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『エグザイル/絆』試写会

お昼過ぎ神保町へ。
ちょうど神田古本まつりの最中で、かなりの賑わい。
ランチをしに新世界菜館へ。五目焼そば(1000円)をオーダー。
具沢山でウマー。大満足。

映画本を求めて散策するも、古本まつりの開催中ですでに荒らされた後のようで収穫なし。
タイレストラン・メナムのほとりの前で出店がでていて、トムヤンクンのいい匂いに食欲が激しくそそられたけど、あいにく胃袋に隙がないので我慢。
紅茶専門店タカノで休憩。大好きなナッツミルクティーで癒されました。
隣の席に座った中年男性二人組、ジョン・ウーの話をしてました。
ジョン・ウーは『ミッション:インポッシブル2』で終ったなと思った、という会話。
ジョン・ウーが終ったという意見には残念ながら同意です(ワタシは『ハードボイルド 新・男たちの挽歌』までと思ってる)。

今日のメインイベントはジョニー・トー監督の『エグザイル/絆』(放・逐)の試写会です。
「まぜるなきけん」のせんきちさんのご好意で行くことができました。
6時開場、6時半開演。今日は主演のアンソニー・ウォン(黄秋生 )とフランシス・ン(ン・ジャンユー、呉鎮宇)の舞台挨拶があるので早めに5時に会場に行ったところ、すでに物凄い行列。香港映画ファンを甘くみてました。
1時間以上並んで席を取って、それからまた30分待って、スタート。

舞台にアンソニー・ウォン、そしてフランシス・ンーが登場。
二人とも長身でカッコいい。スターのオーラが舞台が舞台からも漂ってきました。
アンソニー・ウォンはサングラスをかけ黒いジャケットとズボンに白のインナー。
ジャンユーは茶色のジェケットにネクタイ。長髪で、ジョニー・トー作品でのイメージと全然違って、キュートで若々しい感じ。素敵だ。
二人とも、終始おどけっぱなしの舞台挨拶で、ジョニー・トー監督のどこがすごいですか?との質問に対し、アンソニー・ウォンは、監督は声が大きいところが凄いと回答。
脚本がない状態で撮影するのはどうでしたか?との質問には、アンソニーが脚本だけでなく俳優がいない状態で撮影が入ることもあると答え、さらにジャンユーが、自分は脚本がなくても俳優がいなくても、ギャラがもらえればいいです、と回答し、大爆笑。
(広東語で通訳を介してのやりとりでしたが、二人が言葉を発すると同時に爆笑が起きていて、広東語を解するお客さんの割合が多いのに驚いた。香港映画ファン、勉強熱心ですね。かくいうワタシも以前広東語を少し勉強していたので、同時に笑ってしまいました)
アンソニーに対する「役のためなら10キロ20キロ太れますか?」という質問に、すかさずジャンユーがもうアンソニーは太っているから太る必要がないよ、と答えたりで、ふざけあったり、抱き合ったり、キスするマネをしたりで、二人とも絶好調。とても仲良さそう。
二人ともサービス精神旺盛で場内爆笑の連続でありました。


そして『エグザイル/絆』本編上映開始。
噂に違わぬ傑作。
ワタシが追い求める香港映画はここにあると思いました。
ジョン・ウーの『レッドクリフ』にガックリきた直後でしたが、『エグザイル/絆』観てすっかり御機嫌になりました。ジョン・ウーはダメでもジョニー・トーがいるじゃないの!
冒頭、マカオの風情ある坂道が映った瞬間、この作品の勝利を感じました(『レッドクリフ』では冒頭のCGで負けを感じたのと対照的に)。
最初のウーの自宅での三つ巴のシーンでは、石井輝男の『ならず者』での高倉健&杉浦直樹のガチンコを思い出し感涙。
物語の舞台であるマカオが実際のマカオ以上に美しく西欧的に撮られていて、この作品を観たらマカオに行きたくなること請け合い。後半はマカオというより西部劇っぽい光景になり、全体的に無国籍な仕上がり。
銃撃戦は華麗で美しくダンスのよう。カーテンが揺れながらの銃撃戦の素晴しさったら。
これまでのジョニー・トー作品に比べても、ユーモアと悲劇的な側面の両方が強調されておりました。
(今日は熱心なファンが多いので、ユーモアある会話での場内の反応が凄かった)
この作品でも緊張のシーンの後に、男たちが食事をともにするシーンがあり、観ていて嬉しかった。
そして脚本がない状態で撮影しているとは思えない、巧みで洒落たシナリオ。痺れました。
リッチー・レンが登場する辺りの場面も超カッコよかった(香港映画とは思えない)。ハリウッド的でありながらそれ以上にセンスいい。
全編超スタイリッシュ。
もう、映し出されるカットすべてが完璧で、あまりに美しく、感激しながらも、ここまで素晴しい作品をつくってしまって、ジョニー・トー、今後どんな映画をつくっていくつもりなのだろう?と心配してしまいました。
ジョニー・トー、『ザ・ミッション 非情の掟』が一つのピークで、『エグザイル/絆』でさらに大きなピークがきたな、と。

