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華麗なる自己満足の世界。渡辺文樹上映会in杉並

10月27日昼、自宅マンションを出て1分ぐらいのところにある電柱に、『天皇伝説』のポスターに遭遇。
こんな住宅地にまで、と驚いて見ると、ウチの近場で次々上映されると告知されると告知されるとある。
これは行かねば!横浜まで行かなくて良かった。
渡辺文樹

で、杉並区の勤労福祉会館(荻窪の西荻窪の間ぐらい、青梅街道沿いにある)での上映会当日となりました。
会場に行くのに荻窪駅北口からバスに乗りました。
青梅街道を西に走るバスからボケーっと車窓を眺めていると、荻窪消防署を過ぎたあたりで、突然赤色灯のピーカピーカが目に入りました。
これは!と思い、外を良く見ると、装甲車など警察車両が数台に制服警官が数名。長い木の棒を持って角で立っている警官も。
「あ、最寄のバス停まできたな」とわかり、下車。
渡辺文樹

会場前には装甲車が。入り口にも制服警官と公安らしきスーツ姿の男が立っています。
通りを歩いているオバサンに、何故こんなに警察が来ているのですか?と訊かれてました。
「映画の上映会です」と答えたのですが、オバサンに「なぜこんなに警察が来ているのですか?」とまた訊かれました。
公安が目の前にいるので、小心者のワタシは思わず、「思想的にちょっと問題にある~」と答えてしまいました。

『ノモンハン』の上映開始は18時半。
ワタシは18時過ぎに到着しましたが、すでにお客さんが並んでチケットを買っています。
今日も監督の奥さんがチケットを販売しておりました。
チケットを売っている左横の壁際にいかにも公安という感じの目つきの鋭い男が、客を一人一人チェックしてます。
この公安と目が合ったとき、ワタクシ思わずニヤついてしまいましたが、この男、まったく笑いもせずにらみ付けてきます。イヤーン。

勤労福祉会館という建物の中に初めて入りましたが、結構広いですね。
後方、真ん中、映写機の前に腰を下ろしました。
今日の会場の客層は、映画ファンという感じの人から、近所のオジイサン、オバアサンまで多種多様。

ブザーがなり、渡辺文樹監督の前フリ開始。
今日は杉並区が警察を呼んだので、警察が来ていて物々しいですが、ご勘弁を。この前の横浜では会場内に右翼が入ってきたけど、今日はいないみたいですね。『ノモンハン』は自分が以前から調べていた出来事で…
云々といった内容を監督が話していたのですが、『天皇伝説』について、「アクション映画です」と言ったのに驚いてしまいました。
『天皇伝説』、アクションなんだ。
『ノモンハン』、上映時間140分(ぐらい)です、とアナンスされた途端、ワタクシ思わず「長い!」と口走ってしまいました。
昨日、加藤泰の『花と龍』が168分なので長いの疲れるーと思い、行かなかったのに、渡辺文樹でこの上映時間かぁ(しかも、この後もう1本ある)。

そして『ノモンハン』上映スタート。
『御巣鷹山』と違ってちゃんと、音声と映像がひっついてました(アフレコらしく、口の動きとセリフがズレているのが気にならなくはないけど、まぁOK)。
冒頭、城壁の前で制服を着た文樹とオトコが話していて、女も映るのだけれど、この時点で何が何だかわかりません。
その後、田舎のおうちに話は移り、何人か出てきて何かを話しているのだけれど、この時点でも、何が起きているのか、どういう人物関係なのかワタシにはサッパリわかりません。
この作品でも『御巣鷹山』と同じような極端な顔のアップの連続(顔のアップというよりも目のアップ)、背景が真っ暗な中、文樹が座禅している姿、もしくは背景が真っ暗中現れる文樹の顔アップ(文樹の顔だけ光が当たっていてまるでカラヴァッジョの絵画のよう)、極端な下からのあおりショット、などの連続に、何でこういう撮り方するんだろう?と考えつつ、意味不明なストーリーを理解すべく必死に観ておりました。
この映画は登場人物が多く、それなりに演技が出来る出演者が多数出演していてるし、東久邇宮稔彦の部屋など、どこかでそれなりに見える場所でロケしているを観て、意外に金かかっているなぁ、など思いながら観ているうちに、最初は謎だらけだったストーリーがわかり、物語にドンドン引き込まれ、気が付いたら面白く観ていたのでした。
これは渡辺文樹版「藪の中」とでした。

