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渡辺邦男監督作品『忠臣蔵』

就業後、フィルムセンターの「スターと監督 長谷川一夫と衣笠貞之助」特集へ。
この特集に行くのは今回初めて。
観たのは渡辺邦男監督の『忠臣蔵』。1958年の大映オールスター映画です。

正直に申しますが、ワタクシ、「忠臣蔵」がどんなオハナシなのか全然知りません。
多くの日本人がこのオハナシが大好きで、何度もドラマや映画になるということは知っておりますけど。
ウチの両親は時代劇をまったく観なかったので、家のテレビで「忠臣蔵」が流れることも皆無でしたし、その影響でワタシも時代劇を観ないものですから(映画だとたまに観ますが)、「忠臣蔵」のストーリーを知ることなく今に至ったわけです。
今回フィルムセンターに『忠臣蔵』を観に行ったのは、ひいきの若尾文子が出ているというのもありますが、、「忠臣蔵」なるオハナシがどんなものなのか知っておきたかったからです。
ですから、他の「忠臣蔵」映画と比較してこの作品の出来がどうかということはワタシにはわからないので、あくまで一つの映画として観た感想です。

冒頭、一大事を知らせる書状を持った急使が江戸から赤穂に向かう場面、交代した飛脚がわざとらしくバタっと倒れる演出とか、画面にバーンと「赤穂へ」と文字を出したりするのは、稚拙で工夫がなく、ダサいなぁと。
で、市川雷蔵が出てくるのですが、この雷蔵が何者なのか、何をしゃべっているのか、「忠臣蔵」がわかってないワタシには殆ど理解できなかったのですが、雷蔵が滝沢修から陰湿なイジメを受けているということはわかりましたぞ。
で、雷蔵は滝沢修に斬りかかるのですが、しばらく観ていると、段々と筋がわかってきました。
仇討ちの話ですね。
聞いたことがない単語や人の名前がたまに出てくるので、時々わけがわからなくなりましたが(例えば、「浅野大学」。浅野大学って何?もの?場所?人の名前?てな具合に)、慣れると理解できてくるものですね。
最後まで観たら、「忠臣蔵」の大まかな筋がわかりましたよ。ヤッター。

で、この映画、長谷川一夫や市川雷蔵などの大芝居は見ものですし、浅野内匠頭の妻を演じた山本富士子の美しさや花魁役の木暮実千代のお色気も魅力的ですし、大石内蔵助良雄が近衛某と名前を偽って旅をしていたら近衛某本人と出くわす場面で(「大石東下り」と言うらしい)、長谷川一夫が中村鴈治郎に「近衛の通行手形」を見せるところで、観ていて思わずオオっと声をあげてしまったりしましたし、次から次とと魅力的なエピソードが繰広げられ、なるほど日本人が「忠臣蔵」に惹かれるのもわかるなと納得したりしたのですが、如何せんカメラが終始テキトーで、観ていてしんどかった
時代劇なので、見せ場でカメラが人物に向けてバーンとズーム・アップする手法をとるのは、まぁわかるのですが、特に盛り上がってないシーンでも、次から次とズームの応酬が続くので、ズームの多用が苦手なワタシは段々辛くなってきて、正直辟易いたしました。
それに、終始カメラがガタガタと落ち着きなく動き続け、観ていてかなりイライラ。
カットを割らずに、映したい目標物が変わる度にグラグラとカメラを動かしてるのですが、これも早撮りのためですか?
大掛かりな立派なセットで撮影してるんだから、もうちょっとデンと固定して撮影したらどうなんでしょ?

