本日はラピュタで3本鑑賞。
まずモーニングで中平康監督の『紅の翼』。
ワタクシ、石原裕次郎には興味がありません。
『紅の翼』、結構痛い映画だなぁ。
特に音楽の付け方が酷い。佐藤勝、馬渡誠一の音楽そのものが酷いのではなく、映像に音楽を合わせるセンスの問題。
例えば、西村晃が中原早苗の父親に捜索が甘い!と責められ、西村晃が「みんなジリジリと夜が明けるのを待っているんです!」と言った後に、捜索の飛行機や船が映る場面。それから、裕次郎の妹役の芦川いづみが「兄さんは正義感が強い人なんです」といったようなことを皆の前で演説する場面。
音楽の付け方があまりに酷いんで耳を覆いたくなりました。
あ、芦川いづみのAラインの衣装はとても良かったですね。
そしてロマンポルノ特集。
今日は小沼勝監督がご来場です。
上映作品は『昼下りの情事 古都曼陀羅』。
この作品久しぶりに観ました。以前観たときよりも面白く感じました。
山科ゆりの透けるような白い肌に血のように真っ赤な口紅とマニュキアというのが、とにかく印象的でありました。
上映後、小沼勝監督のトークショー。聞き手は高崎俊夫さん。
まず監督から観客にご挨拶。
『昼下りの情事 古都曼陀羅』は今日35年ぶりに観たけれども、宮下順子のワキ毛、分量といい柔らかさといい素晴しかった。当時、宮下順子、白川和子といったピンク映画出身の女優はワキ毛を生やしている人が多かった。
が、ワキ毛はDVDでテレビ・モニターで見ても、ちゃんと映らない。
自分は神代辰巳監督の『四畳半襖の裏張り』が好きで、ジェネオンからDVDが出たとき社員価格で買ったのだが、DVDからは、姫田真佐久という大カメラマンが映した素晴しいものが殆ど伝わらない。
今日、ラピュタという劇場に観に来てくださった皆さん、どうもありがとう。本当に嬉しい。
以上のように、小沼監督、観客に挨拶されてました。

『昼下りの情事 古都曼陀羅』について、セットを借りて、松井旅館という旅館を借りて撮影した。
演出料は当時5~6万円。ただただ女性をきれいに撮ればいいと思った。
と、ここで監督、思い出したように、自分はテレビに対するコンプレックスがある。神代監督、加藤彰監督はロマンポルノがなくてもそのまま監督になれただろうが、自分はそうではない、と。
『昼下りの情事 古都曼陀羅』の撮影時に借りた松井旅館はとても広い旅館で、初めて監督として大切にされた気がした。
高崎さんが、石仏など京都の名所での濡れ場の撮影について質問されると、監督、撮影許可は出ないけれど、見学許可は下りた。で、観光客が少ない時間帯に人止めをして、俳優には前張りさせて、いつでも出られるように裸の上にコートを羽織らせて、いつでも出られるようにして、撮影した。
あれはヤリまくって、おさらばする場面で、そんなに凝るところでもないから、と。
前田米造カメラマンは小沼監督と同世代で好きなように撮ってもらった。

この作品での風間杜夫について、とても平凡だ。平凡を演じている、と。平凡を演じることはとても難しい。殺し演技などは簡単だけれども。
石段でケンカをするシーンがあったが、そこに学生時代の大森一樹が出ていた。松井旅館に大森一樹がいたので、何でもいいから出演させた。ああいう曖昧なケンカは難しい。旅館でリハーサルをして撮った。
石仏寺について。もともと台本に石仏寺でと設定されていて、ロケ地を探したがなかなか見つからなく、やっと見つかった。
ロマンポルノの撮影だというと許可が出ないので、ロマンポルノじゃないと偽って住職に一升瓶を持っていてお願いした。が、住職が冥土の土産に撮影を見たいと言い出しやってきたので、あわてて皆でウソの撮影をした。住職が見学しているときは、照明が監督役をした。
山科ゆりについて。
女優には宮下順子や白川和子のように、気持ちが表に出やすいタイプもいるが、山科ゆりは何を考えているのかわからないタイプだ。
ピンポンのシーンは、シナリオにはなかった。山科ゆりだから、ああいうシーンが合った。
中島丈博は藤田敏八がシナリオを変えたとき、食堂に「シナリオを改悪した」と張り紙するほどのファイターだった。それに対して当時小沼監督はペーペーだった。
キスしたことが無く、いびつであった女性・山科ゆりが、平凡な風間に惚れ(ここでまた監督、平凡な演技は難しいと風間杜夫を評価)、逆戻りしていったということだ、と。
山科ゆりがきれいに映ってますね、訊かれると、カメラマンと照明がよければ女性はきれいに撮れるのだ、と。
劇中の雨は本当に降ったものだそう。
責め絵はもともと台本にあった。縛りがヌルいという指摘を受けるかなとも思ったが、そういう映画じゃないから、と。
当時ににっかつについて、台本の監督の名前の部分が切り取られているものがまわってきたけど、それは他の監督が断ったものだと加藤彰監督が教えてくれた。
自分は何でも撮らせてくれれば嬉しいという気持ちだった。
衣装については、裸だからこそ、衣装合わせが大切なのだ、と。

