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蔵原惟繕『黒い太陽』

シネマアートンに蔵原惟繕監督作品『黒い太陽』(1964年)を観に行きました。
この作品、ラピュタの「阿佐谷ジャズストリート2004 提携企画 OFF BEAT JAZZ」でも上映されていたし、2005年に出版された鹿島茂「甦る昭和脇役名画館」で取り上げられていて、本に合わせた翌年6月の新文芸坐の「脇役列伝」特集でも上映されていたのですが、いずれも見逃していて、尊敬する鈴木並木氏と真魚八重子氏がこの作品について言及されているのを読み、これは絶対行かねばと思い今回観に行ったわけであります。
事前にサントラCDを購入して音楽を頭に入れて行きました。
黒い太陽/狂熱の季節 黒い太陽/狂熱の季節
サントラ (2007/02/23)
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やっと観た『黒い太陽』、とんでもない傑作。
映画が、川地民夫が、ジャズのimplusに衝き動かされてる!
最初から狂ったように熱いマックス・ローチによる音楽が流れ、スクリーンに現れる川地民夫は衝動だけを動力として生きているかのような動きをみせるのです。
晴海埠頭(深作欣二の『狼と豚と人間』での舞台と同じロケ地に見える)で盗品の鉄線をさらにかっぱらい、銀座でマックス・ローチのレコードを買い、喜びでジャズのリズムで飛び跳ねるように街を歩き、高級車を盗み、東京の街をドライブし、ポンコツ屋に車を売り、代わりにボロ車を譲り受け、渋谷の丘の上にある廃墟となっている教会の中の棲み家に戻る。
ここまでの川地民夫の躍動感、細かいカットつなぎ、全てがジャズそのもの。
前半、大胆な俯瞰で撮ったショットに何度か切り替わるのも印象的。
廃墟の教会内で繰広げられる川地民夫とチコ・ローランド演じる黒人兵のやりとりが全然意思疎通出来ていないのも緊張感があってちょっと悲しく滑稽でありながら面白いし、川地民夫がチコ・ローランドから機関銃を奪い立場が逆転した後、床に落ちていたチャールズ・ミンガスの「道化師」のジャケットのようにチコ・ローランドを白い道化に変身させてしまう演出も憎いし、当時の道玄坂・百軒棚らしき場所にあるジャズ喫茶が見られるのも嬉しいし(ちょうど荒木一郎の小説「ありんこアフターダーク」がこの当時の百軒棚のジャズ喫茶を舞台としている)、そして何よりマックス・ローチの激しいドラミングとアビー・リンカーンの力強い歌声(当時二人は結婚していた)。
海を見たいと言うチコ・ローランドを油まみれの汚れた東京湾に連れて行く川地民夫、
(ところで、この作品、劇中の英語の台詞に対して全く字幕が付いてなくって、よって観客は川地民夫と同じように必死にチコ・ローランドの英語の台詞を聞き取ろうと耳を傾けることとなる)
そして最後、川地民夫はチコ・ローランドに広い青い海を見せ、チコ・ローランドは黒い太陽となっていく。そこにアビー・リンカーンの獣のような絶叫が重なる。
本能のまま、突き動かされるままに衝動的に動いていく登場人物の勢いと、その原動力となっているジャズにただ圧倒される95分。

「甦る昭和脇役名画館」によると、『狂熱の季節』直後の60年末には山田信夫は既に『黒い太陽』の脚本を書き上げていてすぐに撮影に入る予定だったのが、大島渚の『日本の夜と霧』の興行的失敗で始まった日本ヌーヴェルバーグの切捨てや、反米的要素により会社から中止命令が入り、企画はいったんお蔵入りになったのだそうです。
それを蔵原惟繕が機会を捕まえては製作を訴え、ついに会社の重い腰を上げさせ、製作に入ったのだけれども、3年余りの月日で社会状況が変わっていて、脚本に加筆・改訂が必要になっていたそうです。
そして、『狂熱の季節』にはなかった「ここより他の場所」への憧憬、「いまのオレは本当のオレではない」という居場所探しの要素を入れることにしたのだそう。

ワタシが高校生の時に買って読んだ佐藤忠男の「ヌーベルバーグ以後」という本に、映画の中でモダン・ジャズをつかった最初の映画はロジェ・バディムの『大運河』(1957年。音楽はMJQ)であると書いてありましたが(世間でもそう言われてますが、本当にそうなのでしょうか?)、日本では鈴木清順の『すべてが狂ってる』(1960年)がすでにモダン・ジャズをつかっているし、翌61年には石井輝男が『セクシー地帯』でMJQみたいな軽妙なジャズをつかっていることを考えると、日本映画がモダン・ジャズを取り込んだのは早かったと思いますし(『アメリカの影』は60年)、その出来も見事だったと思うのですが、日本におけるジャズ映画史、いや世界のジャズ映画史の中で『黒い太陽』が頂点に位置していると確信いたしました。
もちろん、ジャズが流れる映画すべてを観たわけではありませんが、これ程凄い映画はそうないと思います。
(あるようでしたら、ジャズ映画ファンのワタシにお教え下さい)
映画の附属音楽としてジャズが流れるのではなく、『黒い太陽』はジャズが映画の動機であり、中心であり、結論なのです(言い換えるとジャズによって生まれ、ジャズによって動き、ジャズとして終る)。

正直なところ蔵原惟繕という人物について裕次郎や『南極物語』の人ぐらいの認識しかなく、ほとんど知りませんでした。
『黒い太陽』のような躍動感あふれる作品は『狂熱の季節』以外にあるのでしょうか?
もしあるのであれば、上映の機会を切に願います!
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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

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東京23区在住。
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