驚いたことに、終盤、戦争のシーンで火薬を使って爆破させたり、軍隊が軍服を着て装備した状態で、一団で銃を撃ったり(いつものオジイさんたちの集団ではなく、若者でまとまった数の一団)、戦車が出てきたりで、金のかかったつくりにワタシには観えました。

よくわからんうちに、引き込まれる映画でありました。

この映画に出てくる東久邇宮稔彦王という人、戦後初の総理大臣で、波乱万丈の人生を送ったということで知られてますが(昔子供の頃、月刊現代でこの人の伝記を読んだことある)、ああいう最後だったとは知らなかったなぁ。

ちなみに主演女優は中越典子、その妹は鈴木砂羽に似ておりました。

次に『天皇伝説』。
8時半からの上映なのでお客さんが増えて、結構場内お客さんでいっぱいです。
監督の前フリで、またも「これはアクション映画で」という説明がなされました。
ストーリーはフィクションだけれども、映画に出てくる出来事は事実である、とのこと。

冒頭、『エロス+虐殺』みたいな劇的なシーンでスタート。
主人公演じる文樹の身の上の説明が文樹のナレーションで始まります。文樹は妻を殺され、無実の身にもかかわらず逮捕され、手錠をしたまま警察から逃亡。
手に手錠がかかった文樹が、工場で電動ノコギリで手錠をはずし(このシーンが何だか笑え、前の席の女性二人は笑い転げてた)、施設に保護されていた娘(監督のお子さん)を奪い返し、文樹は真相を求めて逃亡の旅へ。
この映画、『逃亡者』みたいです。
あと、子供の頃夜中のテレビで観たロープウェイを舞台にしたパニック映画(『恐怖のロープウェイ脱出』だったか?)みたいでもありました。
ロープウェイの他にも、子供を奪った男を追跡するのに男が乗りこんだ電車と平行して文樹がトラックを運転したり、墜落するセスナから文樹がパラシュートで脱出するとか、不自然なカットつなぎを駆使しつつ文樹大活躍。
巨体で走ったり戦ったりアクションする文樹を観て、こりゃ大神源太の映画と同じだな、とずーっと考えてました。
華麗なる自己満足の世界。
大神源太はマッチョである意味俳優っぽいルックスだから、アクションを演じるのも自然で様になっていたのですが、オッサンの文樹が大活躍するのはひたすら不自然で違和感あって目新しい光景。
前の席の女性二人は華麗なアクションにずっと笑い転げていて、ワタシは安易に笑わないぞと決めてガマンしていたのですが、あまりにヘンテコなところは抵抗むなしく思わずブっと吹き出しまうのでした。

『天皇伝説』は『ノモンハン』の妹的作品とのことで、ストーリーにノモンハン事件も絡んでくるので、『ノモンハン』で使われていた先頭シーンが何度も出てきておりました。

なお、この作品の約半分は文樹史観による紙芝居が挟み込まれていて、アクション映画の途中で紙芝居が始まり、皇族や政治家などの写真が次々映し出される中、「橋本龍太郎は天皇の血をひいている」とか「明治天皇は大室という男が入れ替わっている」「美智子妃は家来と浮気をし、皇太子と秋篠宮を生んだ。ただしサーヤは現天皇との子供」「高円宮は殺された」などなどなど、文樹が文樹史観に基づく驚嘆の事実を延々ナレーションします。
ワタシの隣に座っていた老夫婦は、それを聞きながら、ヘーエ、と関心したようにうなづいているので、ワタシ、心配になってしまいました。

これまで少なくない数の映画を観てきましたが、アクションとトンデモ史観に基づく紙芝居が融合した映画は始めて観ました。

『天皇伝説』、とりあえず文樹史観による言いたいところはわかりましたが、それを映画で表現するのに、なぜアクションという体裁をとったのかが全く不明の、超強引なカットつなぎで文樹が巨体を揺らしながら派手な(?)アクションを見せる怪作でありました。
渡辺文樹

会場を出て、荻窪行きのバス停へ。
先ほど、文樹史観の紙芝居を観ながら、ヘーエと感心していた老夫婦たちと一緒にバスに乗り駅に向かいました。
バスの車窓から、会場から出てきた眼光鋭い公安スーツ5人組が荻窪警察署方向に歩いていくのが見えました。
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♀。会社員。独身。
東京23区在住。
深煎りコーヒーが好き。
成瀬巳喜男監督作品56本を
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