本日、小林桂樹さんがトークショーをされるということで、新文芸坐に行ってまいりました。
9時45分からという上映時間にもかかわらず場内満席です。
1本目は『首』。
先日シネマヴェーラで観たばかり。
今日観てもやはり面白い。どんどん引き込まれます。
この作品の見所は、高圧的な検事役を迫力満点に演じた神山繁と、東大の小遣いさん役の大久保正信の超リアルな演技でしょう(首を切る人ね。脚本家のNさん絶賛。確かに長塚圭史によく似てます。)
2本目は堀川弘通監督の『白と黒』。
『首』では橋本忍の脚本が良かったのですが、この作品ではダメ。
小林桂樹は東京地検の検事役。
大物弁護士・宗方(千田是也)の妻(淡島千景)が、情交を結んでいる若手弁護士(仲代達矢)に殺害されるところから映画は始まります。
警察・検察の見込み捜査の結果、仲代達矢ではなく宗方家に強盗に入った前科4犯の男(井川比佐志)が強盗殺人で逮捕・送検されます。
そして意外にも、井川比佐志の弁護人に井川に妻を殺された(と検察が告訴している)千田是也と、実は千田の妻の首を絞めた張本人である仲代達矢が名乗り出て弁護します。千田是也は死刑廃止運動に長年たずさわっており、仲代達矢はその下で働いている弁護士だからです。
強盗殺人の被告、被告に自分の妻を殺されたと思っている死刑廃止論者の弁護人、妻の情夫で妻を殺したことをひた隠しにしているもう一人の弁護人の3人という特異かつ複雑な人間関係の心の葛藤に焦点をあてるとさぞかし面白い映画になりそうなのですが、それについては脚本はスルーでした。
小林桂樹は真犯人は井川ではなく仲代ではないかと考えるようになり、公判中にもかかわらず担当刑事の西村晃と捜査を続けます。その捜査の過程を途中までは丁寧に描かいているのですが、突然せきたてるように、小林桂樹は仲代達矢を宿に呼び、決定的な証拠もないまま2時間ドラマのラストのように自分の推理をまくしたてあっという間に仲代達矢や自白させます。映画のクライマックスのはずなのに、これは変だ、映画の尺がなくなったのか?といぶかしく思った直後、映画が二転三転します。ああ、三転するから突然やっつけ仕事みたいに自白に持っていったのだとわかるのですが、この二転三転がおかしいのです。
こんな映画の最後になってから、これまで全然伏線がない新たな事実を突然取って付けた様に無理矢理引っ付けて三転させるというのは脚本としてどうなのよ、と。
「バカな男が二人いました」で終られても、こんな脚本納得できないよ。
あと、痔に異常なまでにこだわっているのは橋本忍ワールドなのでしょうか?
不治の病のように痔に苦しむ小林桂樹の姿が相当ヘンです。
それとですね、公判中の事件の担当検事と弁護士が酒席をともにすることはあり得ないですし(しかもキャバレーで)、その酒席で事件について話すというは更にあり得ないと思いますよ。
そしてお待ちかね小林桂樹さんのトークショー。
桂樹さん、ちょっと前に流れていた携帯電話のCMの時での姿に比べて大変お痩せになられていてビックリいたしました。
しかし足取りはしっかりされていて、声は小林桂樹そのもの。
ユーモアのセンスにあふれていて、お話を聞きながら笑いっぱなしでした。
共演した俳優たちとの思い出やエピソードを披露されておりました。
話に出たのは、原節子(撮影所の人たちが見とれるほど大変美しかった)、高峰秀子(子役の頃から見ていたので共演するとは思わなかった)、八千草薫(かわいらしい人)、越路吹雪(サインは棒1本書くだけ)、仲代達矢(端役のときから目立っていた)、中井貴一(佐田啓二のことを思い出して車の中で居眠りをしている姿をみて起こしてしまった)、三船敏郎(本物の銀幕のスター。もっと現代劇を見たかった)、三木のり平(セリフを覚えずカンペを置いていた)、森繁久彌(女性が好き)、加東大介(亡くなる前に自分の葬式を頼むと言われた。亡くなったとき葬儀委員長をした)、渥美清(寅さん以外の役を見たかった)といったところでしょうか。
桂樹さん、頭の回転が速くてユーモアのセンスがあり、お話とても面白かったです。
日本映画の生き証人である小林桂樹さんのお話を伺うことが出来て本当に良かった。



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