そして質疑応答。
最初の女性の方が、今日初めてロマンポルノを観たとかで、自分の感想をずーっと話していたけど内容は聞こえず。
次に男性の方が、『白い娼婦 花芯のたかまり』について、ロケ地が自分の家の近所のように見えたけれども、どこだったのか具体的に教えてください、○○のシーンのロケ地はどこですか?と質問。
監督、そのシーンのロケ地は覚えてない、と。
微妙な感じになったので、普通の質問をしなきゃという義務感にかられ、ワタクシ、小沼監督の映画のルーツ、お好きな作品について質問いたしました。
高校生のとき、まわりは皆おたくで、500本観ている人とかいた。
二番館、三番館、名画座がたくさんあり、安く映画を観ることができた。
特にどういう作品が好きというのはなかったけれども、映画館にいるのが幸せだった。
あ、中学生のとき観た『巴里のアメリカ人』は好きだったねと。
中学のときは小樽にいて、街に映画館が25~26軒あった。友達のおばあさんがやっていた劇場で『巴里のアメリカ人』を観た、と。
高崎さんが、マックス・オフュルスの『歴史は女で作られる』がお好きだとおっしゃってましたよね、と話を向けられると、『歴史は女で作られる』はお好きだと。
高2の時、親友と『怪僧ラスプーチン』を女性の裸につられて観に行った。
親友は『歴史は女で作られる』よりも『怪僧ラスプーチン』の方が上だと言ったので、絶交するまでの喧嘩になった。『ラスプーチン』の方が好きだというならそれは勝手だが、何故上下を付ける、客は何を楽しみにしているか人それぞれなんだからと大喧嘩し絶交に至った、と。
以前、好きなフランス映画について1番『フランチ・カンカン』、2番『歴史は女で作られる』、3番『血とバラ』(ロジェ・ヴァディム)と言ったら、フランス人には1番と2番は解るが3番は解らないと言われた、と。(青文字部分、imaponさんからの情報です。ありがとうございます。)
ここでトークショー終了。
場内拍手。
ワタクシ、『色情旅行 香港慕情』のDVDジャケットにサインしていただきました。
本日3本目、長谷部安春監督の『犯す!』 を鑑賞。
これは感心したなぁ。
ヒロイン・八城夏子が蟹江敬三にエレベーターで犯されて、呆然とマンションの自室に戻り、風呂場で洗濯をし、シャワーを浴びるまでの丁寧な描写が素晴しくて、観ていて息を呑みました。
全体的に丹念で唸りっぱなし。
素晴しかったです。
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親友が「歴史は女で作られる」より「怪僧ラスプーチン」の方が上だと言ったことにより絶交するまでの喧嘩になったという話でしたね。「ラスプーチン」の方が好きだというならそれは勝手だが、何故上下を付ける、客は何を楽しみにしているか人それぞれなんだからと大喧嘩、絶交に至ったとおっしゃってました。監督の映画に対する気持ちが伝わる話でしたね。
フランス映画で好きな作品1番、2番、3番に関してはフランス人には1番と2番は解るが3番は解らないと言われたとおっしゃっていましたよ。日本でまったく評価されなかった「歴史は女で作られる」もちゃんとフランスでは認められていたんですという事を言いたかったようでした。
訂正させていただきましたがリネンさんのトークショー記事はとても詳しく内容がわかり助かります。
「昼下がりの情事 古都曼陀羅」1973年 日活 監督:小沼勝
ラピュタ阿佐ヶ谷 「愛と官能のプログラム・ピクチュア 日活ロマンポルノ名作選」より
上映後、小沼監督のトークショー。
「古都京都のしっとりとした情趣を生かしながら、日本画家の養女となったヒロイン Mr.Bation【2008/04/20 09:45】