『ブレードランナー』『傷だらけの山河』『江分利満氏の優雅な生活』
2007 / 11 / 18 ( Sun )
今日はまず『ブレードランナー ファイナル・カット』を観るために新宿バルト9へ。
10時10分からの回で観ようと9時40分に劇場ロビーに着いた途端驚愕。
あまりに長い行列が出来ていてロビーは人であふれ、エレベーターから降りるのもままなりません。
結局チケットを買うのに30分強かかりました。休日にバルト9に行く場合は要注意です。
『ブレードランナー』をやっているシアターに入ると、既に本編が始まっていてスクリーンにはルドガー・ハウアーのクレジットが。
何とかタイレル社がウンヌンという説明が入る前に席に着くことができました。やれやれ。
そして、クレジットが終って映像が出てきてすぐにワタシは感動のあまり心臓が痛くなり、涙が出てきて、号泣しちゃいました。
(実は『ブレードランナー』、テレビでしかみたことがないのです。)
この作品の素晴しさについてワタシがあえて言うまでもありませんが、この劇場の施設が素晴しいこと、この素晴しい劇場で『ブレードランナー』を観ないなんて、一生の損だということを声を大にして言いたいです!
映像、音楽ともにあまりに凄いクォリティでせまってくるのです!
クヮー。
この作品、SF技術が優れていることは勿論でしょうが、カメラの動き、脚本の素晴しさ(痛いほど愛について描いている。最後のルドガー・ハウアーの神々しさよ!)、俳優たちの魅力とどれをとってもパーフェクト。
何より心を動かされたのが音楽の素晴しさです。
82年という安っぽい電子音楽が横行していた音楽不毛の時代に、これだけ壮大な音楽がつくられていたのかということを、バルト9の素晴しい音響設備によって改めて堪能しつくすことができました。
ラストはワタシが以前観たバージョンのもの(ハッピーエンド)と違いました。これはこれでいいのかなと。
とにかく感動しました。観終わった直後は、あまりに感動したので、もう『ブレードランナー』があれば他の映画なんていらないとまで一瞬思ってしまいましたよ。
皆さん、バルト9に『ブレードランナー』を観に行ってください!
11月30日までの限定公開です。
映画の後は、エスカレーターでレストラン・フロアに降りて、中野に本店があるラーメンの「青葉」に並びました。
並んでいたら、英語を話すアジア人のオジサンに話しかけられ、ヒマだったので、どこから来たのか訊いたらシンガポールとのことで、広東語を話せるか訊いたら、話せるというので、ワタシも広東語を話そうかと思ったけれどこっちは広東語すっかり忘れちゃっていて会話がなりたたないだろうと諦めて英語でずっとおしゃべり。
で新宿の青葉は、中野の青葉と同じ味でした。
一口、口に入れた途端「好食!」とオジサンと声に出してしまいました。
美味しかったー。
『ブレードランナー』と一緒に是非「青葉」のラーメンをご賞味ください!
どちらも超オススメです。
フィルムセンターに移動して、東京フィルメックスの山本薩夫特集へ。
『傷だらけの山河』を観ました。
堤康次郎がモデルである主人公を演じる山村聡が妾家に訪れる場面、この妾が笑っちゃうほど次から次と山村聡にサービス(奉仕)するのを丁寧に撮っていたり、また山村聡が出社する場面では社員が皆最敬礼で次々と出迎えたりするの撮っていたりと、山村聡の独裁者ぶりを細かく描写しております。
妾家でも料亭でも山村聡は服を脱ぐ時、脱いだ服をまるで投げるように脱ぎ捨てます。そこまでしなくてもいいだろうというぐらいオーバーに。
そんな暴君を新しい妾・若尾文子は何とアゴで使います。さすが文子タン。
この映画での若尾文子、もっとも美しく映っている作品の一つじゃなないかと思いました。
この映画、いかにも山本薩夫的な手堅い作品でした(必ずしもいい意味で言っているのではありません)。
モデルがモデルなだけにストーリーが面白いのは当然で、ストーリーの面白さを裏切らないという意味で手堅い作品でありました。カメラがどうとか、カットがどうとかそういうこととは別の次元で。
ワタシは面白く観ましたよ。特に映画ではなく小説でもいいような気がしますが。
あ、でも、若尾文子が美しかったので、やっぱりいい作品でした。
さらに新文芸坐に移動し、岡本喜八監督の『江分利満氏の優雅な生活』を鑑賞。
主人公が直木賞をとってからが観ていて結構辛かった。
まるで江分利氏と一緒に飲みに行って家にまで連れて行かれ始発まで付き合わされた若手社員の気分。
たぶん江分利氏に新珠三千代という美人妻がいるのがストーリーやプロットと矛盾していると感じてしまい最初から作品に入り込むことができず、小林桂樹が戦中派のボヤキを怪演するところでついに辛くなってしまったのだと思います。