大好きな若尾文子は大工の娘・お鈴を演じておりました。鶴田浩二に惚れる役で、まだあどけなさが残っていて、可愛らしかったです。

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白鳥あかねトークショー、『雨のアムステルダム』『濡れた欲情 特出し21人』『(秘)ハネムーン 暴行列車』

まずはシネマアートンへ。「ショーケンが好きだ!」特集。
蔵原惟繕特集の『雨のアムステルダム』。
久々に相当酷い映画を観ました。
曇りのアムステルダムを撮った俯瞰を多用したカメラは、「兼高かおる世界の旅」みたいでなかなか美しいんですが(カメラ・岡崎宏三)、あまりに脚本が酷い。
要は、ショーケンが金と好きな女(岸恵子)と自由を手に入れるためにホモの金持ち(アラン・キュニー)にオカマを掘られるというオハナシ。
映画のクライマックスは、ショーケンがお城でアラン・キュニーにヤられるシーンで、ショーケンがウっとなっている目の前に岸恵子がいて、その光景に耐えかねた岸恵子がああなって、で、ショーケンがこうなって、と書いているだけこちらの頭が悪くなりそうな展開。
この時流れる音楽はワーグナーのタホンホイザー序曲。悪い冗談としか思えません。
最後、撃たれたショーケンの身体がザーっと凍った川の上を滑っていくのは、良かったですけれどもね。

ラピュタに移動。
本日は白鳥あかねさんのトークショーがあるということもあって、満員打ち止めになっておりました。
神代辰巳監督の『濡れた欲情 特出し21人』を鑑賞。
何だか感動してしまいました。
この作品も神代辰巳&姫田真佐久の組み合わせで、登場人物が歌を口ずさんだり、放浪したりするいつものパターンなわけですけど、神代作品の中でももっとも好きだと思いました。前向きでバイタリティがあって女性たちが魅力的で。
芹明香が良すぎ。片桐夕子も良かった(カラダ、最高)。
最初、芹明香が回転ベッドの上で古川義範にコマされているシーンのワンシーン・ワンショットも最高に面白いし、ストリップ一座が雑魚寝している場面、最初セックスしている一組のカップルが映り、カメラが退いていって次々カップルが映り、他の女に手を出そうとしているヒモが女房に見つかってモメている光景の奥で最初のカップルがセックスをし続けているのが映る長廻しも最高。
絵沢萠子、登場シーンは少ないのですが、赤ん坊を抱きながら夫を追いかけ疾走するカットはロッセリーニか!と思いきや、その直後に絵沢萠子が逞しい身体でストリップしている逞しいシーンにつながり、ヤラれたと思いました。
劇中いっぱい流れる歌のセンスも最高。
そうそう。冒頭、心斎橋で財布を拾ったというシーンは吉祥寺で撮影されてましたね。

そして白鳥あかねさんのトークショー。聞き手は高崎俊夫さん。
白鳥あかねさん

久しぶりに『濡れた欲情 特出し21人』を観たけれど、神代作品のなかで最も好きな作品。
信州・上山田温泉でロケをした。
劇中のセリフ、「ママさんは4・5つ劇場を持って、億の金を貯めた」というのは本当の話。
ロック座のママさんは神代監督のファンで、神代監督のためなら何でもすると言った。『濡れた欲情 特出し21人』はロック座のママさんの企画。
殆どが信州ロケで、スタッフは安宿に泊った。ママさんは上山田温泉に劇場のほか、喫茶店も持っていて、喫茶店の上に大広間があって、そこで毎日朝食を食べたのだが、本物のロック座の踊り子たちが早起きして炊き出しをし給仕をしてくれた。給仕をしてくれたのはママさんの方針だった。
すべて手作りで、生涯忘れられないロケだった。

劇中の雑魚寝のシーンがあったが一座は実際にああいう感じで、赤ん坊を世話するためだけの保育係の男性も一座にいた。
一座は不思議な運命共同体といった感じだった。
それぞれの踊り子のヒモが、その踊り子のキー・ライトを当てる役割となっていた。
運転手もヒモ、モギリもヒモだった。