華麗な銃撃戦を再確認したいので、一般公開されたらまた観に行きます。
ちなみにフィルメックスで最新作『文雀』が上映されますが、プレリザーブでチケット押えております。
『エグザイル/絆』後のジョニー・トーが果たしてどうなっているのか、とても楽しみです。
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フォーシンズホテルにてアフタヌーンティー

久しぶりに映画以外の話題。

お友達Yちゃんと、フォーシズンズ・ホテルでアフタヌーンティーをしてきました。
アフタヌーンティーは14時から開始なので5分前に行ったところ、すでに10組以上待っている状態で、何と2時間弱待つことに。
私たちの順番がきたら携帯電話に連絡してくれるとのことで、庭園を散歩したりお喋りしたりして、ひたすら待ちました。

そしてやっとありついたアフタヌーン・ティー。
紅茶はダージリンをチョイス。
フォーシーズンズホテル
どれも美味しかったですけれど、特にスコーンが最高。栗の入ったスコーンもプレーンも程好い甘さで、フワフワで本当に美味しかった。
スコーンに付けるクロステッドクリームがまた美味!全部付けて食べてしまいました。

お茶は指し湯を持ってきてくれるのはもちろん、茶葉も何度も取り替えてくれました。
美味しくて、サービスが良くて、ゆったりできて、一人3000円(プラスサービス料300円)はリーズナブルで大満足。
オススメです。ただし人気でとにかく待つので、平日に予約をして行くのがよいと思います(土日祝日は予約不可)。
フォーシズンズ・ホテル

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『レッドクリフ』

ジョン・ウー、最も好きな監督の一人です。
トニー・レオン、最も好きな男優です。

で、『レッド・クリフ』観てきました。
ワタクシ、三国志がどういう話なのかまったく知りませんので、映画のストーリーを理解できないかもしれないなと思い、家を出る前にウィキペディアの赤壁の戦いのページを軽く読んでおきました。

公開初日で、映画の日で、新宿ピカデリーなんで、当然満席。
劇場は松竹ですが、『レッドクリフ』は東宝東和配給で、本編上映前の予告編も東宝東和の作品のものばかり。松竹が心配になりました。

いやー、凄かったです。
映画ではなく新宿ピカデリーのスクリーンと音響が。

本編が始まる前に、三国志を知らない(ワタシのような)バカな客のために日本語で(!)おおまかな時代背景・登場人物の説明があり、これはどうみても日本公開版用に付けた説明でしょう。
ジョニー・トーの『ザ・ミッション 非情の掟 』でも本編が始まる前に説明が入っていて、興がそがれるなと思ったのですが、正直なところ、三国志をまったく知らないワタシとしてはこの説明は有難い(けど、三国志を知っている人には、ウザいでしょう)。

タイトルバックが終って一番最初に映し出されるのは、ドドーンとCG画面。
次のカットで映し出されるのも、宮殿のCG画面。
もう、この時点でダメだーと思いました。
結局、最後まで、CGのオンパレード。CGを使うことが全部悪いとは言いませんけど、この作品は映画というよりCGの見本市。映画じゃない。
CGの中で、俳優が動いたりしているだけ。
ジョン・ウー的な優美な俳優の身体の動きを期待していたのですが、それも殆ど見せてくれず。
戦闘シーンの人がぶつかりあう音の付け方とかも凄く下品。とにかくデカい音を付けてやれ、という感じ。
カメラで撮ったショットをつなぐ映画ではなく、CGなのでどこまでも長い、カメラでは撮影できないカットが出てくる。
最悪と思ったのは、最後のトニー・レオンと並んで立っている金城武がハトを飛ばすシーン。立派なCGを延々と見せてくれます。こんなの映画じゃない!

