シネマヴェーラ2本立てを鑑賞。
『世界最強の格闘技 殺人空手』。大好きな山口和彦監督の76年の作品です。
2日連続で空手映画観ることに。これはワタシに空手を始めろという神のおつげでしょうか?
『殺人空手』、ドキュメントを装ったトンデモ・フィクションでした。
オープニングの東映の「荒磯に波」は初めて見るヴァージョン。
『殺人空手』はスタンダードサイズで、当時「荒磯に波」はシネスコサイズのものしか存在せずこの映画のためにあつらえたものだと思われますが、中島貞夫監督の『にっぽん´69 セックス猟奇地帯』の「荒磯に波」以上にいいかげんなショボイもので、全然荒磯なんて映ってなくて、岩に水がパチャっと鳴った程度のものなんですよ。庭の池ででも撮影できそうな。
「構成 山口和彦・掛札昌祐」とスクリーンに出た瞬間、ワタシはこの映画のウサンクサイ内容を予想することができました。
映画の前半では大塚剛率いるプロ空手集団の試合光景と選手達の特訓や日常の光景を交互に紹介し(当然、特訓のエピソードは嘘八百。そして動物虐待のオンパレード)、後半は大塚剛が香港・マレーシア・ネパールへ戦いの相手を探しに旅を取材する、という2部構成。
前半色々なトンデモ・エピソードで、後半は紀行という構成は『にっぽん´69 セックス猟奇地帯』と同じですね。
まぁ、最初から最後までのインチキなんですけど、前半はかろうじてドキュメントの体裁を保っているのですが、後半になるとそれすらも放棄してまして、ネパールで追っ手に追われる場面なんて、大塚剛と同じ地点で彼を取材しているはずなのに、カメラは大塚剛を撮ったカットの直後に遠くにいる追っ手を背後から(!)映したカットを入れていて、ドキュメントであることを無視したカット割りに、観ていてズルっと言いそうになりましたよ。
で、大塚剛はネパールで戦いの末相手を殺し、その相手の死体が火葬される様子(頭蓋骨とかが焼けていくのを丁寧に撮影)を大塚剛が見届けるというトンデモ状態で旅は終わります。
あ、それから香港での武者修行篇で「カンフーの一派である道風山」に大塚剛が訪問し何とか入山した途端一派が襲ってくるというシーンがあるのですが、そんな一派聞いたことないよ、ていうか香港の「道風山」ってキリスト教の寺院だろ。こんなところで寺の名前までつかってロケすな、罰当たりめ(
参照)。
この映画の空手に対する考え方がハッキリと表れていたのが、劇中の「空手に精神論は無用である」というナレーションです。
昨日観た『黒帯』は完全なフィクションでありながら、真の空手家が演じ、「空手に先手無し。先に相手を攻撃してはならない」を説く空手家の精神がテーマであり、真の空手を観ることが出来る作品であるのと対称的に、『殺人空手』は一応ドキュメントでありながら(明らかなフェイクなんですが)ミセモノ、キワモノ、ウサンクサイモノでしかありません。
『殺人空手』、70年代のウサンクサイ映画がお好きな方には自信を持ってオススメできる突っ込みどころ満載のトンデモ映画ですよ。
東映がこの映画がつくった経緯についても、きっと色々な筋との色々な背景があったんだろうなぁと想像できることでしょう。
もう1本の『力道山の鉄腕巨人』、子供向けの映画で、ほぼ全編子供の夢の中のお話で、激しく観客を眠りに誘う作品。
客席のあちこちで寝息が聞こえました。
91分の映画が120分ぐらいに感じましたよ。
力道山、プロレスラーだけあって、ボディアクションでの演技がうまかったです。台詞はダメですけど。
こましゃくれた小さな女の子役で松島トモ子、博士の娘でファッションモデル役で安西郷子が出ておりました(原田和典さんが「映画のポケット」でイイとおっしゃっていた耳はあれかぁ。後の三橋達也夫人です)。
あと、立つことができなかった小児麻痺の少年が最後立って力道山に向かって歩くんですが、『アルプスの少女ハイジ』の感動のクララのシーンの元ネタはここかと思いました(ウソ)。
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