劇中の外波山文明は本物。自分(白鳥あかねさん)も、塩を持ってくる役で出演した。
姫田カメラマンは布団敷きの役で出た。
フタッフも運命共同体だった。
プロデューサーの三浦朗は、スタッフが飲むお金をどう持ってくるかで苦心していた。
芹明香は踊りを覚えるのが早く、踊りたがり、宴会でチャブ台の上の乗り踊っていた。すると隣の襖の客がその姿を見たがった。そこで、その客に酒を2本持ってきたら、見せてあげると言い、酒を手に入れた。
それを見て、三浦朗は物陰でみんなに満足に酒を飲ませてやれないと泣いていた。
まさに運命共同体だった。
一方、片桐夕子はなかなか踊りがうまくいかなかった。映画ではうまく踊っていたように見えたのは、金髪のカツラをかぶせて姫田カメラマンが、そう見えるように撮ったから。

ロマンポルノをやり出した頃は恐る恐るだったけれど、『濡れた欲情 特出し21人』をやって吹っ切れた。「ポルノの世界で映画人としてやってく」覚悟ができた作品。
踊り子たちに、どうしてこんなにスタッフによくしてくれるのか訊いたところ、いつも人から見下されてるいるけれども、映画のスタッフはそうはしなかった、それが嬉しのだと言われた。それで給仕をしてくれた。
撮影期間は2週間。最後の打ち上げのとき、ロック座のママさんが、舞台にゴザを敷いてお膳を持ってきて宴会をしてくれた。スタッフを大喜びで、踊ってお返しをした。
姫田真佐久は着物を着て、カツラを被って、スッポンポンで踊った。
神代監督は、黒田節を踊った。脱がなかった。
自分も踊った。どんどん脱いでいったけれど、外波山文明が脱がなくていいと止めたので、最後の一枚は脱がなかった。
スタッフが帰京するまえに、撮影所ではその日のことが評判になっていて、スクリプターはストリッパーじゃないよ、と言われた。夫には何も言われなかったけど。
白鳥あかねさん

神代監督はロマンポルノ以前から関係があった。
あまり知られていないが、神代は『渡り鳥シリーズ』の助監督だった。
その斎藤武市監督は小津安二郎の弟子だった。
神代監督はチーフ助監督として松竹から引き抜かれてきた。島崎雪子と結婚する人だよ、と撮影所で言われいた。
斎藤組のチーフ助監督だった。
『渡り鳥シリーズ』はフィルム・コミッションの走りで、土地土地と契約し撮っていたが、神代はチーフだったので、先発隊としてロケ地に行っていた。
それから後で、スタッフみんながロケ地に行くと、「神ちゃーん」という声がかかり、神代監督を見ると機嫌が悪くなっていた。
先発隊として現場に行っている間に、土地の女性と仲良くなっていて、その女性から「神ちゃん」と声をかけられたのだ。
それも監督の方からということではなく、女性の方から好かれていたようだった、と。
助監督時代は、人が良くニコニコしていて、スタッフに人望があって、監督としてそんな才能があるとは気付かなかった。
蔵原惟繕とは松竹の同期だったが、神代は日活に移るのが一年遅れたために、蔵原はスター監督に、神代は監督になるのに7年かかってしまった。内出好吉監督に「俺を置いていくのか」と云われ、松竹にとどまってしまった。
日活では今村、鈴木清順とともに助監督リストのトップに神代の名前があった。

『かぶりつき人生』、主演の殿岡ハツ江とは事実上結婚していた、『一条さゆり 濡れた欲情』、そして『濡れた欲情 特出し21人』とストリップの映画が続いたが、神代自身ストリップが好きなのではないかと思う。
神代が亡くなったあと、郷里の佐賀に行き、佐賀中学の神代の幼なじみに会った。中学生時代、女学校の運動場の金網からブルマ姿の女学生をみんなで覗いていたとき、当時の神代は「君たち、女性を見るときは全体を見るものだよ」と言った、という話をきいた。
神代はまた「女性にはかなわない」と言っていた。ロマンポルノは女性が被害者的に描かれたものが多いが、神代作品は違う。
「たかが映画、されど映画」とも言っていた。卑下ではなく、世間では軽く見られているかもしれないけれども、映画は映画である、という意味で、と。
また「映画はヒエラレルキー」だとも。『悶絶!!どんでん返し』などの逆転する、という意味で、と。