登場人物が出てくる度に、何度も「曹操」とか「孫権」とかキャプション付けるのも止めてもらいたい。
最初に1回付けるのは親切だけど、すでに登場済みの人物なのに、再登場するたびにまた「曹操」と出すのは、客をバカ扱いしてんのか、と。
「曹操」って、何回キャプション付けたんだよ。5回は出てきたよ。

あとですね、金城武が始めて口を開いたとき驚きました。金城武本人の声じゃない。
北京語のネイティブじゃないトニー・レオンや中村獅童はわかりますが、ネイティブの金城武が吹き替えなのはなぜ??
ひょっとして、中国人俳優も含めて、すべて吹き替えですか?
アフレコだから、俳優本人の声ではなくてもいいってことなのでしょうか?謎です。

この作品、今回はパート1で、それでも145分もありますけど、別に2本に分けずに、160分ぐらいでいいんじゃないかと思いましたね。
ホント、どうでもいいシーンが多すぎ。
最初にイライラが爆発したのは、トニー・レオン登場シーン。
トニー演じる周瑜が軍隊の演習をしているところに金城演じる諸葛孔明がたずねていく場面、トニーの後姿だけ映して、不必要にもったいぶって延々顔を映さない、顔が映ってからも、どうでもいいやり取りが続く。
そこに、部下が現れトニーに、「御宅にお帰り下さい。難産です」と言う。
で、家の場面に映り、難産で苦しんでいる馬が現れる。
難産で苦しんでいるのは奥さんではなく馬でした。
で、お馬さんの難産の話で、しばらく映画が続く。
この馬の難産の話って、原作にある有名なエピソードでお客さんが期待している部分なのでしょうか?
しかもですね、スター金城武が馬の出産を助けるべく、馬の○○に○○するという衝撃的なシーンがあります。
こんなシーン、観たくない。中国人にとっては平気な描写なのでしょうか?
子馬が無事生まれ、立ち上がりやれやれ、この長い場面が終ったと胸をなでおろしたら、今度はトニーと金城の琴のシーン。
ああ、ここも長いよ。
琴の合奏で二人の気が合ったということを描きたいのだろうけど、長すぎる。
この琴の合奏も有名なエピソードなのですか?
ここは名場面なので外せないという程の長さなんですけど。

ワタシは三国志を知らないので、的外れな意見かもしれませんけど、配役も違うのではと思いましたね。
35歳、男盛りの金城武は水もしたたるいい男だと思いましたが、どうみても賢そうに見えない。
金城武が諸葛孔明というのは無理があるのでは?
それより恵まれた身体を動かす武将役の方が合っていると思うのですけど。
逆に、トニー・レオンは小柄で線が細く、表情も神経質っぽくて武将には見ません。
トニーが諸葛孔明役で、金城武を周瑜役をすれば良かったのではないかな。
あと、トニー・レオンの顔の衰えも気になりました。
彼は立派な身体があるわけでもなく、不細工ながら強烈な存在感があるというわけでもなく、二枚目と繊細な表情の演技が魅力なわけですから、あんなにお肌が荒れて衰えていると、結構キビシイ。
『レッドクリフ』ではトニー・レオンがアタマの1番手なのに。
一方、趙雲を演じた胡軍が素晴しかった!
顔も身体も役にピッタリで、表情も身体の動きも素晴しかった。
中村獅童も好演してました。無骨な役に見た目が合っておりました。

本編が終って、エンドロールに入る直前に、「終了後、パート2の予告編が上映されますので、そのままお待ち下さい」とキャプションが出たときは、笑ってしまいました。
ああ、そうですか。
予告編を観た限りでは、パート2では俳優がジョン・ウー的な舞踏のような身体の動きをしていたので(『マトリックス』みたいなの)、パート2の方が満足できるかもしれません。

