本日はまずシネマヴェーラにて市川崑監督の『東京オリンピック』を
なべらさんと並んで鑑賞。
映画が始まってすぐ、観ていて涙が出てきました。
私の父が東京オリンピックの選手だったからではありません(先日書いたように、父は大学生の時東京オリンピックに出場しており、まぁそういうことも少しは影響しておりますが)。
これぞ映画だ、と痛く感じて涙が出てしまったのです。
この作品ほど、映画はwhatではなくhow、つまり、何を見せるかはさして重要ではなくて、どう見せるかが重要であるということを感じさせてくれる映画はありません。
(「映画はwhatでなくhow~」は鈴木並木さんによる言葉)
日本国民誰もが知っているイベント、東京オリンピックをどのように撮り、どのように見せるのか?
奇跡とも思えるような「見せ方」を大スクリーンで目にして、感動して心がヒクヒク震えました。
例えば、開会式の入場行進の場面、某国選手団の行進している姿を全体から撮ったカットの次に足のみにアップのカットに続き、観客の外国人カップルのカットにつながる。
こういったカットつなぎの妙に心が震え、カメラの素晴しさにクラクラせずにはいられません。
この作品がすばらしいのは、howが奇跡的な出来であるであることだけでなく被写体の素晴しさにあることも勿論です。
冒頭、モダニズム建築の傑作群が次々と映り(モダニズム建築ファンは悶絶すること必至)、まだ歯並びが悪かった日本人観客の笑顔がアップで映り、鍛え抜かれたアスリートたちの筋肉の躍動が望遠レンズで映し出される。
観客席にいる世にも美しい美智子妃が映り、王、長島も映る。
そうそう、円谷幸吉の走る映像を観たのは初めて。あの有名な遺書を書いた人はああいう顔でああいう姿で走っていたのかぁ、と。
(マラソンだけでなく1万メートルにも出場していたとは知りませんでした。)
女子バレーボールが優勝した瞬間、大松監督は選手のそばに行くこともなく一人ポツンとベンチに座ったまま、物悲しそうな寂しそうな表情をしているところをカメラが捉えていて、その意外とも思える表情に彼はその時何を考えていたのだろうと想像してみたり。
(つい先日シネマヴェーラで大松監督と女子バレーボール・チームを描いた『おれについてこい!』を観たばかり)
当時の政治情勢についても考えさせられるシーンが色々あり、ホッケーの決勝はインド対パキンスタンという険悪な2国間で戦われ、両チームの選手がスティックを武器のように持ちやり合う光景があったり、東西ドイツが統一チームとして出場していて、国旗は3色旗に中央に五輪マークがついたデザインのものをつかい、国歌の代わりにベートーヴェンの「歓びの歌」を流れていたり。
音楽については、チャドから来た陸上の短距離走の選手が準決勝で敗北した瞬間に流れるクールなジャズと、自転車競技の場面で流れるアップテンポのジャズがよかったです。
最後、エンドロールに流れるキャストを見ていたら、細江英公の名を発見。へーえ。
上映時間、170分。途中5分の休憩あり。
JOCのサイトに市川崑監督の『東京オリンピック』についてのインタビューがありましたのでリンクしておきます。
http://www.joc.or.jp/past_games/tokyo1964/interview/index.htmlラピュタに移動しダイニチ映配特集へ。
まず『おんな牢秘図』(1970年・大映京都)。
映画は、必死の形相のボロキレを来た女(女囚とその直後にわかる)が男たち(監視の役人)から逃げ、断崖まで追い込まれ捕えられ、砂利道の上をすまきにされた身体を引きずられ、皆が見ている中で打ち首になり、その首がさらし首になったところで『おんな牢秘図』のタイトルがバーンと出て、さらし首の髪の毛が風にたなびく画をバックにキャスト、スタッフが出るというおどろおどろしいもので始まり、こりゃ石井輝男かと思いつつ鑑賞。
この作品、石井輝男のエログロ作品に比べるとソフトではありますが、去年シネマヴェーラで観た『おんな極悪帖』(この作品にも田村正和が出ていた)に似た陰湿な雰囲気の映画で、石井輝男+『おんな極悪帖』を混ぜて2で割ったようでした。
孤島に島流しになった女囚と島に在任している悪徳役人の話ですが、出てくる人間がすべて悪人。田村正和も悪人。
女囚がリンチし合ったり、伝染病が流行ったり、役人通しが斬り合ったりします(悪いヤツしか出てこなくて、暗さで突っ切るところも『おんな極悪帖』と共通してます)。
花柳幻舟が元花魁の女囚として、めずらしく色っぽいキレイどころの役(女囚の中ではですけど)として出演。
エログロ(といっても大してエロでもグロでもないのですが)作品としては、演出が丁寧で、想像したよりもいい作品じゃないかと思いました。
フィルムは、これまであまり上映されていないのか、ピッカピカなおニューな状態でした。
次に『いちどは行きたい女風呂』(1970年・日活)。
カメラが姫田真佐久なので観に行きました。
ナンセンス・コメディなのですが、美術が凝っておりました。
主人公(浜田光夫)たちが行くクラブ(お化け屋敷みたいな内装で給仕もお化けに扮装している)とか、横尾忠則風のイラスト・ポスターとか。
劇中出てくるロシア・レストラン「ヴォルガ」も印象的でした(このレストラン、他の某作品でも観た記憶がある。が確信が持てないのでチェックしておかなきゃ)。
土方巽の暗黒舞踏団が出演していたり、劇中出てくる劇団が「家畜人プータロー」なる作品を上映する設定になっていたり、主人公の友人が便器になって外国人女性に跨れる妄想を抱いたり、横尾忠則風だったり、ナンセンス・コメディなのに妙にアングラ風なところがありました。
ゲバラという名前のかわいい犬(ハッシュ・パピーと同じバセットハウンド)が熱演しているのはよかったです(犬が出てきて、ジャズが流れる映画には甘いワタシ)。
終盤、浜田光夫と友人2人(前野霜一郎、沖雅也)が連れていた複数の犬が暴走して女風呂に入り込み、浜田光夫たちや犬たちや女風呂の客たちがワーワー・ギャーギャーとなって、ハチャメチャになっておりました。
映画が終って駅に向かう途中、オジサンになぜ犬は女風呂に入ったのか?と質問されたのですが、サービスショットを見せるため、としか答えようがなかったです。
一緒に観たHさんは「『毎度おさわがせします』的なサービスショット」と表現されてましたが、そのとおりです。
ナンセンスな作品ながら、ナンセンスとわかってやっている映画なので、真面目につくってナンセンスになってしまった『スパルタ教育 くたばれ親父』のように観ていて腹が立つということはありませんでした。
今回のダイニチ特集、ここまでのまとめ。
『盛り場流し唄 新宿の女』 ◎
『反逆のメロディー』 △+
『スパルタ教育 くたばれ親父』××
『おんな牢秘図』 ○
『いちどは行きたい女風呂』 △
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