以上でトークショーが終了。
白鳥あかねさんのインタビューが載っている機関紙「フィルム・ネットワーク」にサインしていただきました。

最後に長谷部安春監督の『(秘)ハネムーン 暴行列車』を鑑賞。
何だかのどかな作品。
「SOS」などピンクレディーの歌が流れておりました。

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『黒い画集 寒流』『黒い画集 ある遭難』

就業後、新文芸坐にて『黒い画集』2作を鑑賞。

まず鈴木英夫監督の『黒い画集 寒流』。
昨年の池部良特集で観て、傑作だと思った作品。
やはり素晴しい。観ていてため息が出るような、鳥肌が立つようなショットの連続(カメラは逢沢譲)。
中でも新珠三千代のマンションで別れ話をする場面が特に凄い。池部良と新珠三千代が一つのシネスコ画面に収まっているときの画面構成、ピントの合い具合、光の加減、カット割り、とすべてが素晴しすぎる。
池部良が湯河原の旅館の廊下に立っているショットも見事だったし、もうどれもこれも凄すぎる。
再見できて良かった。
それから、池部良のコート、生地も仕立てもいいものを着ているなぁと思いました。

次に『黒い画集 ある遭難』。
石井輝男が脚本を書いているので長い間観たかった作品。
山で撮影している場面はカメラが素晴しく感心して観ていたのですが、山から下りて銀行や室内やレストランなどで撮った場面は終始ピントがズレっぱなしで、観ていてとにかくストレスフル。
こんなにピンボケの映画観たのは小林悟監督の『黒幕』以来。いや『黒幕』よりずっとひどい。
山のシーンでのカメラがいいだけに落差が気になりました。
この作品、時系列がかわっていて、現在→過去→大過去→過去→大過去→過去→現在(本題)と進んでおりました。
香川京子&児玉清の姉弟の従兄弟・土屋嘉男は顔も身体も声も竹中直人にソックリ。
児玉清だけオーバーアクションで異質な演技を繰広げるのには苦笑い。結構ヒドイね。
そして衝撃(?)のラスト。エー?!こんなんでいいのですか?

それにしても黒い画集シリーズ、後味悪すぎ。それが黒い画集なんでしょうけど。

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加藤彰監督トークショー、『学生野郎と娘たち』『色情姉妹』『実録おんな鑑別所 性地獄』『ラブハンター 熱い肌』『OL日記 濡れた札束』

ラピュタで5本鑑賞。

モーニングで中平康監督の『学生野郎と娘たち』。
最初から最後まで俳優たちの軽妙な台詞回しと、キレのいい身体の動きに魅了されっぱなし。
カッティングもスピーディ。
この時代の中平康は本当に素晴しい!
俳優たちのなかでも、中原早苗の身体の動きがとりわけ見事。こんなに魅力的な女優だったのかと唸りました。

曽根中生監督の『色情姉妹』。
社会の底辺に生きる3姉妹のお話。
浦安が舞台ですけれども、浦安市民の方はご覧にならない方がいいかもです。

小原宏裕監督の『実録おんな鑑別所 性地獄』。
ダウンタウン・ブギウギ・バンドの音楽がピッタリで、ロック感あふれる作品。
現実的な芹明香と高橋明のカップルが痛快。今さながら高橋明の声の良さにウットリ。
観ていて楽しかった。

小沼勝監督の『ラブハンター 熱い肌』。
田中真理&織田俊彦夫婦の邸宅の内装がゴヤ風というかゴシック風で独特の雰囲気を放っておりました。
温室で織田俊彦が裸の田中真理に乱暴するカット、いやらしくて驚きました。田中真理の乳房が温室のガラスにバーンと打ち付けられ、まぁ、エロい。
最後、田中真理が束縛から解放され旅立つというのは、『昼下りの情事 古都曼陀羅』と同じでしたね。