ともあれ、『レッドクリフ パート1』は鳩が出てくること以外、ジョン・ウー的なところがみられない作品でした。
ジョン・ウーが中国に(香港に)帰ってきたと喜んで期待していたのに。
ジョン・ウーは軍隊が集団で戦う映画よりも、俳優一人一人が身体を動かす映画を撮るべき。
この欲求不満を解消するために、家で過去の香港で撮影した呉宇森作品のDVDを見たくなりました(『ハードボイルド 新・男たちの挽歌』の素晴しさったら!トニー・レオンもこの作品では輝いていた)。
かつてのジョン・ウー作品のファンとしては、ジョニー・トーの『エグザイル/絆』が楽しみです。
今後はジョン・ウーは諦めて、ジョニー・トーにすがることとします。
もっとも、金返せーという出来ではないことを最後に付け加えておきます。
お金かけて頑張って撮ったということはよくわかりましたし、立派な劇場でスターがいっぱい出る映画を1000円で観られたんですからね。
パート2も1000円なら観に行きたいです。
帰りにパンフレット(600円)もちゃんと買って帰りました。

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華麗なる自己満足の世界。渡辺文樹上映会in杉並

10月27日昼、自宅マンションを出て1分ぐらいのところにある電柱に、『天皇伝説』のポスターに遭遇。
こんな住宅地にまで、と驚いて見ると、ウチの近場で次々上映されると告知されると告知されるとある。
これは行かねば!横浜まで行かなくて良かった。
渡辺文樹

で、杉並区の勤労福祉会館(荻窪の西荻窪の間ぐらい、青梅街道沿いにある)での上映会当日となりました。
会場に行くのに荻窪駅北口からバスに乗りました。
青梅街道を西に走るバスからボケーっと車窓を眺めていると、荻窪消防署を過ぎたあたりで、突然赤色灯のピーカピーカが目に入りました。
これは!と思い、外を良く見ると、装甲車など警察車両が数台に制服警官が数名。長い木の棒を持って角で立っている警官も。
「あ、最寄のバス停まできたな」とわかり、下車。
渡辺文樹

会場前には装甲車が。入り口にも制服警官と公安らしきスーツ姿の男が立っています。
通りを歩いているオバサンに、何故こんなに警察が来ているのですか?と訊かれてました。
「映画の上映会です」と答えたのですが、オバサンに「なぜこんなに警察が来ているのですか?」とまた訊かれました。
公安が目の前にいるので、小心者のワタシは思わず、「思想的にちょっと問題にある~」と答えてしまいました。

『ノモンハン』の上映開始は18時半。
ワタシは18時過ぎに到着しましたが、すでにお客さんが並んでチケットを買っています。
今日も監督の奥さんがチケットを販売しておりました。
チケットを売っている左横の壁際にいかにも公安という感じの目つきの鋭い男が、客を一人一人チェックしてます。
この公安と目が合ったとき、ワタクシ思わずニヤついてしまいましたが、この男、まったく笑いもせずにらみ付けてきます。イヤーン。

勤労福祉会館という建物の中に初めて入りましたが、結構広いですね。
後方、真ん中、映写機の前に腰を下ろしました。
今日の会場の客層は、映画ファンという感じの人から、近所のオジイサン、オバアサンまで多種多様。

ブザーがなり、渡辺文樹監督の前フリ開始。
今日は杉並区が警察を呼んだので、警察が来ていて物々しいですが、ご勘弁を。この前の横浜では会場内に右翼が入ってきたけど、今日はいないみたいですね。『ノモンハン』は自分が以前から調べていた出来事で…
云々といった内容を監督が話していたのですが、『天皇伝説』について、「アクション映画です」と言ったのに驚いてしまいました。
『天皇伝説』、アクションなんだ。
『ノモンハン』、上映時間140分(ぐらい)です、とアナンスされた途端、ワタクシ思わず「長い!」と口走ってしまいました。
昨日、加藤泰の『花と龍』が168分なので長いの疲れるーと思い、行かなかったのに、渡辺文樹でこの上映時間かぁ(しかも、この後もう1本ある)。