いや、全体的には楽しめたのですけどね。
積極的に肯定できず、この映画のファンの方々、ゴメンなさい(と何故か謝っておく)。
明日は映画じゃなくてジャズを聴きに行きます。
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江分利満氏
「青葉」のことが書かれてたので、懐かしくなってしまいました。私はいつも飯田橋のお店を利用していました。美味しいですよね。
「江分利満氏」、昔見た際、私もちょっと長い・・・と感じました。決して嫌いではないのですが・・・。
セレブ・リネン様(笑)、今晩は。
> 結局チケットを買うのに30分強かかりました
シネコン・システム最大の弊害ですよネ。小生も先日、「ゾンビ3D」なるトンデモ映画鑑賞の際、前売鑑賞券持参だというのに15分近くも並ばされた挙句、何とか上映開始前に劇場内に滑り込んでみますと、お客さんの数は15人にも満たない・・・
もう少し臨機応変に対応出来ないものなんでしょうかネ。小生同様な体験を何度もしてしまっているので、なるべくシネコン形式の映画館へは足を運ばないようになっちゃておるのですョ。
人によっては、あらかじめ席が決まっているから、時間までブラブラ遊びにいけて、イイ!ってな方もおるようですケド。
Q太郎ママさん
飯田橋の青葉は未体験です。中野の本店から暖簾分けしたお店ですよね。
そちらにも行ってみたいです。
新宿の青葉も、魚介スープがとても美味しかったですよ。
「江分利満氏」、Q太郎ママさんと同じ意見です。
もとは川島雄三が監督する予定だったわけですが、川島雄三だったら、どんな作品に仕上がったのかと思いながら鑑賞しました。
脚本は団地の中からまったく出ない設定だったそうですから、『しとやかな獣』みたいになったのでしょうか…。
埼玉の孤狼さま
庶民のリネンです。
これまでウチから一番近いシネコンは六本木で、といっても遠かったので、新宿にシネコンができ簡単に通えるようになり喜んでいるところなのですが、いつも名画座ばかり通ってシネコンにはあまり行かないものですから、あまり深く考えずにバルト9に行って、あまりの行列に驚いてしまいました。
シネコンに行くなら事前予約に限るようですね。
しかし名画座の値段設定に慣れているので1800円は高いなと前売りを買おうとするのが悪い癖です。
シネコンは音響やスクリーンは素晴らしいし、前の観客の頭がスクリーンに被らないから、結構好きですが、土日なんかはもっと早くチケットを購入できるよう人員を増員してもらいたいものです。
> 『ブレードランナー』があれば他の映画なんていらない
うら若き乙女・リネン様に、ここまで云われて見逃したとあっちゃぁ、オトコが廃る(今更スタる男がお前にあるんかいな、ってなツッコミはナシょ)と、行って来ました、シネコン嫌いの小生が、新宿バルト9!
「影狩り ほえろ大砲」 カントクは、あの舛田利雄氏!
「迷走地図」 勝新太郎さん主演!
「前科 ドス嵐」 3本目は、渡哲也さんだぜ!
の、浅草新劇場・激辛濃厚・野郎映画3連発で、もうヘトヘトお腹一杯の老骨に鞭打って、地下鉄乗り継いで、ああ新宿3丁目まで・・・
新宿バルト9って、新宿東映跡地、に出来た施設だったのですネ。いつのまにやらこんな、おNowな建物が、ねぇ。
ラーメンの「青葉」、小生も堪能しました。う~ん、こりぁ、ウマい!この味でラーメン¥650はお値打ちですネ。手打ちではないようなのに、あの麵のモチモチ感は一体何処からくるのでしょう?素晴らしい!おかげ様にてガソリン満タン、気力体力充分にて本日4本目!『ブレードランナー』、立ち向かうことが出来ました、感謝!
新宿バルト9、リネン様のおっしゃる通り、確かに音響設備等、素晴らしい映画館ですネ。小生以前『ブレードランナー』を鑑賞したのは、今は亡き「松竹セントラル」(ここで『戦場のメリークリスマス』を鑑賞した時、ビートたけしさんの早口台詞が殆ど聞き取れなくって、マイッタ)でしたので、今回また感動を新たにすることが出来ました。重ねて、感謝!!
因みに小生、『ブレードランナー』をスクリーンにて鑑賞するのは、今回で4回目だったりなんかします・・・(馬鹿ですねぇ!)
埼玉の孤狼さん
ただ今劇場からもどって参りました。
浅草新劇場の3本立て、激濃ですねぇ。
舛田監督には2杯連続煮え湯を飲まされた感があり完全に見放そうかと思ったのですが、熱烈な舛田監督ファンの方から、私が観て憤慨しているのは最も出来の悪い2本で、来年ユーロスペースで舛田監督特集があるのでいい作品も見て欲しいと言われましたので、もう少し付き合ってみようと思っているところです。
実は今日も新宿に行き青葉でラーメンを食べてから『ブレードランナー』観てきました。
やっぱりイイです!