そして『OL日記 濡れた札束』。
本日は加藤彰監督がご来場です。
まずは、作品の上映。ニュープリントです。
音楽は樋口康雄で、『エロスは甘き香り』と『(秘)色情めす市場』で使われた音楽が流れておりました(『エロスの甘き香り』が時代的には一番古い)。
中島葵、絵沢萠子の行かず後家姉妹の家というのは迫力あります(絵沢萠子の顔が沢口靖子に見えた)。
中年女性を演じた中島葵、調べると当時まだ29歳なんですが、疲れきった彼女の顔は40歳はとうに超えているように見えます。
年下男にいいようにされて横領に手を染めていく様は観ていて痛々しい。
中島葵の入魂の演技を堪能。
最後、逮捕され、取調べ中、高橋明演じる刑事と丼を黙々と食べるカットが良いなぁ。
樋口康雄の音楽は2次使用、3次使用なわけですけれども、この作品のために書き下ろしたように映画によく合っておりました。

そして加藤彰監督のトークショー。
聞き手は高崎俊夫さん。
場内、『OL日記 濡れた札束』を撮影された荻原憲治カメラマン、そして白鳥あかねさんもご来場されてました。
加藤彰監督、物静かにお話される方です。
加藤彰監督

『OL日記 濡れた札束』は30年以上前の作品で、よく憶えてない。
台本を見直してみても自分が撮ったもの違う。今回改めて観て、改めて台本と違うと思った。
モデルになった九億円横領事件は当時大変な事件で、ショッキングだった。
相手のタクシー運転手や「オニイチャン」と呼ばれる人物の存在などは当時新聞で読んでいた。映画化は事件直後、皆の記憶に新しい頃だった。
劇中、三島事件なども戦後の軌跡を入れたのは、台本にはなく加藤監督のアイディア。
戦中派はどうなっていったのかということを描きたかった。

決して美人ではない中島葵の存在感がよく出ていた。彼女のよさ、人間そのものが作品に表れていた。いい女優だった。
中島葵以外の登場人物は、殆ど素人みたいな人で、下宿のお婆さんもそうだし「オニイチャン」役は日活の大部屋俳優。それでドキュメンタリーみたいなものを撮ろうと狙っていた。
中島葵はその前に武田一成の作品に出演していて、『OL日記 濡れた札束』への出演は製作の伊地智啓が決めた。
加藤彰監督

加藤彰監督はもともと小説家志望だったのだが、小石川高校の2年だった時に、担任の小島信夫が芥川賞を受賞した。小説家とは、 こんなにもユニークな人なのかと思い小説家を目指すのを止めた。日大芸術学部の後輩には小沼勝監督や蔵原惟二監督がいた。
日活に入社し、中平康監督に一番多く、12~13本付いた。『恋狂い』は脚本を書いた中平監督の『砂の上の植物群』の延長だと。
蔵原惟繕監督には2~3本付いた。
日活がロマンポルノに転換するとき、藤田敏八など他の監督が断ったので、自分が撮ることになった。
自分はアクションを撮れない監督。これを撮らないと映画を撮れないと思い、流れに乗ってやっちゃったという感じ、と。

そして質疑応答。
「通常ロマンポルノ作品は3人ぐらいの女優が出演しますが、『OL日記 濡れた札束』は中島葵一人が出ずっぱりでしたが、企画として大丈夫でしたか?」との質問に対し、監督、事件が特殊でタイムリーだったので、大丈夫だった、と。
京都・山科の女三人家族でああいう事件が起こったということ、それだけを撮り続けるだけでよかった、他の登場人物を入れてバラエティをとる必要はなかった、中島葵の存在感ですね、と。
中島葵に対しては特別役作りの指示は与えなかった。ちょっとしたヒントは出したけれども、とりわけ役についてのプランは与えなかった、と。