そして『ノモンハン』上映スタート。
『御巣鷹山』と違ってちゃんと、音声と映像がひっついてました(アフレコらしく、口の動きとセリフがズレているのが気にならなくはないけど、まぁOK)。
冒頭、城壁の前で制服を着た文樹とオトコが話していて、女も映るのだけれど、この時点で何が何だかわかりません。
その後、田舎のおうちに話は移り、何人か出てきて何かを話しているのだけれど、この時点でも、何が起きているのか、どういう人物関係なのかワタシにはサッパリわかりません。
この作品でも『御巣鷹山』と同じような極端な顔のアップの連続(顔のアップというよりも目のアップ)、背景が真っ暗な中、文樹が座禅している姿、もしくは背景が真っ暗中現れる文樹の顔アップ(文樹の顔だけ光が当たっていてまるでカラヴァッジョの絵画のよう)、極端な下からのあおりショット、などの連続に、何でこういう撮り方するんだろう?と考えつつ、意味不明なストーリーを理解すべく必死に観ておりました。
この映画は登場人物が多く、それなりに演技が出来る出演者が多数出演していてるし、東久邇宮稔彦の部屋など、どこかでそれなりに見える場所でロケしているを観て、意外に金かかっているなぁ、など思いながら観ているうちに、最初は謎だらけだったストーリーがわかり、物語にドンドン引き込まれ、気が付いたら面白く観ていたのでした。
これは渡辺文樹版「藪の中」とでした。

驚いたことに、終盤、戦争のシーンで火薬を使って爆破させたり、軍隊が軍服を着て装備した状態で、一団で銃を撃ったり(いつものオジイさんたちの集団ではなく、若者でまとまった数の一団)、戦車が出てきたりで、金のかかったつくりにワタシには観えました。

よくわからんうちに、引き込まれる映画でありました。

この映画に出てくる東久邇宮稔彦王という人、戦後初の総理大臣で、波乱万丈の人生を送ったということで知られてますが(昔子供の頃、月刊現代でこの人の伝記を読んだことある)、ああいう最後だったとは知らなかったなぁ。

ちなみに主演女優は中越典子、その妹は鈴木砂羽に似ておりました。

次に『天皇伝説』。
8時半からの上映なのでお客さんが増えて、結構場内お客さんでいっぱいです。
監督の前フリで、またも「これはアクション映画で」という説明がなされました。
ストーリーはフィクションだけれども、映画に出てくる出来事は事実である、とのこと。

冒頭、『エロス+虐殺』みたいな劇的なシーンでスタート。
主人公演じる文樹の身の上の説明が文樹のナレーションで始まります。文樹は妻を殺され、無実の身にもかかわらず逮捕され、手錠をしたまま警察から逃亡。
手に手錠がかかった文樹が、工場で電動ノコギリで手錠をはずし(このシーンが何だか笑え、前の席の女性二人は笑い転げてた)、施設に保護されていた娘(監督のお子さん)を奪い返し、文樹は真相を求めて逃亡の旅へ。
この映画、『逃亡者』みたいです。
あと、子供の頃夜中のテレビで観たロープウェイを舞台にしたパニック映画(『恐怖のロープウェイ脱出』だったか?)みたいでもありました。
ロープウェイの他にも、子供を奪った男を追跡するのに男が乗りこんだ電車と平行して文樹がトラックを運転したり、墜落するセスナから文樹がパラシュートで脱出するとか、不自然なカットつなぎを駆使しつつ文樹大活躍。
巨体で走ったり戦ったりアクションする文樹を観て、こりゃ大神源太の映画と同じだな、とずーっと考えてました。
華麗なる自己満足の世界。
大神源太はマッチョである意味俳優っぽいルックスだから、アクションを演じるのも自然で様になっていたのですが、オッサンの文樹が大活躍するのはひたすら不自然で違和感あって目新しい光景。
前の席の女性二人は華麗なアクションにずっと笑い転げていて、ワタシは安易に笑わないぞと決めてガマンしていたのですが、あまりにヘンテコなところは抵抗むなしく思わずブっと吹き出しまうのでした。