これほど神々しい作品はちょっとないなと思いました。
埼玉の孤狼さんは『ブレードランナー』4回目ですか。
私ももう1回バルト9で観ておきたいと考えております。
ブレードランナー
遅ればせながら「ブレードランナー」大阪で見てきました。1980年代に最初の劇場公開版をスクリーンで4,5回見ていますが、改めて全てがすばらしいことを確認しました。こちらのブログで見ていろいろ検索してみなければこのファイナル・カットが劇場公開されていることを知らないままだったでしょう。一生後悔するところでした。感謝。
くまぞうさん
お久しぶりです。
あまり話題にならなかった(らしい)封切り時に劇場でご覧になられていたとは!
さすがです。
当時はあのような未来感は衝撃的だったのではないかと推測いたします。
改めてご覧になられて、素晴しいと感じられる『ブレードランナー』の魅力、時代が経ってもまったく色褪せない魅力は奇跡じゃないかと思う今日この頃です。
東京では上映が延期されましたので、4回目観に行く予定です。
完全にやられてしまいました。
封切り時には見ていないのです。私の記憶では2週間で公開が打ち切られ(1週間かも)ていました。一般受けはしませんでしたが、その後すぐカルトムービーとして名画座でかかるようになり、1回見て打ちのめされリピーターになりました。今回久しぶりに映画館で見られて本当に良かったです。
くまぞうさん、そうでしたか。
本当に「打ちのめされる」という表現がピッタリの作品ですよね。
この作品こそ劇場で観ないとダメだなと思います。
リネン様応援企画?第二弾です(笑)。
で、ですが、小生の浅草新劇場訪問時のスレとカブってしまう、のは偶然なのか・・・?
『江分利満氏の優雅な生活』
え~、恥ずかしながら白状致しますと、小生今回ラピュタで初鑑賞、ようやく果たしました。
>まるで江分利氏と一緒に飲みに行って ~ 若手社員の気分
リネン様が感ぜられた印象、岡本監督自身狙った演出だそうですね。始発に乗るべく早朝駅までトボトボ歩く若手社員と同じような心持ちで、観客には劇場を後にして欲しかったのだそうです。
原作通り、なのかも知れませんが、監督と同世代であろう戦中派の、当時の中堅サラリーマンの姿を描いた作品との事ですけど、ホントこの主人公の描き方ってたら、自虐的というにも、余りもあんまりな感じですよネ。
だって、直木賞受賞のイキオイに任せて、最後には奥様の新珠三千代さんに戦争体験者の女性の手記まで朗読させているのですが、そのクセてめぇのオヤジは戦争成金で、戦後平和になった途端に没落して、息子夫婦宅に居候して食いつないでいるってな有様ですし、主人公自身戦中派を気取ってはいるものの、実際には戦地は経験しておらず、どころか訓練では小銃の弾込めすらロクすっぽ出来なかった落第兵士だった訳ですし。
にしても、またナレーションにて、小林桂樹氏が機関銃トークもかくや、という程喋べくりまくり続けておりましたよネ、全編通して。ま~ったくオトコのくせして!
男は黙ってサッポロ・ビール
ってな名台詞は、この映画を観たコピーライターが、アテツケでひねり出したフレーズなんじゃないか、と小生ニガ笑いしながら鑑賞しておりました。
あとこの作品、監督の代表作に今でこそ数えられているようですが、興行的には散々な成績だったそうですね。
ただし、同時公開された、成瀬巳喜男監督作品
「女の歴史」
が、キャストの豪華さからも、メインディッシュなようなのですけど。
小生、「女の歴史」未見なのですケド、リネン様この作品、ご覧になっておりますよネ。
埼玉の孤狼さま
『江分利満氏の優雅な生活』 のグダグダした感じ、監督が狙ってやったということは頭ではわかっているのですが、それでも観ているときは苦痛で叫び出しそうになりました。
岡本喜八は自分にとっては特に思い入れのない監督で今回のラピュタの特集にもほとんど行きませんでしたが、昨日シネマヴェーラの東宝アクション特集で観た 『地獄の饗宴』はとても良かったです。
私は岡本喜八だと尺の短い作品の方が好きみたいです。100分を超える作品だと結構辛く感じます…。
成瀬巳喜男監督の『女の歴史』はフィルムセンターで観ました。
この時代の成瀬作品の中では地味な作品ですけれども、成瀬ファンにとっては見逃せない作品でした。若い山崎努のギラギラした雰囲気もなかなかでした。
成瀬作品に駄作は1本もない、というのが私の持論です。