次に中平康監督についての質問。中平監督は晩年アルコールに浸っていたが、加藤監督が付いた頃はどうだったか?
加藤監督は中平監督の中期、『泥だらけの純情』の頃に付いたが、既に酒を飲んでいて荒れていた。
自分はまともな中平康を知らない。
中平作品は今見ても古くならない。素質がある人だったのだろう、頭の回転の速い人という印象、と。
『猟人日記』ではサードだったので、内容にかかわってない。
後年、西村昭五郎監督に「おまえが中平康を堕落させた」と言われた(笑)。
中平康は初期に傑作が多いが、アルコールに浸っていた頃の『月曜日のユカ』『砂の上の植物群』はそんなに堕落してない。その『猟人日記』もしっかりしている。
中平康監督からの影響は?と訊かれ、加藤監督、他人から見ると似ているんだと思う。比較すると自分は都会的ではないけれど、と。
後から考えると、女性を描く映画は自分に合っていた分野だと思う。
当時は何とか750万円で映画にしたい、自分のイデオロギーを入れるということよりも、お金がかかっていなくてもかかっている作品に見せたい、そういう意気込みで撮った。
『OL日記 濡れた札束』にご真影が出てくることについて、国民学校に入って戦争が始まった、それを反映させたいと思った、と。
中島葵演じる主人公が世の高度経済成長と反する存在ですね、という高崎さんの問いかけについて、当時の映画業界は高度経済成長と逆に下がっていくばかりだった、と。
今の映画界の繁栄を羨ましく思う、と。
加藤彰監督

日活についての話になり、74年頃の日活について、物凄い熱気だったと。
皆若く、ワンステージで3、4組が同時に撮っていた。競い合いみたいな熱気があった。
ライバルは神代辰巳で、藤田敏八は兄のような存在だった。
藤田敏八とは2年間、同じアパートの1階2階に住んでていたこともあった。
藤田敏八も山田信夫も67歳で亡くなった。だから、自分は余生を生きているような気がする。
同期は伊地智啓、村川透、白井伸明。

ロマンポルノについて、当時はある程度注目されたけど、今見るとAVと同じように見えるのではないかと思う、と。
(絶対にそんなことありません!)
加藤監督、西村昭五郎監督が映画芸術に執筆した文章のタイトルをあげ、ロマンポルノ転換期の悲壮感、覚悟、ショックだった心境を説明されてました。差別の中に入っていく覚悟だったと。

そしてトークショー終了。場内拍手。
加藤彰監督に『OL日記 濡れた札束』のDVDにサインしていただきました。

ワタクシ、トークショーの最後の部分、ロマンポルノへの転換についてのお話を聞いて、胸が痛く辛くなりました…。
映画監督には色々なタイプがいますよね。ロマンポルノの監督でも自分は芸術家だと自負しているタイプも多いと思うのですが、加藤彰監督はまったく逆なタイプで本当に謙虚で(大監督に対して謙虚という形容詞はおかしいかもしれませんけど)、真摯でもの静かな語り口の方で、極めて客観的にご自身の作品について、また当時のご自身状況について、お話されている印象を受けました。
映画ファン、ロマンポルノ・ファンの一人として、加藤彰監督に、素晴しい作品を撮られたことへの感謝の念をお伝えしたい、そんな気持ちにかられたトークショーでした。

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『抱擁』

シネマヴェーラのマキノ雅広特集、ラスト1本で『抱擁』を鑑賞。
三船敏郎と山口淑子主演のメロドラマ。
観ていて頭痛がしてしまいました。この映画がお好きな方、スミマセン。
冒頭、クリスマスの銀座で、山口淑子が死んだ恋人に瓜二つの三船敏郎に遭遇するのですが、その直後、雑踏の中にいる山口淑子を中心にグヮーっとクレーン・ショットになり、何かすごいものが始まるかと思いきや、全編1953年当時の東京というよりも、パリの19世紀末のモンパルナスだかモンマルトルといった感じの恋愛劇が始まります。
山小屋という名前の、ホントに山小屋みたいな内装のバーに集う貧しいボヘミアンたち(平田昭彦、志村喬、小泉博など)は、みんな薄幸の山口淑子が大好き。みんなベレー帽とかチェックのジャケットとか着ていて、詩を書いてたり絵を描いていたりで、ラ・ボーエムとか、そんな感じ。
バー山小屋での室内劇の場面は、音楽が流れていなくて、なんだか暗い。
山口淑子の死んだ恋人との回想シーンで、本物の雪山や山小屋が出てくるのですが、これまたスイスかというような無国籍ぶり。
で、一年後、山口淑子は死んだ恋人にソックリな三船敏郎にクリスマスの銀座で再会して街中で愛を語り合うのですが、この場面の東京ということになっている街のセットがルネ・クレールの『巴里祭』かというぐらいのパリっぷり。
なんでこんなに全編に渡ってヨーロッパ調なんだろ?
そしていきなり淑子&ミフネは雪山に愛の逃避行。もうここでの二人のやり取りなんてグズグズで、観ていて逃げ出したくなりました(心が狭くでスミマセン)。
この雪山での撮影はスキーが得意な岡本喜八によるものなんだそうです。