『天皇伝説』は『ノモンハン』の妹的作品とのことで、ストーリーにノモンハン事件も絡んでくるので、『ノモンハン』で使われていた先頭シーンが何度も出てきておりました。

なお、この作品の約半分は文樹史観による紙芝居が挟み込まれていて、アクション映画の途中で紙芝居が始まり、皇族や政治家などの写真が次々映し出される中、「橋本龍太郎は天皇の血をひいている」とか「明治天皇は大室という男が入れ替わっている」「美智子妃は家来と浮気をし、皇太子と秋篠宮を生んだ。ただしサーヤは現天皇との子供」「高円宮は殺された」などなどなど、文樹が文樹史観に基づく驚嘆の事実を延々ナレーションします。
ワタシの隣に座っていた老夫婦は、それを聞きながら、ヘーエ、と関心したようにうなづいているので、ワタシ、心配になってしまいました。

これまで少なくない数の映画を観てきましたが、アクションとトンデモ史観に基づく紙芝居が融合した映画は始めて観ました。

『天皇伝説』、とりあえず文樹史観による言いたいところはわかりましたが、それを映画で表現するのに、なぜアクションという体裁をとったのかが全く不明の、超強引なカットつなぎで文樹が巨体を揺らしながら派手な(?)アクションを見せる怪作でありました。
渡辺文樹

会場を出て、荻窪行きのバス停へ。
先ほど、文樹史観の紙芝居を観ながら、ヘーエと感心していた老夫婦たちと一緒にバスに乗り駅に向かいました。
バスの車窓から、会場から出てきた眼光鋭い公安スーツ5人組が荻窪警察署方向に歩いていくのが見えました。

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怒!鈴木英夫 VS 蓮實重彦&黒沢清

数年前に『その場所に女ありて』を観て、鈴木英夫の素晴しさに魅了され、それ以来劇場で鈴木英夫の作品がかかる時は観に行くようにしております。

今回アテネフランセで開催された鈴木英夫映画祭も、未見の作品が上映されておりましたので、御茶ノ水のピンク校舎に通っておりました。
最近、鈴木英夫の再評価が高まっている、とか言われておりましたが、いつ行っても(土曜日に行っても)、アテネフランセの客席はガラガラ。
観客は、数えるほどしか来ておりません。
まぁ、アテネフランセは前の座席の人の頭がスクリーンに被る、観にくい施設なだけに、率直なところ、観客が入っていないのは個人的に有難いと思っておりました。

で、今日、いつも通っている御茶ノ水の眼科にコンタクトレンズを買いに行ったついでに、18時から蓮實重彦や黒沢清などによるシンポジウムが鈴木英夫映画祭の最後のプログラムとして行われたので、聴きに行きました。
場内に入ってビックリ。
満席どころか立ち見じゃないですか。場内、シンポジウムの前に上映された『その場所に女ありて』から観ていたお客さんで既にビッシリ。
これまで、毎日映画本編はガラガラだったのに!!
ここにいる観客の殆どは恐らく、今日のハスミンと黒沢清の話を聞くために、やってきた人たちで(シンポウジウムは無料だけど、映画本編の入場チケットの半券が必要)、実際のところ鈴木英夫についてなど、あまり興味にある人たちではないんじゃないのだろうか??

なぜ鈴木英夫の映画は観に来ないのに、ハスミンの話を聴きに来る?
鈴木英夫の映画よりハスミンの話の方が偉いのか?
そりゃ、ハスミンの話は確かに面白いし参考になるけど、あくまで映画本編があっての話でしょう。
ワタクシ、場内に入って、非常に頭にきました。というか情けなくなりました。

これがアテネフランセの傾向なんでしょうか?
ワタクシ、ここの施設には普段通わないのでわかりません。

そんなにハスミン・ファンが多いなら、ハスミンは毎週でも客の入ってない映画の上映後にトークショーすればいいのに。
今日はハスミン、ここの劇場でトークしますよって。
別にトークの内容は映画と関係なくていいから。

まぁ、自分が好きな鈴木英夫が、ハスミンの追っかけにも知ってもらうきっかけとなったと思えばいいのかもしれませんが、やっぱりこれって、健全な状況じゃないと思う。

そんなことを考えながら、釈然としない気持ちで中央線に乗り帰路につきました。

トークショーの内容に続く(アップデート予定)
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『イノセント』

