シネマヴェーラの最初の11時の回に行ったところ、観客があまりに少なくて衝撃を受けました。
今日はアルトマンと須川栄三の魅力的な2本立てプログラムだというのに!
シネマヴェーラの客は異形ファンばかりなのかと憤りを感じましたよ。
1本目、ロバート・アルトマン監督『バレエ・カンパニー』。
公開のとき劇場で流れていてた予告編がチェット・ベイカーの「マイ・ファニー・バレンタイン」が流れるリリカルなもので、気になっていたものの結局見逃したので先日DVDを購入いたしました。がまだ見ていないので、この作品を見るのは今日が初めて。
この夏、ロバート・アルトマン特集でまとまった本数の作品を観て、アルトマンという監督は人を一歩も二歩も三歩も退いたところから見ていて皮肉屋で、特に女性に意地悪だなという印象を受けたのですが、『バレエ・カンパニー』は違ってました。
退いて見てはいるのですが、一歩程度。
皮肉なところはなく、とても暖かく見守って撮った群像劇という感じ。
恋に落ちて一夜をともにしたネーヴ・キャンベルとジェームズ・フランコが朝キッチンでオムレツをつくる場面がとてもロマンチックで、アルトマンがこういう風に撮るというのは想定外でした。
私がこれまで観た70年代のアルトマン作品と違い、この作品では人を肯定的な視点で撮りロマンチックに仕上げたというのはアルトマンが年齢を重ねて柔らかくなったためなのか、それともバレエ・ダンサーに対する敬意からなのか?
全編様々の場面で色々なミュージシャンによる「マイ・ファニー・バレンタイン」が流れるのですが(この曲が使われるのだから映画がリリカルになるのは当然かも)、一番最初に流れる嵐の公園でネーヴ・キャンベルが踊る時に演奏されたヴァージョンが素晴しかった。
次に須川栄三監督の『君も出世ができる』。
この作品の上映時になってお客さんが結構入ってきて一安心。
『君も出世ができる』、観ていて「日本のミュージカル映画はこうじゃなくっちゃ」と膝を叩きたくなる映画でした。観ていてゴキゲンになりましたよ。
この作品では、役者が歌って踊ることが必然と観客に思せるつくりなのです。
数日前観た『踊りたい夜』が洋物のミュージカルを真似てそのままやってしまい失敗してしまっているのと対称的に、『君も出世ができる』はミュージカルを日本人の感覚でしっかり消化し独自のものを作り出していると言えるでしょう。
歌詞の音楽へののせ方が絶妙。
エライよ、黛敏郎&谷川俊太郎。
高島忠男が空港で空をバックに「タクラマカン~♪」と歌い出すのには、タクラマカンなんて単語で始まる歌がこの世にあるのかと意表を付かれ、物語が進み「タクラマカン~♪」と「アメリ~カではッ♪」の歌が交差して一つになるところでヤラレタと思い、いやぁ全編ヤラれっ放しでした。
東京オリンピック前夜、高度経済成長期の未来が明るいと日本人が信じていた時代の雰囲気があふれていて、モダニズム建築風のセットやインテリアがいっぱい出てくるのも魅力です。
出演している俳優たちもみな素晴しい。特に雪村いずみがイイ。
『君も出世ができる』、傑作でした。
空腹で頭がボーっとしてきたので道玄坂の「ひげちょう魯肉飯」で野菜と魯肉飯のセットを食べ、池袋に移動し西武百貨店でやっている「ロバート・サブダ&マシュー・ラインハート POP-UP絵本ミュージアム」へ。
すごい混雑。
ビッグサイズの絵本が自動で開いて仕掛けが飛び出すのを見ていくのですが、子供に見せたいですねぇ。残念ながら私には子供いませんが。
数年前に買った洋書版「不思議の国のアリス」を本棚から取り出してまた見なきゃと思いましたよ。
さらに阿佐ヶ谷に移動しラピュタでまず神代辰巳監督の『四畳半襖の裏張り』を鑑賞。
この作品はビデオで見たことはありますが、スクリーンで観るのは初めて。
70年代前半ロマンポルノ(つまり初期)独特の気迫がよく出ている作品だなと。
やっぱり絵沢萌子、最高。
続けてレイトの岸田森特集、藤田敏八監督の『修羅雪姫 怨み恋歌』を鑑賞。
この作品は2004年の新文芸坐のオールナイト「『キル・ビル』上映記念 梶芽衣子特集」で一度観ていて、その時は四谷の貧民窟について知りたくなり(都心の四谷にかつてスラムがあったことを知らなかった)映画の後にちくま学芸文庫から出ている「東京の下層社会」という本を買ったことがありました。
数年ぶりに四谷・鮫河橋の貧民窟(の再現)を確認。
修羅雪が死刑執行される前に岸田森の部下に助け出される場面の霧が素晴しいなと改めて思いました。
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