三船敏郎の胸板は素晴らしかったです。

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『惜春鳥』

就業後、神保町へ。
「さぼうる2」でナポリタンを食べ、腹ごしらえ。

神保町シアターの木下恵介特集で『惜春鳥』を鑑賞。
ワタクシ、常日頃から川津祐介ファンであることを公言しておりますが、映画に詳しい方数名から、『惜春鳥』が川津祐介や津川雅彦が風呂で裸になったりするホモ映画であると教えてくださり、川津祐介のホモ映画観たさに観に行きました。
いやぁ、想像以上に男色映画でした。
特に川津祐介の動作がひと際おかしい。
風呂のシーンに限らず、男同士手を握り合ったり、肩を抱き合ったりで、そんなときの川津祐介の表情は陶酔したような虚ろな感じ。
5人の仲間の中で一人小児麻痺の後遺症らしき足をひきずっている男の子(山本豊三 )がいるんですけど、この子は完全に川津祐介に恋しちゃっている様子で、そんな求愛に対し、川津祐介はひたすら優しく受け止めているのでありました。
そもそも山本豊三が足が悪い設定なのも、介護する名目で川津祐介とベタベタさせるためとしか見えなかったです。
とにかくこの作品、登場する男の子たちの撮り方が完全に男色目線で、とりわけ川津祐介に対して木下監督は特別な感情移入をした上で演出したなと思いましたね。
川津祐介のキャラクター、冒頭汽車に乗っているときの顔はまだ少年といった感じであどけなく、友人たちに対して温和で物静かで優しく、と思っていたら、有馬稲子に対し色仕掛けに出たり、どんどんと予想しなかった違った側面が出てきて、とにかく複雑で屈折しておりました。

最後、津川雅彦、石浜朗 、山本豊三、小坂一也の4人が戸ノ口原でやりあう場面、スクリーンの大部分が白い雲が浮かぶ空に占められ、バックに山が見えるという『カルメン故郷に帰る』みたいな大自然・大パノラマが繰広げられ、ああ、このこれ見よがしな一風変わった書き割りみたいなショットを観るだけでもこの作品を観た価値があったな、と。

木下監督の男色目線と書き割り目線が気になる惜春鳥』でした。

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『黒の報告書』『黒の試走車』

新文芸坐の「日本推理サスペンス映画大全」で、増村保造監督作品を2本鑑賞。

『黒の報告書』。
16ミリでの上映。これしか上映用プリントがないとのこと。
レベルの高い法廷ものなのですが、何せ後味が悪い。
主人公の検事・宇津井健が法廷で対決する強盗殺人事件の被告・神山繁が不敵で不気味。
神山繁ファンのワタシにとっては、神山繁がつわものでふてぶてしいのは嬉しいのですが、それにしても後味が悪い…。
次から次と事件の処理に追われる検事の立場を丁寧に描いているなと思いました。
増村の作品で、善良な模範的な人物が主人公の作品って少ないんじゃないかと思います。宇津井健が善良な熱血検事を演じておりました。

もう一本、『黒の試走車』。
5年ぶりぐらいに観たけど、やっぱり面白いなぁ、と。
音楽(池野成)もすごく合っていて感心いたしました。
会社のためにあそこまでするというのは、今となってはとても斬新。

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プロフィール

 リネン

Author: リネン
♀。会社員。独身。
東京23区在住。
深煎りコーヒーが好き。
成瀬巳喜男監督作品56本を
劇場で観たのが自慢。

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