足繁くシネマヴェーラのイタリア映画特集に通っております。
劇場に行く前に吉祥寺にある北欧カフェmoiに行き、アイスキャラメルミルクティをいただく。
店主の岩間さんと映画の話。
井の頭線で渋谷へ移動。
今日観たのはヴィスコンティの『イノセント』。
この世にある映画の中で最も好きな映画のうちの1本です。
10代の頃から何度も劇場で観た作品ですが、見る度に泣いてしまいます。
この作品を観た時の自分の状況は様々でしたが、何時観ても感極まってしまいます。
ずい分前、自分がまさにジャンニーニと同じ立場に置かれていたときなど(!)、ジャンニーニがアントネッリの浮気を知り真昼の別荘で情熱的に抱くシーンを観ながら、涙を流したものでした。
今日も、冒頭赤い布地を背景に本をめくるタイトルバックに半音階的旋律の音楽が流れただけで、条件反射でジワーっときてしまいました。
ラウラ・アントネッリの豊かな胸の素晴しさにウットリし、ジャンニーニの感情をわずかに表情に出す演技(基本無表示ながら目の周りをピクピクさせたり、妻が不義の子を身籠ったことを知った瞬間これまた無表情ながら片目からサーっと涙を流す)に改めて感嘆いたしました。
ジャンニーニが軽んじ妹のように扱っていた妻がいつの間にか、皆から尊敬され人気がある知的で容姿端麗な若い作家と関係を結んでいることを知り、嫉妬し、妻への情熱を燃え上がらせる過程をジャンニーニの表情のアップの連続を中心に描いていくところなど凄いな、と。
あと、マルク・ポレルがウチの会社の人に似ているので観ていてニヤついてしまいました。この人、若くして麻薬で亡くなってしまったんですよね。

『イノセント』、ダヌンツィオの小説が原作ですが、1906年生まれのヴィスコンティはこの物語の舞台である20世紀初頭の貴族社会を肌で知っているわけで、スクリーンに映し出される爛熟した貴族の暮らしぶりを観ながら、その情景が実際の当時の貴族の生活と違わないだろうことに、100年前のヨーロッパに思いを馳せてしまいました。
ジャンニーニの旅行カバンがルイ・ヴィトンなのですが(エンド・ロールにもルイ・ヴィトンの名が出てくる)、20世紀初頭のヨーロッパが舞台の映画を観ると小道具にルイ・ヴィトンが出てくることがありますね。例えば『モンパルナスの灯』。
『イノセント』にもルイ・ヴィトンが使われているとは、今日まで気付きませんでした(ワタシは別にルイ・ヴイトンが好きなわけではありません)。

シネマヴェーラのイタリア映画特集、明日が最終日です。

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『若者のすべて』『ジョバンニ』

シネマヴェーラの特集「イタリア萬歳!」が始まりました。
今回の特集はとても嬉しいライン・ナップです。というのも、ワタクシが映画ファンになったきっかけはイタリア映画であり、高校生の頃ヴィスコンティやフェリーニに夢中になり劇場通いをするようになったもので、幸運にも当時頻繁にヴィスコンティやフェリーニが劇場でかかっていたので、高校時代にヴィスコンティはほぼ全作品、フェリーニもまとまった本数を観ることができました。
お小遣いで買った「ヴィスコンティのスター群像」という本を穴が開くほど読んだものです。
その後ヴィスコンティは何度か劇場で観ましたが、2004年有楽町朝日ホールの大特集で最後に観てから4年経ちましたので、今回の上映でまた観直したいと考えております。
フェリーニの『魂のジュリエッタ』は高校生のワタシにとっては苦痛以外の何物でもありませんでしたが、今観るとどう感じるかな気になりますし、アントニオーニの『赤い砂漠』は昔ビデオで観ただけですので、今回劇場で観られるはとても楽しみです。

