どうも。久しぶりの更新です。
シネマヴェーラの「妄執、異形の人々Ⅱ」特集が終わりしばらく静養しておりました。
そして、今日から東京国際映画祭が始まり、再始動です。
朝から映画祭会場のBunkamuraへ。
まず1本目ル・シネマで「映画が見た東京」特集より、斎藤寅二郎監督の『東京五人男』(東宝)。
1945年の製作。終戦直後の焼け野原の東京でロケ撮影しております。
住宅難、配給、国民酒場、超々満員の路面電車、食料入手のために農家に物々交換に行く都会人(農家の金満ぶりを表わす描写がすごい)、疎開児童の帰京などなど、戦後の混乱期の興味深い光景がロケ撮影で見ることができ、かつユーモアあふれる娯楽作として楽しむことができる素晴しい作品でした。
この作品に映っている東京は、まだ全然復興されていない文字通り焼け野原で、登場人物達は掘っ立て小屋に住んでいます。
配給所や国民酒場のとてつもない行列の描写も興味深いのですが、芋の配給のシーンは皆で踊り出しそうなほどにリズミカルで、配給をこのように撮るなんてセンスいい。
映像資料としても、作品の出来から言っても素晴しい作品でしたが、残念ながら場内の半分以上が空席でした。
2本目はシアター・コクーンにてエドワード・ヤン監督の『恐怖分子』。
見始めてすぐ気付いたことは、おおよそどのカットにも直線が映っているなぁと。それも縦の。
建物、部屋の中の柱、窓枠、廊下、車線とか。
縦の直線を多用した画面によって、より作品の印象が硬質なものになっっているなと思いました。
接点の無い、職業や状況も異なる複数の登場人物達の話がバラバラに進行していき、それが1本のイタズラ電話によって登場人物達が一つにたぐり寄せられ、そのまま最終局面に向かって進んでいく緊張感は見事。
映画の途中でラストの展開が大体読めた後でもその緊張感は緩むことはありませんでした。
オリジナル予告編にあった、古アパートの壁一面に貼り付けた少女の顔写真、それは複数の小さなサイズの印画紙をつなぎ合わせたものでそれらが風でバタバタとめくれる有名なシーンや巨大ガス・タンクのカットを今回スクリーンで観ることができ嬉しかった。
音楽は元奥さんの蔡琴。ワタシ、この人のファンです。
シアター・コクーン前にエドワード・ヤンについての冊子が400円で売っていて、何となく買ったのですが、内容薄!400円は高いなぁ。
『恐怖分子』上映後、歩いて1、2分のシナマヴェーラへ移動。
「子供たちの時間」という特集、来るのは今日が始めて。
1本目、『ションベンライダー』。
相米慎二監督の、傑作と誉れ高い作品であることは勿論わかっているのですが、観ていてずっと気色悪い感覚がつきまとい、それが何故なのかは自分でわかっていて、そういう気持ち悪さが一番表れていたのが河合美智子が泣きながら海に入るシーン。
と軽度の嫌悪感を感じながらも、終始見られるロングでのなめらかな長廻しに凄いなぁと感心しつつ観ておりました。
特に、主人公3人や藤竜也や担任が運河に浮かぶ丸太の上をどんどん飛び走りながら、ヤクザ2名とデブナガを追いかける超ロングショットったら奇跡です。
この作品、ロングで子供達の運動神経バツグンなアクションを映しておりますが、中でも河合美智子の動きが素晴しい。橋から川に飛び降りちゃったり、踊っている仕草なんかも。歌も上手いしね。
名古屋のヤクザの組員が中日ドラゴンズのユニフォームに似せた制服(帽子まで被っている)を着せられているのはおかしかった。
もう1本は『少年、機関車に乗る』。
タジキスタン映画だそうです。
この映画について何の前知識も無く期待もせず鑑賞したのですが、いやぁ素晴しかった。
こういう作品に出会うと、映画を観ていて本当に良かったぁと思います。
ストーリーは、貧しい家に住む祖母と10代後半(と思われる)少年と7歳ぐらい(に見える)弟が汽車に乗って遠くの町に住む父親を尋ねるというもの。
これだけの単純な話なのですが、もう、スクリーンに映る何もかもが映画的なんです。
機関車から見える光景(彼らが乗っている機関車は貨物列車で「車窓からの光景」など言える車両じゃあない)の何もかもが映画的で、風景も貧しそうな人々の姿も動物までも、映画的なたたずまいを見せるのです。
この機関車の運行が、この国の人々の暮らしぶりを表わすようにおおらかと言うかいい加減で、運転手が自分の家の前に来ると勝手に止めたり、美人な女性を乗せるために勝手に止めたりと、やりたい放題に見えるのですが、これがこの国では普通のもよう。
一見不幸な境遇にある主人公兄弟の、素朴で深い兄弟愛の描写の素晴しさ。
そして何より弟・通称「デブちん」が愛すべき好キャラクターで、土を食べちゃう困ったクセがある食いしん坊で、表情豊かで、ワンパクで、兄を慕っていて、そんな愛すべき「デブちん」を演じた男の子の演技の自然なこと!
あと音楽も良かった。
機関車が走っている時に流れるのですが、ちょっとジプシー・キングス風なエキゾチックな感じで映画にとってもマッチしておりました。
今日のシネマヴェーラの上映に、7歳ぐらいの女の子と母親が来ていました。
『少年、機関車に乗る』はストーリーの細かい意味がわからなくても観ていて楽しめただろうなぁ。
『ションベンライダー』、どうみても小さな子供向けの映画ではありませんが、どう思ったのかしらん?河合美智子が覚醒剤の白い粉を食べるシーンがあったので、親はギョっとしたかも。
「子供たちの時間」といっても子供が主人公なだけで、子供向け映画は『風の又三郎ガラスのマント』ぐらい?『青い凧』なんて、小学生だと観てもストーリーは意味不明だと思う。
が、ストーリーが意味不明でも素晴しい作品の素晴しい映像を子供の目に焼き付けるのはよいことかもしれませんね。
明日も東京国際映画祭にまいります。
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