賞。
『ウエディング』。
『ナッシュビル』と同じく皮肉たっぷりの群像劇なのですが、より大規模で複雑になっているので登場人物を把握しようと必死になって観ました。
冒頭、挙式で花嫁が口を開くと歯に矯正器具がはまっているところからして普通ではないな、と。
今回もジェラルディン・チャップリンが無神経なキャラクターで登場。
リリアン・ギッシュも出てました。
ミア・ファロー、はかなげで上手い(当時33歳。すでにシナトラやプレヴィンとの結婚・離婚した後)。
さんざん馬鹿騒ぎをした後に、フっと寂しくなりカメラがズームバックして終るというのは『ナッシュビル』と同じ。
祭りの終わった後の寂しさですね(フェリーニ的)。
『ギャンブラー』。
生きることも(生き残ることも)、自然も、町も、取引も、男と女の間も何もかも厳しい、そして男も女も荒くれ者ばかり。そんな映画。
感傷にひたれる甘さは微塵もありません。
最初から最後まで歌が流れるのですが、これがウォーレン・ベイティ演じる主人公の心理を代弁というか説明するものでした。
今回スタンダード・サイズでの上映でしたが、ぴあのディレクターの方の話によると、本来作品はシネマスコープなのだけれども、現存するフィルムはスタンダードのみで、それで今回スタンダードでの上映とのこと。
それから、上映前にフィルム状態が悪いと説明があったのですが、確かに最初の方は退色してましたが、中盤になると気にならない程度で全然許容範囲内でした。
『ボウイ&キーチ』。
大傑作。観終わった後呆然とするほどの。
感傷的なようでもあり、同時に突き放してもいて、相反する二つが作品に共存していて、本当に凄い。キャスティングが良くて、ボウイ役のキース・キャラダインもこの作品ではとても純粋な感じだし、何と言ってもキーチ役のシェリー・デュヴァルが役にマッチしていて、ボウイが痩せぎすでピュアなキーチを愛するというのが、この物語の中ではイイのですよ。
ストーリーは若い強盗が所帯を持つ話、とまとめてみることもできるのですが、
言うまでもなく所詮強盗には人並みの暖かい家庭を持つことなど許されないものです。
ボウイは脱獄してから一度も自らの手で人を殺してはいなのですが、
仲間が犯した殺人に対して、自分がやったのか仲間がやったのか頓着することもない。
そして最初は弱々しい青年だったのが段々と強い男になっていく。
作品の中で、キルト、コーラ、ラジオ(特に「ロミオとジュリエット」のラジオ番組)がとても重要な意味を担っていました。
『ナッシュビル』でもそうでしたが、ラジオのナレーションが多用されとても重要なのです。
この映画、ワタシにとっては、最初の方のキース・キャラダインが大きな犬を抱いて線路下に隠れるシーンだけでも十分に観る価値ありました。
ココ、ワタシにとっては一生記憶に残るであろうシーンでした。
そして最後、キーチが駅の階段を上っていくと、スローモーションになるところ、一見感傷的なようでもあり厳しく冷淡に突き放しているようでもあり、ここも忘れられない。
生涯忘れられないほどの衝撃的な作品でした。
『BIRD★SHT』(トリのフン)。
フィルムにフランス語字幕が付いていました。フランス語圏から取り寄せたフィルムのもよう。
予想に違わず抜群に面白い。
この映画の舞台であるアストロ・ドームは2005年のハリケーン「カトリーナ」の避難所として使われ殺人やレイプも起きたとか言われたあのドームですよ。
この作品でもラジオのアナウンスが重要。
あと歌の歌詞も意味ありげだったのですが、歌が流れるシーンで歌詞の日本語字幕が付いていなく、ワタシは英語の歌詞のヒアリングが出来ないので、フランス語字幕を読んでみると「ciel」と何度も出てきたので空がなんちゃらと歌っていたようですがフランス語もほとんどわからないので、全然補足にならず。
猛烈におかしくて、とても悲しい寓話。
空を飛ぶとか言っていながら、それはアストロ・ドームの中でなのです。
しかも所詮人間は鳥にはなれない(しかし、実際に空を飛んだのにはビックリ。鳥人間コンテストみたい、いやそれ以上?)。
そして最後はカーニバル的終焉。祭りで終るのは『ナッシュビル』や『ウエディング』と同じですが、よりフェリーニっぽい。
『ロング・グッドバイ』以外のアルトマン作品は日本に上映権もフィルムもなく、今後また劇場で観ることは極めて難しい状況とのことで、今回の映画祭で観ることができ本当に良かった。
11本全部のチケットを確保したので、今回上映される全作品を観ることができるわけですが、それだけの価値がありました。
中でも『ボウイ&キーチ』に痛く感動。
今回まず5作品を観た感想としては、アルトマンは突き放した視点で映画をつくる人だと。
『ボウイ&キーチ』なんて、とことん感傷的になりがちな題材であるにもかかわらず、一定の距離感、客観的な視点を常に保ったまま撮っていて、この作品によってアルトマンは突き放した視点側の人であることを強く感じさせられ、そういった突き放し感がこれまでに観た全てのアルトマン作品に共通しているな、と。
アルトマンの本も買ったので、この本からそういったスタンスで映画を撮る背景・手がかりがわかればと期待しております。
おまけ。今日は中原昌也と柳下毅一郎氏をを確認。
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