今日は夕方から広東語教室でクラスメートだったMちゃんの結婚式に出席するので、パーティ着を着てシネマヴェーラに行ったら、ほぼ満員でした。すごい熱気です。

ヴィスコンティの『若者のすべて』。
この作品、今は亡きACTミニシアターで観たとき、この劇場は靴を脱いで絨毯の上に座って見る方式でしたけれども、鑑賞中にお尻がダニに食われて観ていてキツかった記憶なんかがあります。
最後に観た有楽町朝日ホールでの「ヴィスコンティ映画祭」での上映では、映画と字幕に数分タイムラグが発生してしまい、台詞と字幕がまったく合ってない酷い状態での鑑賞でしたので、問題のない環境で観られるのは本当に久しぶりです。
『若者のすべて』はヴィスコンティの中では自分にとって上位にこない作品だったのですが、改めて観て、これまでちゃんと観てなかったなと痛く反省。
アラン・ドロン一家が悲劇に向かっていく過程、最後の大悲劇が近付くあたりの描き方が圧倒的で見事で、何度も観ているにもかかわらず、心が揺さぶられました。
終盤、ロッコがスクーターに乗って警察に行こうとするチーロを追いかけ、間に合わなかったシーン、アラン・ドロンにカメラがズームするのですが、このズームはいいなと思えました。『熊座の淡き星影』や『夏の嵐』など、ズームが下品でヤだなと思った作品もあるのですが。
最後、アロファ・ロメオの工場前での、末の弟のルーカとチーノのやりとりがこの物語を総括しており、チーノの恋人が訪ねてきて愛を確かめ合うのも含めて、この一家の光明を感じさせてくれて観ていてホッとする感じるのですが、しかしながら幼いルーカの後姿が光明だけでなく暗い未来の可能性も暗示させていて、その按配が何とも素晴しい。

イタリアの団地が見られる作品。白黒の映像に映し出される団地の並びは美しくもの哀しかった。
ところで、イタリアの団地・集合住宅といえば、エットレ・スコーラ監督の『特別な一日』を思い出します。冒頭の建物を映したショットが凄かった。何もかも素晴しい作品でスクリーンでいつか再見したいものです。

次にエルマンノ・オルミ監督の 『ジョバンニ』。
2001年の作品でこれは初見です。
ルネサンス期のイタリアの武将・ジョヴァンニ・デ・メディチのお話。諸侯が何人か出てくるのですが、作品に出てくる歴史的背景がよくわかっていないので(世界史でやったのでしょうけど、ここまで細かいこと覚えた記憶ない)、ストーリーを理解するのに難儀してしまいました。
公式ホームページ人物相関図歴史的背景の解説ページがあるので、こちらをご覧になってから鑑賞すると良いでしょう。
戦争が恐ろしく幻想的に撮られております。室内のシーンはフェルメールのよう。
冒頭、諸侯や作家など主人公の周りの人物が証言者といった感じでカメラ正面に向かってバストショットで登場し、肩書きと名前のテロップが出て、話出すと物語が始まるというのは、ヴィスコンティの『ルートヴィヒ』みたいですね。

映画はルネサンス期を舞台としながらも、現代のハイテク兵器をつかった戦争への批判を意識してつくられたことを観客に強く感じさせます。
公式サイトにオルミ監督の
「現在、兵士は自分が誰を殺しているか知らないのが当然のことになっている。そして、自分が誰に殺されようとしているのかを。いま、戦争というものに英雄は存在しない。いまや兵士たちには、戦場での能力や戦士そして人間としての高貴な美徳を表現するための実質的な状況が与えられていないのだ。我々の戦争は機械とテクノロジーに支配されている。その“進歩”とは、非人間的な殺傷能力の向上を意味している。
以前にも増してひどい状況になりつつあるが、人間の目に映る像は、もはや人間ではない。倒すべき敵には顔も声もない。その相手ははるか遠くにいて、誰も彼のことを知らない。痛みや憐れみを理解する心は、もはや失われてしまった。その結果、人々は単純な感情しか示さなくなった。それゆえ私たちは激しい憎しみにも愛にも無関心になり、他人と距離を保つことばかりに気を取られている。
科学と技術の進歩は、決して人間性やモラル、そして文明を豊かにしたとは限らないのだ。」
という言葉が載っております。
この作品、ジョヴァンニ・デ・メディチと近代兵器の大砲の両方が主人公といった感じでありました。

イタリア映画特集、出来るだけ通うつもりです。

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 リネン

Author: リネン
♀。会社員。独身。
東京23区在住。
深煎りコーヒーが好き。
成瀬巳喜男監督作品56本を
劇場で観たのが自慢。

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