今日も、フィルムセンターで成瀬巳喜男の無声映画「限りなき舗道」を観る。
本日のピアノ伴奏は柳下美恵さん。
他愛ない都会暮らしの貧しい若者の日々を描いた映画かと思って観ていると
主人公の女性が上流階級の家に嫁いだ途端、
身分違いの結婚をしたことによる不幸で重苦しい物語に方向転換し、
びっくりするような結末を迎える作品。
何よりこの作品の見ものは、1934年当時の銀座の街並みや風俗が見られること。
モダンで優雅。
主人公の女性がつとめるカフェではホットケーキを出していて、
ホットケーキの上にまん丸のバターがのっていたりするのだ。
今回のピアノ伴奏も映像によく合い、音楽が強調されすぎもせずよかった。
が、途中客どおしがトラブルになり、
ピアノの生演奏がされている最中なのに、怒鳴りあう声が場内に響いてしまい、
演奏家の方には、気の毒だった。
この3年ほどで、様々なものを犠牲にしつつ
成瀬巳喜男作品を劇場で約60本を見たことになる。
現存する作品でまだ観てないのは無声映画の「君と別れて」のみ。
(今回フィルムセンターで上映していたが、用があって行けなかったのだ)
ここまで成瀬を見尽くして思うのは、
「成瀬に駄作がない!」ということ。
たったの一本もない、と断言できる。
サイレントも素晴らしく、戦前のトーキーも素晴らしく、
戦後の日本映画最盛期の作品が特に素晴らしく、
晩年の作品もまた素晴らしい。
好きな一本を選ぶとしたら悩むところだが遺作の「乱れ雲」かなぁ。
戦前の山田五十鈴が出ている芸道もの2本も素晴らしいし、
トーキー初期の「噂の娘」「妻よ薔薇のやうに」も傑作だし、
そうそう「めし」「晩菊」もはずせない。
成瀬よ、素晴らしい作品をたくさんつくってくれて有難う。
スポンサーサイト